第4話 影に追われて
「カエセ! カエセェ!」
「!」
私は後ろを振り返りギョとなる、追ってくる影は大きい蜘蛛みたいで、
口をあけカエセと言いながら追いかけて来ているではないか。
脚からは次々と影が伸びてきて捕らえようとする。
それを獣は後ろをチラリと確認して大きくジャンプ。かわされた影は虚空を掴み、それでも追い縋ろうと他の影が伸びてくる。
それを視界の端に捉えた私は振り落とされないように獣の首にしがみつき、反射的に言う
「避けて!」
挟み込むように左右から影が迫ってくる、それを着地した獣がステップで間一髪で避け、そのまま離れようと獣が影の合間を縫って走り出す。
そのとき、令嬢の居る近くを走っていたらしく姿を見ることができたが、令嬢は変わらず影に覆われていて黒い物体が直立している状態だった。
彼女はもう手遅れだな……
私はなぜかそう思ったが、すぐにその考えは煙のように消え
次の疑問に行き着く
そもそもどうして兵士達が全然来ないの
これだけの騒ぎがあれば、いくら平和ボケしてても来るでしょう‼
何をしてるの責任者!
「ヴヴヴヴ……」
低い唸り声で視線を獣に向ける
金色の瞳が私を見ている、すると突然頭に声が響いた
『ボサッっとするな、ただでさえ足手まといなのに迷惑だ』
「えっ……?」
獣は視線を前に戻し影の追撃をかわす
理解が追い付かない頭で考える
コイツ喋った!?
さっきまで唸り声とかだったのに急になに!?
てか喋れるんだったら
「最初から喋ってよ‼」
『無理だ』
「どうして?」
『今、お前と意志疎通できるのはお前の力だ』
「私の……力?」
『どんなものかは知らん、ただ凄く強力な封印が施されている。お前に使わせないように』
「……」
『お喋りはここまでだ、お前はここに居ろ』
んっ?と思ったときには風で巻き上げられひっくり返ったテーブルの後ろに
ゆっくり降ろされていた
「いきなりは酷いだろ」
文句を言いながら
そのまましゃがみこみ考える
「私に出来ることは……」
あの獣は私に封印された力があると言った
封印されているのに私は獣と話ができた
でも強力な封印だ
解き方なんて知らない、そもそも魔法なんて小説の中の話で
「…でも、諦めたくない」
考えるより行動派だ
テーブルから顔だけだし周りを見る
散乱したガラス、皿、食べ物などの向こう側に何かがキラリと光る
「あれは」
見失はないようにそれに目を向けながら走り出した。
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