題名決まってないです。
もんち
第1話
むかしむかしあるところに
それはそれは美しいお姫様がいました。
やがてお姫様は王子様と結婚してお后さまになり2人のかわいい王子様を授かりました。王様と2人の王子に囲まれ何不自由ない生活。幸せな日々は永遠に続くかと思われました。
ある日、隣の国の大使が訪ねてきました。
王様との謁見のとき
「なんでもお后様は他の国をご覧になった事がないとか・・・。
是非わが国に旅行にきてください。」
と招待しました。
王様は
「后も外の世界を存分に見てくるといい。」
と快く送り出しました。
・・・これが悲劇の始まりです。
・・・
隣りの国、初めての外の世界。お后様の心はうきうきと弾みました。
まずは王宮に行き王様にご挨拶。隣の国の王様は后をもてなし盛大なパーティが開かれました。隣の国の王様は后と踊っているうちにだんだんと好きになってしまいました。次の日もパーティを開き高価なプレゼントをしたり、また次の日には美しい庭園などに連れて行き、あの手この手で気を引きついには后を自分のものにしてしまいました。
怒ったのは王様。
后を取り戻すために隣の国へ兵隊を送り込み両国は戦争になってしまいました。
戦争でたくさんのひとが死にました。やがて最後は王様同士の一騎打ちの戦いになり王様は胸を剣で刺され死んでしまいました。
隣の国の王様は左足に傷を負いましたが生き残り、后の2人の王子も殺してしまったのです。
お后さまはとても悲しみ「すべては自分が悪いのだ。」と誰も知らない山奥の洞窟の中で氷の中に閉じこもってしまいました。
后を失った隣の国の王も左足のケガが悪化しすぐに死んでしまいました。
・・・
それから何百年か経って、ひとびとがこの悲劇の戦争を忘れた頃。
・・・
山の中、ひとりの木こりが仕事を終えて帰っている途中。突然大雨が降ってきました。
「山の天気は変わりやすいからなぁ・・・。」
どこか雨宿りができそうなところは無いかと辺りを見回すとそこには雨宿りにはちょうど良さそうな洞窟がありました。「クマでもいるかも知れない。」そおっと中を覗くと奥は真っ暗でけっこう深そうでした。目に見えるところにクマがいそうな気配はありません。木こりは少し安心して洞窟の入り口近くで焚き火をたき雨宿りをしました。
焚き火の前でうとうとしていると、奥の方からすすり泣くような声が聞こえた気がしました。木こりはびっくりして飛び起きましたが、なんだかとても悲しそうな声に感じたのでほうっておくことができず、焚き木をたいまつにして奥に向かって歩き始めました。
洞窟の中は曲がりくねっていましたが一本道で分かれ道などはありませんでした。ずいぶん奥までくるとうっすら青白い光が見えました。
「おや?外に出たかな?」
足早に先に進むとそこには青白く光る氷の壁がありました。氷の中にはひとりの美しい女性が眠っていました。驚いた木こりは「こりゃあ早く助けなきゃ!」とたいまつを近づけました。すると氷の魔法かなにかでたいまつの火が消えてしまいました。もう一度たいまつに火をつけ近づけてみましたがやっぱり消えてしまいます。
「どうしたらこの氷は溶かせるだろう?」
木こりは考えながら一度帰ることにしました。洞窟を出ると雨はやんでいました。
・・・
次の日、木こりはたくさんの焚き木と水がめいっぱいの水を持って洞窟にむかいました。荷物はとても重かったけど「あのきれいな女性を今日こそ助けるぞ。」と心はうきうきしていました。長い洞窟を抜け氷の前まできた木こりは焚き火をたき水がめの水を火にかけました。「お湯なら溶かせるかも知れない・・・。」やがてお湯が沸騰したのでひしゃくですくって氷にかけてみました。氷は溶けるどころかかけたお湯がみるみる凍ってしまいます。
「これでもだめか・・・。」
とつぶやきながら氷に手をつくと手の温かさで氷が溶けるのを感じました。「ひょっとして!」木こりは両手で氷をこすり始めます。氷は少しずつ溶けました。
「やった!」
木こりは一生けんめい氷をこすりました。手が真っ赤になって痛くなっても焚き火で温めて何度も何度もこすりました。だいぶ長い時間こすり続けたらだんだんお腹がすいてきたのでその日も帰りました。次の日はお弁当を持って一日中こすり続けました。
仕事がない日は一日中、仕事のある日は夜だけ。くる日もくる日も毎日氷を溶かすためにこすり続けました。毎日氷の女性を見つめながら「今日はこんなことがあったよ。」とか「今日は木から落ちて左足にケガしちゃったよ。」とか語りかけていました。そんな日々はやがて1年が経ちました。
・・・
かなり氷も溶けあと一日か二日で女性を助け出せるんじゃないかというある夜。
・・・
木こりが帰ったあと洞窟の中にはひとりの人影がありました。数日前なんとなく木こりの様子がおかしいな?と思った悪商人がこっそりとあとをつけてきていたのです。悪商人は木こりが洞窟から出たあと洞窟に入り氷の女性を見つけてしまいました。そしてその美しさに心を奪われ何とかして自分のものにしようと企みその機会をうかがっていたのです。
「ぐへへ、あと一日か二日だな・・・。」
ニヤリと笑うと悪商人は帰っていきました。
・・・
次の日。
