おまけ.ご紹介致しますわ
この度は皆さまの大切なお時間を頂きましてありがとうございました。
改めて、わたくしの方から簡単ではありますが、わたくしの大切な方々をご紹介させて頂きますわ。
まずはわたくし、ヴィヴィ・エフィー・クォーリスティリアのことからですわね! と言ってもこれと言って皆さまが知りたいと思われるようなことはないと思いますのよ?
年齢は6歳ですが、もうすぐ7歳を迎えますの。ふふ、誕生日が今からとても楽しみですのよ! 少々事情がございまして、同い年の方々よりはずっと大人びた言動をしているかと思いますが、その事情というのはまた機会があればお話いたしますわね。
こんなわたくしが敬愛してやまないのは、二番目のお兄様です。お兄様のこととなるとほんの少し暴走してしまう自覚はありますのよ? けれど仕方がないと思うのです。だって女の子って好きなものには一途に全力で想いを寄せて行くものでしょう? …あら、どうして信じられないものを見るような目をわたくしに向けるんですの? わたくし、非常識ではありませんのよ?
わたくしが日々課せられているのは礼儀作法や国々の歴史と文化、言葉など様々なことを学び、身に着けることですわね。お兄様のような優秀さはありませんが、こつこつ頑張ってますのよ。…人の顔と名前を覚えるのはとても大変ですが。
そうだわ、ディリカのことを忘れてはいけませんわね! わたくしの愛馬であるディリカは少々小柄な大人しい雌馬ですわ。乗馬の練習をする時は必ずディリカが付き合ってくれるんですのよ。まだ一人でディリカを走らせることはできませんが、これからもたくさん練習をしてディリカともっと仲良くなりますわ!
わたくしの髪も目もお兄様と同じ色合いの金と緑です。身長は今から立派に伸びますから期待していてくださいな! あらやだ、今「平均的な6歳児より背が低いんですから、自信満々に言わない方が身のためじゃないですか」って仰ったのはどなたかしら? ねぇ、セリサ。わたくし、ちゃんと聞こえてましてよ?
わたくしが大好きな、クォーリスティリア王国第二王子のリルヴィ・エフィー・クォーリスティリアお兄様はわたくしより二つ年上の9歳ですわ。お兄様の方が先に誕生日を迎えましたのよ。
わたくしが「お兄様」と呼ぶのはリルヴィお兄様だけですわ。リヴィクお兄様は「リヴィクお兄様」と呼びますから。それは周囲も把握してますから「お兄様」というだけでリルヴィお兄様のことだと分かって貰えます。
お兄様はとても努力家です。毎日の勉学もお稽古事も手を抜くことなく励まれていらっしゃいますわ。そんなお兄様は乗馬を得意とされているようです。お兄様の愛馬はクレスヴァーという雄馬でディリカと違ってとても体が大きいです。いつかクレスヴァーに乗ったお兄様と一緒に、わたくしもディリカに乗って遠乗りができたら、なんて夢見てますのよ。
お兄様は今婚約者の選定中ですが、候補の筆頭であるご令嬢方をお兄様は選ぶつもりはないらしいですわ。それを聞いて一安心致しました。
どうやらお兄様は少々変わった? お方が好み…らしいのです。ええと、賢いけれど天然で、素直で一途で…それから…あ、いたずらしがいのある? お馬鹿、とも仰ってましたかしら? 何度思い出して考えてみてもよく分からない人物像ですわよね…。
けれどあれだけはっきりと答えられるということは、少なからずお兄様のお心には大切な方がいるということでしょうから、わたくしがお兄様に相応しい方を捜しだすのはとりあえず中断することに致しました。余計なことをしてお兄様に嫌われたくありませんから。
お兄様はとても優しい方で、世界一素敵な笑顔を浮かべる紳士ですわ!
