結託
健太は昨日に引き続き、夜の中央街に足を運んでいた。
理由は、スオウ・アルティミシアに、「今夜、八時に中央街の第一公園に来てください」と、呼び出しがあったためだった。
自分が殺したはずの少女が生きていて、手伝いなど気が気ではなかったが、ここに来るまでに、スオウに聞かされていた御園 春香の家に行っていた。
御園 春香の家は空き家になっており、近所の人達に話しを聞いたら、スオウの言葉通り、御園 春香は十年前に行方不明となり、御園家の人達はその後、引っ越したらしい。
謎の少女、スオウではあったが、嘘をついていないこともあり、健太はとりあえずスオウの言葉通り、この場所に来てみることにした。
「お待たせしてすみません。都筑 健太さん」
その言葉がした方を見ると、スオウ・アルティミシアが立っていた。
スオウ・アルティミシアは昨日の様な、黒いローブで身を包み隠していた。
「何でそんな格好なんだよ。目立っているじゃないか」
健太の言葉通り、中心街にはサラリーマンやラフな格好の青年達が、スオウの格好に何やら興味を持ちながら見ているのが分かった。
「しょうがないじゃないですか、私服って、修道服か学校の制服しかないんですから。修道服で歩いていたら怪しいから、こうしてローブで隠しているんですよ」
「だから、制服でいいじゃねえか」
スオウは、その言葉に蒼い眼を見開いた。
「何言ってんですか!大事な制服に傷でも付けたら、明日から何で学校に行かなければならないんですか!?」
「何で急にキレてんだよ」
「キレてないです。私、キレさしたらたいしたもんですよ」
スオウは人差し指で左右に振りながらそう言うと、どや顔になる。
「いや、古いから」
健太は真顔で突っ込んだ。
「え~マジですか。結構、調べたんだけどな」
「お前とそんな話しをしたいんじゃない。俺に何を手伝って欲しいんだ?」
「もっとくだらないお話しをして、都筑さんと友好を深めたかったのですが、仕方ありませんね」
スオウは、笑顔から一気に真顔に変貌していった。
「数十年前に脱会した魔術協会の者が、新渡戸市に潜んでいる情報が、最近分かったんです。何もしなければ、問題はなかったのですが・・・」
「御園の様な死霊が出現したことか」
健太の問いに、スオウはコクりと頷く。
「御園さんの様な死霊を扱って、何をしたいのかわかりませんが、これがもし、東洋魔術連合に知れると事が大きくなる可能性がありますからね。だから私が派遣されたのです」
「話しは分かった。しかしなんで俺に手伝いをしなくちゃならないんだ」
「実は私、御園さんの様な何十年も使われている死霊は分かるのですが、最近出来た死霊の区別が分からないのです」
「だから俺に死霊かどうか区別しろと?」
「お願い致します」
スオウはニコッと微笑んだ。
「くそっ!」
健太はそう言うと、街を歩く群衆に目を向き始めると、観察を始めた。
しかし、健太は普段、真剣に『糸』を視ることをしていなかった為、気持ちが悪かった。
しかし、気持ち悪いのを我慢し、群衆の『糸』を見つめる。
何時間か過ぎたが、スオウは何もしていないのに飽きたのか、鼻歌を唄い始めた。
「呑気なもんだな」
そんな事を健太は思っていると、ふと一人の男の『糸』に違和感を感じた。
「何かおかしな糸がある」
「それはどんな糸です」
「普段っていうか、一般の糸は光輝いているが、あの人の糸はドス黒く妖しく輝いているんだ」
健太はそう言いながら、その男に指を指した。
「他の人と違うんですね?」
スオウの問いにコクりとうなづく。
「では、追ってみましょう」
スオウと健太は妖しい男を尾行することにした。
螺旋の世界 東雲 @rairai41
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