花は根に、鳥は古巣に

 『花は根に、鳥は古巣に』とは、さまざまな経過をたどっても、ものごとはすべて、終極的にはそのもののおおもとにもどっていくものだということ。


 拙作の中で、オーセンティックなバーで修行しバルを経営したものの、最後にはやっぱり修行したバーのような店を開業したバーテンダーを書いたことがあります。

 都会で就職したものの、やっぱり実家の家業を継いだ人なども、この言葉があてはまるのでしょうか。でも、自分のルーツに気づくというのは、なんだか心が温まりますね。


 私の場合、学生時代から自他共に認める多趣味人間でしたが、経済的な理由や、環境の変化、時間的な問題からあれこれ離れていき、結局は一番最初に熱中した本だけは残っています。

 幼い頃から、読書していると話しかけられても気がつかないほどで、自分で絵本を作ったりして遊んでいました。そして今、育児の合間に読書を楽しみ、自分で小説やエッセイを書いて同じ事をしているんだから、不思議なものです。


 そしてもう一つ。

 おおもとにもどるというと、強いて言えば『醤油』なんですよね。


 群馬県の地元には1787年から続く醤油の老舗があります。とても美味しい醤油で、店頭では醤油ソフトクリームも食べられます。

 実はここで使われている大豆は、私の北海道の地元で作られているんです。なんとも奇妙な縁を感じ、よく使用しています。


 その一方で、やっぱり北海道の昆布醤油の味が恋しくなるのです。

 いろんな醤油を使っても、結局は慣れ親しんだ味を舌が求めるといいますか……。醤油に限らず、味噌なども実家にあった銘柄を探してしまいます。

 食べることこそ、私を作ってきたことなんだなと痛感した次第です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る