破れ鍋に綴じ蓋

 『なべぶた』とは、世の中はうまくしたもので、どんな人にもそれぞれぴったり合う相手があるということ。また、似た者どうしがいっしょになれば調和がとれてうまくいくということ。


 現在の夫とは元々は友人関係でしたが、遠距離恋愛に発展し、結婚となりました。

 それまでは夫は一生独身でいようと思っていたそうで、まさか自分が妻子ある身になるとは……と自分で驚いていましたけどね。


 夫と私は似た者どうしとはいえず、むしろ対極的といえます。

 彼は日本映画とテレビが大好きで、毎日観なくてもつけているタイプ。私は大のテレビ嫌いで、映画も精神的にひきずりこまれてしんどいのであまり観なくなりました。

 食の好みも性格も正反対ですね。乳製品、飛行機、魚介類、入眠するときのスタイル、いろんなものの嗜好が真逆です。


 そんな二人なので、最初の頃は「どうしたもんかな」と距離をはかりかねましたが、お互い干渉の加減を見て『破れ鍋に綴じ蓋』を目指してきました。


 独身生活が長いせいもあるんでしょうが、彼はもともと生活のリズムというか独自の習慣を崩されるのが嫌な性分なので、私のスルースキルは磨かれる一方です。彼がテレビを観ている間は、私は音を耳に入れないようにして執筆したりしています。


 つくづく思うのは、夫婦っていっても他人なんだよなぁということ。思いやりだとか、いたわりを忘れちゃいけないんですよね。物は言い様だったりしますから。

 そして他人を変えたいと思ったら、まずは自分が先に動くほうがずっと早いし、効果的だということ。


 子どもが生まれると、二人での過ごし方のみならず、育児への姿勢という視点も生まれましたし、夫婦は片方が棺桶に入るまで、切磋琢磨しあわなければならないのだなぁと思います。


 私の憧れの夫婦というと、芸能人でも歴史上の人物でもなく、二組の友人たちです。一組は高知県に、もう一組はアメリカにいます。

 でもね、彼らも表に出さないだけで、乗り越えたものってたくさんあるんですよね。

 離婚したばかりの頃、彼らをうらやんでばかりいましたが、今では最初から『破れ鍋に綴じ蓋』だった夫婦なんて、実はいないのかもしれないなと思っています。少しずつ心を寄せ合って、磨き合って、はじめてぴったり合うのかもしれませんね。

 そしてそれは、夫婦関係だけではなく、あらゆる人間関係に言えることなのでしょう。

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