「うん? 僕の性格? それなりに捻くれてるんじゃないかな。割と物事に淡泊だと思う。ただし、一度興味を持ったものには執着するよ? 今のところ妹以上に興味を持てるものはないね。見た目が母上似で僕ともそれほど違わないのにどうしてかな。あの子が可愛くて仕方がないんだ。だから、僕からヴィヴィを取り上げようとする人間は僕の敵だよ?」
セリサは行儀見習いで城に上がっているわたくしの専属侍女ですわ。年齢は成人前の14歳です。出会った当初から遠慮も物怖じもしない言動の彼女は、無表情でいることが多いですわ。滅多に笑ってくれません。──が、仕事中は笑わないようにしているだけなのではと疑いを持つようになりました。
お兄様のお部屋で彼女、お腹を抱えて笑っておりましたからね。一体何が彼女の笑いのツボを刺激したのか。…お兄様のお話が原因のようですが。
セリサは時々主人であるわたくしに失礼なことを言いますの。少し意地悪な性格だと思いますわ。ですが、仕事に責任感を持っておりますし、わたくしに心から仕えてくれていることは彼女と接していれば感じ取れます。
そうですわね…セリサは年齢関係なく、わたくしのお友達のような存在かしら。欠かしたくない、大切な人の一人です。
あと一年もしないうちに成人を迎えてわたくしの元を去っていくのでしょうが、最後までわたくしの専属侍女を務めてもらう予定ですの!
「私の趣味ですか? 姫様観察でしょうか。私の主人、可愛いんですよお馬鹿で。人を疑うことを知っているお方なのにコロッと騙されるんです。素直過ぎますよね? そこが姫様のいいところでもあるんですが、少々将来に不安を覚えてしまいます。お傍にいられるうちにもう少し注意を促していきたいとは思うんですよ。ですけど、あのコロコロ変わる表情は姫様の魅力じゃないですか。それを無くしてしまうのはもったいないですよね。まぁ、あれでも感情を読まれないように常に笑顔を心掛けるよう教師からは言われているんですが。ふふ、信じられないでしょう? あれでも努力しているつもりなんですよ、本人は。ね、可愛いでしょう? ──あ、それから一つ大切なことを教えておきます。姫様はそれはもうリルヴィ殿下贔屓ですから、紹介すると言っていてもそれが真実とは限りません。その見極めは慎重にお願いします。姫様自身は嘘を伝えているつもりはありませんので、そこだけはご理解下さいね」
リヴィクお兄様はわたくしの一番目のお兄様ですわ。17歳でこの国の王太子殿下ですの。
リルヴィお兄様とわたくしはお母様にそっくりなのですが、リヴィクお兄様は恐らくお父様似なのだと思います。髪と目の色合いは黒で、間違いなくお父様の色合いです。ただ、顔立ちが少々お父様とも違うように感じられますの。…そういうこともありますわよね。先祖の誰かともしかするとそっくりなのかもしれませんし。
歳が離れていることもあって、普段はなかなか交流することがありません。王太子として、国政に携わり日々公務に励まれているようです。勘違いなさらないでほしいのですが、決して不仲ではありませんのよ!
お兄様と同じくらいリヴィクお兄様も優れた方ですわ。話によると、剣の腕はクォーリスティリア王国で一二を争うくらいなのだとか。公務の合間に鍛錬をしているそうです。…だからあんなに背が高くて、背中も大きくて、騎士のようながっしりした体つきなのでしょうか? ──リルヴィお兄様だって負けないくらいご立派に成長されますからねっ!? 正直に申し上げますと、17歳にも関わらずその顔からは幼さはすっかり消えてしまっていて容姿だけでなら20代前半ほどに見えてしまうくらい大人びてらっしゃいますのよ。…若いうちから王太子に指名され気苦労も多かったからなのでしょうか。そう考えると複雑ですわね。…支えられる間はわたくしもお兄様と一緒にリヴィクお兄様をお支えしていこうと思います。
リヴィクお兄様はまっすぐな方でとても誠実な紳士、という印象です。どうして接する機会も少ないのにそのようなことを思うのかと問われると少々困ってしまうのですが、そう感じてしまうのですとしか言えません。
近寄り難い、のですが兄妹ですしもう少し歩み寄る機会ができるといいと思います。
