猫の目
『猫の目』とは、物事がくるくると目まぐるしく変化することのたとえ。
『猫の目のよう』や『猫の目のように変わる』とも言います。
猫の目って、宝石のように美しいものです。じっと見つめているとなんだか吸い込まれそうな魅力があります。万華鏡のよう。
我が家には三匹分の目がありましたが、今日、もう一匹増えました。末っ子は黒猫の男の子。生後二ヶ月ほどです。
地元に猫グッズをたくさん扱う店があるのですが、そこで非営利に里親募集もしているのです。
今日は近くで骨董市が開催されていたので、帰りに寄ったのですが、店の中に飼い主を探している子猫が八匹もいました。春先に産まれた子がちょうど二ヶ月、三ヶ月になっていたのです。
グレーと白の兄弟猫がほとんどでしたが、その中で一匹だけ黒猫がいました。
実はうちの夫、ずっとオス猫が欲しいと言っていたのです。しかも黒猫は飼ったことがなくて、憧れていたらしい。
でも最初は「もううちには三匹もいるし、来月には私の出産だしね」と、そのまま店を出て、お昼を食べ、ちょっと離れたところにある駐車場まで戻りました。
さぁ、息子を預けている実家に戻ろうと車に乗っていると、なんだか店の方向に勝手に車が戻っていく。
そして運転席の夫が「ねぇ、どうする? どうする?」とぶつぶつ言っている。
結局、車はまっすぐ猫のいた店の前に停められました。きょとんとして「へ?」と運転席を見た私に、彼が「だから、猫」と呟く。
「うぅん、じゃあ、とりあえず先住猫がいても、子どもがいても譲渡してもらえるかきいてみる?」
そう言って私たちが店に戻ったときには、ちょうどグレーと白の兄弟猫のうち、一匹が引き取られていくところでした。
夫はその手続きが終わって店員さんの手が空くのを待ちながら、「どうする? ……どの子がいい?」と言います。どうするってあなた、どの子がいいか訊いている時点で飼うつもり満々じゃないですか。
うちの夫はもじもじして、最後まではっきり「飼う」と言いません。それでしびれを切らした私から「どうするの?」と逆に訊くと、「どうするって何さ」と動揺。
私が「飼うの? 大黒柱はあなたなんだから、あなたが決めて。私は飼ってもいいですよ」と言うと、「じゃ」と嬉しそう。意外と決断力ないんですよねぇ。私のほうが思い切りがいいかも。
私としては大人しく寝ていたグレーと白の子がいいかなぁと思ったのですが、ここは夫の希望通り、黒猫をお迎えすることにしました。
というのも、先住猫たちはみんな、私が飼うことを希望したので、今回は夫の望むようにしようと思ったわけです。それに、この子が来ることで、ご飯代を稼がねばと仕事への意欲が増したり、生活に張りが出るならよし。
「責任もってあなたが名前を決めてね。それに、この子が来た分、ちょっと節約しましょうね」
世話をする私にしてみれば三匹も四匹も変わらないのですが、ご飯代や猫砂代は変わってきますからね。
姑は子猫が増えたことを知って最初は「これから(人間の)子どもも増えるのに猫ばっかり増やしてどうするの!」と怒っていたのに、抱っこした途端、「……うち(実家)の猫と会ってく?」と声のトーンが落ちた。はい、いろんな意味で落ちたんですね。目尻が下がってました。
天満宮で開かれていた骨董市の帰りにお迎えしたので、名前は天満宮からとって『テン』になりましたとさ。
実は『テン』は一度は里親が決まったらしいのです。ところがその人は猫ブームの影響で簡単に飼えると思っていたらしく、結局面倒を見きれずに戻されたんだそうです。
飼うってことは命を預かるってことなんですけどね。本当、ブームという形で命をもてあそぶメディアも、それに安易に乗る人間にも責任がありますねぇ。
夫と私、そして猫二匹から始まった群馬生活ですが、今や猫は四匹、子どもは二人になるわけで……まさかこんなに子だくさんになるなんて、想像したこともなかったです。すっかり猫の目人生ですね。
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