子は鎹
『子は
我ら夫婦にとって、この言葉はむしろ『猫は鎹』でした。
群馬県で仕事を探し始めた直後に妊娠したため、家にこもりがちになり、こちらでの友達がなかなかできませんでした。家族とも友人たちとも離れ、知らない土地でたった一人。何度北海道に帰りたいと思ったことか。テレビばかり観て無口な夫に、仕事で疲れているだろうと遠慮して、寂しいの一言も言えず……。
でも、北海道から連れてきた『姫』と『小町』という猫が、猫好きの夫との潤滑油になってくれました。
『姫』は当時勤めていた薬局のお客様から譲り受けたキジトラの猫です。『小町』は北海道の農家さんの家で生まれたキジ白の猫でした。母が『小町』の姉妹である三毛猫と黒猫を譲り受けたときに、私が小町も連れて来たのです。
この二匹、最初は夫に全然慣れませんでした。無類の猫好きである夫は毎日のように猫缶を武器に距離を縮めていきました。
今では夫が帰宅すると玄関まで出迎えに行き、彼(と猫缶)へのラブコールで大騒ぎの毎日です。
夫はこの猫たちが北海道から来ると聞いて、「今日は何をしてたん? 可愛いねぇ」と言いながら撫でる手つきまでイメージトレーニングしていたそうなので、懐いてもらえて心底嬉しそうです。
引越しの多かった私も猫の引越しの手続きはこれが初めてで、戸惑うことが多かったです。
まずは引越業者に見積依頼したら、猫が一緒だと数十万かかると言われました。そのときの担当の方がご親切に「引越業者よりも運送業者の方がいいですよ」と教えてくださり、某大手運送業者の下請け会社である、ペット輸送専門業者を紹介していただきました。
電話で見積し、猫の年齢と大きさ、キャリーケースの有無とあればサイズを申告します。ちなみにハードケースでないと飛行機に乗れません。
北海道から群馬県までおよそ1000kmはありますし、やはりリスクはありますから一筆書かされます。
猫たちは前日は水以外は絶食です。そして北海道の家から朝6:30に送り出され、飛行機の後は空港からトラックをチャーター、群馬県のアパートに到着したのは15:30です。
料金は二匹で7万円でした。これは業者や移動距離、猫のサイズによっても違ってくると思います。ちなみに、私自身の引越代は飛行機代含め3万円でしたが……。
現在では『凪』というトビキジの猫もいるのですが、この子はもともと野良猫でした。車通りの多い道で見つけ、保護しようとしても捕獲できずその日は諦めて帰りました。どうしているかと気になっていたところ、数日後に行った里親会で偶然に再会したのです。これはもう、うちに来る運命だと決意し、我が家に迎えたのです。今では毎晩一緒に寝ていて、息子と川の字になっています。
どの子も私と夫の大事な鎹であり、息子にとっては面倒見のいい姉たちであります。
それにしても、三匹それぞれに個性があって、猫も面白いものです。このエッセイでも猫についてまた書けたらいいなと思っています。
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