第33話 すれ違いの始まり。 ー霰&宗介sideー


宗介そうすけと付き合うことになって1週間が経った。……けど、私たちは今までと何も変わらなかった。


会えば挨拶を交わす。部活があるから一緒には帰れない。クラスは一緒でも、もう委員は違うものに決まっているし、呼び方も変わらない。


それに、宗介はモテるから、よく休み時間に女子が話しかけにきている。それを見て、私の中にはモヤモヤしたものが溜まっていた。


宗介のことは大好き。話せるだけでも幸せ。だけど、しばらく会っていなかったという事実は、私を不安にさせた。


不安定の自分に、私自身もどうしたらいいのか分からない。初めての気持ちに戸惑う毎日だ。


きっと、宗介はそうじゃないんだろうけど。


今も、目線の先には宗介がいる。私じゃない女子に笑顔を向けている。




「なんで………私はここだよー……」




何気なく呟いた言葉に、自分でも少し驚いた。彼に私だけを見てほしいと思っていたんだな。同時に、私はこんなにも独占欲が強いのかと少し呆れた。


私の零した本音が届いたのか、彼は教室にいる私を見つけた。そして、微笑む。


今日は何のお稽古もない。私は頭の中でそれを確認すると口を動かした。




『待ってる』




少し離れてはいるが、それは彼に届いたらしくコクンと頷き返してくれた。


彼の目線の先に私がいることを、さっきまで話していた女子たちは気がついた。そして再び彼へと話しかける。彼もまた笑顔で返していた。今なんか、頬を赤く染めている。


その光景を見ることが辛くなって、私は窓の近くから遠ざかった。





* ・ * ・ * ・ * ・ * ・ * ・ * ・ * ・ * ・ *





俺はあれからすぐ陸部に入った。あーちゃん、もといあられに追いつけなかったことが悔しかったからだ。


次、もし霰の背中を追いかけることがあっても、すぐに追いかけて手を引けるように早くなっておかなくてはいけない。………いや、そもそも追いかけること自体があってほしくないけど。


部活の休憩中、初めて会う子に話しかけられた。格好からして、先輩だろう。


先輩たちは特別コレといった用事はないらしい。正直どうでもいい話で、でも笑っておかないと後々困るからと話半分に聞いていた。


特に何か聴こえたわけじゃない。だけど、何かの気配を感じた俺は自分の教室へ目を向けた。


窓辺には彼女が立っていて、こちらを見ている。その姿に自然と頬が緩む。彼女は俺を見つけると口をパクパクとさせた。




『待ってる』




「うん」と返そうと思ったが、この距離だ。届くわけがないと思い直し、俺は一つ頷いた。


その光景を一通り見ていた先輩たちは、また口を開いた。




「あの子は彼女かな?」

「へっ??」

「あ、かわいぃー。赤くなってるよー」




俺は先輩たちにそう言われ、慌てて腕で顔の半分を覆い隠した。だが、見られた後ではもう遅く、しばらく先輩たちからのからかいは収まらなかった。




「彼女ちゃんとは上手くいってるのかなぁー?」

「その質問の仕方は意地悪だよぉ。ほら、困ってるじゃん」

「ははっ。まぁ、彼女がいるなら仕方ないよね。諦めなきゃなぁーー」




先輩たちはそう言いながらも、割と明るかった。たぶん、そこまで本気ではなかったんだろう。何となくだけど、最近は少し分かるようになってきた。


先輩たちは帰る前に一言残す。




「じゃ、頑張れよ! 少年! ……っても2歳しか違わないけど。まぁ、大切にしてやんなよー」

「そーそー。何かあれば、いつでも相談のったげるよ!」




頼もしい先輩たちの背中見送ると、俺は再び教室の方へと目を向けた。だが、もうそこに霰の姿はなかった。


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シスコンの兄ちゃんで何が悪い!? ユキノシタ @Tukina_Kagura

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