「私の妃の噂について、か。いいも悪いもまずはあの子の気持ちだろう。無理強いをするつもりは私にはないよ。今はまだ幼過ぎて、妃にと言われても考えられないというのが正直な気持ちではあるな。…のんびりと見守っていこうと思う。あの子が成長する前に状況は変わっているかもしれない。他国の姫を娶る可能性もゼロではないからな。ただ、そうだな…。どんな状況になってもあの子から笑顔が消えない未来であればいいと思っているよ」
お兄様専属の侍女、イルミアはわたくしにとってはお姉様のような存在だと思います。お兄様に会いに行くと必ず彼女と顔を合わせることになりますから、セリサの次くらいに親しみを感じられる侍女ですわね。
セリサと違っていつも優しく接してくれます。セリサも少しは彼女を見習ってもいいと思いますわ…。
「私はリルヴィ様つきになって五年ね。実家が商家で、旦那にそっちを任せてるのよ。これでもヴィヴィ様と同い年の子どもがいるのよー? 家に帰る度、うちの子が子どもっぽいのかヴィヴィ様が特別なのか考えちゃうわ。でもリルヴィ様も年齢にしては大人びてらっしゃるから、周りの環境のせいなんでしょうね。それが幸せなことなのか私には分からないわ。子どもは子どもらしくしているのが一番だと思うけど、それが難しいのが王侯貴族ってものなんでしょうね」
クギーは厩舎で主に馬のお世話をしている方ですわ。わたくしの愛馬もお世話になっていますのよ。
本人を見ただけではとても元騎士だなんて思えないほど、頼りない容姿ですの。馬だけでなく動物全般に惜しみない愛情を注げるそうですわ。因みに昆虫類だけは生理的に受け付けないそうです。爬虫類は平気なのですって。
「姫様見るたびに、どうしてもあの頭と尻にふさふさの耳と尻尾を想像しちまうんだよなぁ。姫様は犬っぽいと思わねぇか? ──あ、これ本人には秘密な。こんなこと言ってたなんて知れたら絶対むくれるからさ。まぁ、それはそれで和むんだけどさ。あの人、怒っても全然迫力ねぇんだよ。リルヴィ殿下と容姿は似てるのに何でだろうな。やっぱ性格かね? っと、これも秘密で!! こっちのは絶対殿下に言わないでくれよ!? 俺、あの人の圧迫笑顔には耐えられる自信がねぇんだよっ!!」
ロサリーザ・グレス様とリリア・ファベル様はお兄様の婚約者候補筆頭として名前が挙げられているご令嬢ですわ。ロサリーザ様はグレス公爵家、リリア様はファベル伯爵家というどちらも王族に縁のある、由緒正しいお家柄の産まれです。
自己主張が強く、自分自身にとても自信を持っているというのがお二方の共通事項でしょうか。彼女たちはお互いに候補者筆頭として一騎打ちをしているつもりだと思います。周囲もそのような認識でいるのでしょうが、お兄様はどちらとも婚約者には選ばないそうですわ。彼女たちはどちらも性格に難ありと判断されたようですの。
曰く、お兄様の大切なものを一緒に守ってくれそうにないらしいです。それは確かに減点ですわね。王子妃になろうとしていらっしゃる方が弱き者を虐げてはいけませんわ。わたくしもそのような方をお義姉様とは呼びたくありません。
わたくしがご紹介できる範囲でお話致しましたが、如何でしたかしら?
え? 何人か紹介が短すぎる? それは申し訳ないですわね…。けれどこれ以上わたくし、存じ上げなくて……。…あ、いえ、興味がないせいで知らないというわけではありませんわよ?
ええ、も、もちろん他にもお話できることもあるのですが、それはまだ紹介できる範囲ではないというだけのことですの。ほ、本当です。本当ですってば! どうしてそんなに疑いの眼差しをわたくしに向けるのですか? わたくしの信用は一体どちらへ行ってしまったの!?
か、閑話休題ですわっ!
貴重な皆さまのお時間を頂きましたこと、心より感謝致します。
また皆さまとお会いできる日が来たなら、このわたくしたちが生きる世界についてほんの少し触れさせて頂こうと思いますわ。その時は少々堅苦しいお話になってしまうかもしれませんが、またお付き合い下さると嬉しいですわ。
それでは、今日はこの辺りで失礼させて頂きますわね! お兄様とのお茶の時間が迫っておりますのよ!
「セリサ、今日のお茶はお庭でだったかしら? …あら、何だか風が強いようだわ。ねぇ、本当にお庭でお茶なの…?」
ブラコン王女はお兄様の好みを知る 志希 @nsara_mmoe
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