1月のエピファニー(公現祭)・十二夜

ガレット・デ・ロワ

 キリスト圏においては、クリスマスケーキにも匹敵するといわれている宗教菓子

 けど、日本ではご存じのようにまったく馴染んでおりません

 

 一応、製菓業界が流行らせようとしてはいるんですけどね

 現に「クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」なる協会がありまして、毎年コンテストも行われているそうです

 日本のパティスリーでもそれなりに見かけるようにはなりましたけども、食べた経験のある方は「シュトレン」よりも少ないのでは?

 

 その所為か、たいていが予約限定販売となっております

 そうなると、ハードルが高いと言いますか買いづらいですよね

 パティスリーで予約限定商品を買うことなんて、バースデーケーキを始めとした特別なお祝い用しかないですもん


 そもそも、公現祭エピファニーって何? という大きな問題もあります

 まぁ、クリスマスやバレンタインみたいに、本来の意味とは関係なく盛り上がるケースもありますけども、これに関しては時期が悪い

 同様のことが、復活祭イースターにもいえます

 ――説明するまでもなく、日本の1月と4月はとても忙しい!


 ちなみに公現祭(節)とは、新約聖書における『マタイの福音書・博士たちの礼拝』に当たる部分です 

 日本だと、十二夜という言葉のほうが認知されているかも

 

 12月25日、東方の3人の博士が星を見てユダヤ人の王イエス・キリストの誕生を知る

 その星を追いかけ、3人がイエスの元に辿り着いたのが16

 すなわち、旅に12を費やしたということで(Twelfth Night)

 そして博士たちの来訪によって、救世主イエスの降臨が人々に知られるようになったため

 

 ――ということで

 ――ということで


 簡単に説明しますと、このような感じ

 ということで、本題へ


 「ガレット・ブルトンヌ」で少し触れたように、ガレット=円形で平たいお菓子になります

 その例に漏れず、このお菓子も形はホールのアップルパイ(それも網目じゃなくて、生地で覆われているタイプ)

 使う生地もパイ生地フィユタージュなので、初めて見た人はアップルパイ?と思うかも

 違うのは、中身と表面

 

 まず、中身はといいますと『クレーム・ダマンド』か『フランジパーヌ』

(前者はアーモンドの粉+バター+砂糖+卵、後者はそれにカスタードクリームを混ぜ合わせたもの)

 一番馴染み深いのは、クロワッサンダマンドかな? 最近では、スーパーの菓子パンコーナーでも見かけます

 あとはタルトの中身によく使われている、あのずっしりとした重たいケーキ生地のようなモノ

 クレームダマンド(アーモンドクリーム)といいましても、こちらはしないと食べられないモノなんです

 

 次に表面ですが、こちらは宗教的シンボルが描かれています

 太陽、ひまわり、麦穂、月桂樹……etc.

 卵液を塗ったパイ生地にナイフなどで筋をつける、いわゆる浮き彫りカメオ――焼き色のコントラストによる模様


 とまぁ、以上のように構成は簡単

 円形のパイ生地2枚で、上記のクリームを挟んで焼いただけ

 装飾として、張り合わせたパイ生地の外周を縁取りといいますか、王冠を模すようにナイフが入っています


 なんといいますか、シンプルな焼き菓子

 食感もサクッとしたパイ生地、中にはしっとりとした歯ごたえのクレームダマンド

 バターにアーモンドと油脂の配合が多いので、かなりの食べ応え


 ただし、ちょっとした遊び心が入っておりまして――中に『フェーブ』なるモノが1つ入っているんです

 このお菓子は本来、家族など大勢で切り分けて楽しむモノ

 そうやって切り分けた際、この『フェーブ』が入っていれば当り――王様(女性だと王女様)になります

 

 ――ゆえにガレット・デ・ロワ(王様のガレット)


 この『フェーブ』ですが、直訳すると『そら豆』だそうです

 何故、そら豆? とお思いでしょうが、実はこのそら豆、起源は古代ローマ時代まで遡ることができるそうです

 なんでも、投票用紙の代わりに用いていたとか

 他にも、そら豆の形は胎児の形をしているので命のシンボルとして扱われていたり

 余談ですが、中華の豆板醤もこのそら豆が原材料


 さて、この『フェーブ』ですが現代では様々なモノに成り代わっています

 というより、19世紀にはもう『陶器の人形』に変わっていたそうです(最初に入れたのは、ドイツのマイセンに注文したモノ)

 そして今では、小物であればなんでもいいといった感じ

 まぁ、商売ですので可愛らしい『フィギュア』が多いみたいですけどね

 昨今ではコレクターアイテムとして扱われているようで、フランスの菓子店では毎年、違ったデザインの『フェーブ』を使っているとのこと


 だとすると、日本でも流行るのでは?

 と思うんですけど、認知度の問題で難しいようです

 まず、『フェーブ』のことを知らなければ食品に食べられないモノが入っているという『異物混入』になります

 たとえ念入りに説明したとしても、小さな子供が誤って口に入れたらどうしようもありません

 結果、日本では食べられる『アーモンド』や『クルミ』を『フェーブ』として扱っていることが多いそうです

 他にも、別添えだったり、何処に入っているかわかるようになっていたりと……色々と気苦労が多いみたい


 本来は何処に『フェーブ』が入っているかわからないでの、ナイフにふきんを被せてガレットを切り分けます(もしくは他の人から見えないところ)

 そして、切り分けたガレットをお皿に乗せシャッフル

 その後、それぞれが好きなのを選ぶ――のではなく、最年少者が振り分けるそうです

 元は家族で楽しむお菓子ですからね

 お店で買いますと、たいてい紙製の王冠が付属されておりますので、王様なり王女様に選ばれた方にはそれを被させてあげましょう


 本来は1月6日に食べられるモノですが、現代では1月1日(神の母性マリア様の日)を除く、最初の週の日曜日となっているそうです

 

 というわけで、興味のある方は「ガレット・デ・ロワ」を試してみませんか?

 最近では、ゲーム感覚で食べられているようですので――

 メンバー次第では、王様ゲーム的なノリで楽しめるのではないでしょうか?

 

 もちろん、本来の意味を踏まえて家族で召し上げるのもよろしいでしょう

 可愛らしい『フェーブ』に、お伽噺とぎばなしを象徴するような『王冠』

 小さなお子様がいれば、きっと喜ぶはずです

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