2日目 水の上を吹く風
ガラスを見ていた。
ガラスの中の水を見ていた。
水の中の、仄かな蒼い光を見ていた。
メルルと一緒に、「水族館」に来ていた。
嬉しそうに表情を綻ばせるメルルは、
僕の手を引いてはあちら、こちらと見物に大忙しだった。
ガラスの中には、「生き物」がいた。
悠々と、泳いでいた。
誰も居ない、誰も来ない。
仄かな光だけが道しるべの廊下から、光を見ていた。
話しかけた。彼は、アザラシと名乗った。
でも、彼の姿は見えなかった。
そこには既に彼はいなかった。
点々と灯りのついた暗い回廊、
何処へと繋がっているんだろう。
考えたら、眠くなった。
メルルが笑っている。
歩き出そう。
光には風が必要だろう。
ならばここにある光は、全て作り物だ。そう思った。
扉を開けた。
五十八の土を越えた風が吹き込んできた。
百八十の空を越えた光が差し込んできた。
後ろを見ていた。
メルルが名残惜しそうに後ろを見ていた。
「今度一緒に海に連れて行ってあげるね」
メルルはにっこりと笑って、ついて来た。
風の無い光なんて、もらった所でどうにもならない。
僕たちは考えたいわけじゃない。歩いていたいんだ。
空色の日 汎野 曜 @SummerShower
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