無常の風は時を選ばず

 『無常の風は時を選ばず』とは、儚い人間の命はいつ果てるのか、まったく予測はつかないということ。


 薬局で勤務していたこともあり、そういう話題を耳にすることが多かったと思います。同級生や職場の同じ世代の同僚が若くして亡くなったこともありましたし、薬局の常連さんが来店しなくなったと思ったら亡くなっていた、なんてこともありました。


 お葬式というのも、地域の特色がよく出るものですね。

 北海道では香典に領収書が出るというのも、他の地域では珍しいと聞きますね。故人が親族や親しい友人というほどではない場合、お通夜にだけは顔を出すというのが多かった気がします。

 それに、亡くなったら新聞のお悔やみ欄にお通夜の日程が出るんですよね。それで薬局の顧客が亡くなったことを知ることもありました。香典返しも海苔やコーヒーといった粗品と葉書でシンプルです。


 群馬県に嫁いできてから、夫が一度だけお通夜に行かなくてはならないときがありました。

 喪服を用意しなきゃと慌てていたら、「あぁ、仕事が終わったらそのまま行くから、いいよ」と言われ、驚きました。

 夫は「そりゃ本来はきちんと喪服を着ていくものだけど、仕事帰りとかでやむを得ないときは、そのまま駆けつけていいんだよ」と説明するのです。これには驚きました。北海道にいたときは、どんなに突然でもきちんと故人のために喪服を着て駆けつけるものだと思っていたけど、どうもこちらでは『あまりにきちんと支度が追いついていると、まるで死ぬのをわかっていたような、見計らっていたような、そんな印象をとられても困る』ってニュアンスがあるように感じた記憶があります。


 けれど、これ、地域の問題なのかなぁ? 夫の個人的な見解……ではないと思うんだけど、どうなんでしょう? とらえ方の違いですねぇ。


 確かに『無常の風は時を選ばず』ですから、本当に人の命はわからないものですがね。きっと、それぞれの地域の特色が生まれた背景も、歴史や地理が絡んでいるのでしょうね。

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