木こりは仕事を休んで一気に氷を溶かしてしまおう!と朝から洞窟にむかいました。いつものようにいろいろな話をしました。氷が溶けたらふたりで行ってみたいところの話もしました。幸せな気分でした。夜になる頃ピシッとほんの小さなヒビが入りました。「あと少し・・・。」と思ったのですがどうにも手が痛くて「ここまでくればあと少し、あわてず明日にしよう。」と帰ってしまいました。木こりが帰るのを見届けると悪商人は洞窟に入っていきました。
「しめしめ、昨日木こりの手ぬぐいに塗っておいた毒草で手が痛くなったようだな。」
悪商人は氷の前までくると氷をこすり始め、なんと、女性を助け出してしまったのです。
「毎日話しかけ、氷を溶かしてくれたのはあなたですか?」
女性は目をひらきながら訊ねました。
「そうだ。わしがお前を助け出したのだ。」
悪商人はウソをつきまんまと女性を手に入れてしまったのです。家に帰ると妻を追い出し女性を新しい妻にしました。
次の日、何も知らない木こりはうきうきしながら洞窟に行きました。しかし洞窟の中には氷もなく女性もいませんでした。「もしかして自分で氷から出られたのかな?」「ひとりで山の中はあぶないから早くみつけなきゃ!」木こりは山の中を探し回りました。空が真っ暗になるまで探しましたが見つからないのでがっかりして帰りました。そして3日間寝込んでしまいました。
・・・
体調がよくなった木こりは町に出ました。たまたま商人の家の前を通りかかるとそこには氷の女性がいるではありませんか!
「よかった!無事だったんですね!氷も無くなってあなたもいなくなっていたので心配していたのです!」
すると女性は、
「なんのことですか?私を助け出してくれたのはだんな様です。」
と悪商人を指差しました。悪商人はニヤニヤ薄笑いを浮かべながら木こりを見ています。
「違います!私が!私が・・・。」
木こりは泣きそうになりながら訴えましたが悪商人は女性の肩を抱き耳元でなにか言いながらバタンとドアを閉めてしまいました。
・・・
ある夜のこと。女性が商人に言いました。
「そういえば私が氷の中にいたときに話してくれた左足の傷はどこにあるんですか?」
もちろん悪商人はそんな話も知らないし傷があるわけもありません。
「ああ、それならまた今度見せるよ。」
とその場はごまかして蔵の中に行くとナイフで左足を切り、傷を作りました。そして傷が治りかけると
「どうだ?これがその傷だ。」
と自慢げに女性に傷を見せました。
「あと、生まれたときから左胸に小さなあざがあると言っていましたがだんな様にはありませんね?」
「ああ、あのあざなら大人になったら消えたと話さなかったかな?」
「そうだったのですか。その話は聞いてませんがわかりました。」
悪商人はうまくごまかせたといやらしい笑いを浮かべました。
・・・
木こりはあきらめきれず、ときどき町に出ては女性を訪ねますが全く相手にしてもらえませんでした。その日も悪商人の家の前までくると女性は水をまいていました。木こりが話しかけようと近づいたとき女性のまいた水が木こりにかかってしまいました。
「あら大変、代わりの服を持ってくるのでその服を脱いでくださいな」
木こりは言われるままに服を脱ぐと左胸には小さなあざがありました。女性は驚き
「そのあざ・・。もしやあなたが氷を溶かしてくれたのでは?」
「はい!1年間毎日私が氷を溶かしつづけたのです。ですが、あと少しのところで帰ってしまったのです。しかし、それをわかっていただけたし、あなたが幸せならば私はそれだけでもう充分です。ココへはもう来ません。」
と言うと木こりは濡れた服を取り行ってしまいました。女性は木こりを追おうとしましたが一部始終を見ていた悪商人に手を掴まれ引き止められました。
「おまえはもうわしのものだ。木こりも充分だと言っていただろう。」
悪商人は女性の手を掴んだまま屋根裏部屋に連れて行き鍵をかけ閉じ込めてしまいました。
・・・
木こりがとぼとぼと歩いていると見知らぬおばさんに声をかけられました。
「あんた、ずいぶん悲しそうな顔してるけど何かあったのかい?」
木こりはいままでのことをおばさんに全部話しました。するとおばさんは
「あんのロクデナシ!そういう事だったのか!」
と言いながらドスドスと悪商人の家へ走っていきました。おばさんは悪商人の前の奥さんだったのです。今度は奥さんの方が悪商人を叩きだし家から追い出しました。おばさんは屋根裏部屋の鍵を開けると
「あんたはもう自由だ。好きなところに行きな!」と声をかけ外に出してあげました。家を追い出された悪商人は乞食になり左足の傷が悪化してすぐに死んでしまいました。
・・・
めでたしめでたし。
・・・
え?女性はそのあとどうなったかって?さあ?わかりません。
木こりのことを信じてあげられず申し訳ない気持ちでまた氷の中に閉じこもってしまったか・・・。また新しい素敵なだんな様を見つけて幸せにくらしたか・・・。
ただ、もし木こりの家に行ったのなら、心優しい木こりはきっと女性のことを温かく迎えいれたことでしょう。
おしまい。
題名決まってないです。 もんち @montidao
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます