第3話 アメリカへの復讐

ライアンの母の葬儀後、フランクは空港にいた。

「本当に行ってしまうのか?」

近くには、大きなトランクを抱えたライアンがいた。

「あぁ、俺はもうアイルランドに帰るんだ

このアメリカには失望したよ」

「そうか、なら止めないよ

アイルランドでいい仕事でも見つかるといいな」

「おう、じゃあな」

フランクが家へ帰ろうとしたとき、突如反対側の搭乗口へと向かっていたライアンが振り返りこう叫んだ。

「なぁフランク、俺はいつかアメリカへと復讐する

どんな形式での復讐になるかはわからんが、全てのアメリカ人を絶望へと叩き落してやる

そのときに俺はアメリカへと戻るから覚えておいてくれ

それだけは伝えたかった」

それだけ叫ぶと、再び搭乗口へと歩いていく。


それから5年後の1929年のシカゴ。

「会長、本日の予定ですが午前10時からは重役会議

12時からお食事、その後1時からスコット空軍基地での商談

3時からお得意先のご訪問、6時からは大統領との晩餐会となっております」

スーツを着込んだ秘書と思しき男が会長である男に話しかけている。

「全く、今日も忙しいんだな」

デスクに座りながら好物のルーベンサンド(パストラミとチーズとザワークラフトのサンドイッチ)を頬張るその男こそが25歳となったフランクであった。


ライアンがアイルランドへと帰国したその後、フランクは製鉄工場で働きながら大学で経営学を専攻、卒業後に航空機メーカー「ハンバー・エアクラフト」を設立していたのだ。


「こうも毎朝忙しいとゆっくりとラジオを聴く余裕もない」

そう言いながら、フランクは机の上にあったラジオの電源を入れる。

「続いてのニュースです

アメリカ最大の貿易会社であるクラーク貿易会社の会長であるロジャー・クラーク氏が本日未明、自宅で遺体となって発見されました」

ラジオからニュースが流れる。

朝食であるルーベンサンドをコーヒーで流し込み、会議へと向かおうと席を立ったその時、ラジオから流れた名前にフランクは立ち止まった。

「クラーク氏の後任として会長の座に就くのは副会長であるライアン・ウィリアムズ氏25歳と見られ」


フランクは確かにその名前を覚えていた。

あの言葉がフランクの頭をよぎる。

「まさか…

いいや、そんなはずはない」

「会長、会議の時間です」

秘書が会長室へと入ってくる。

「悪いんだが、今日の予定は全てキャンセルしてくれ

大切な友人が来ているんだ」

秘書に頼み込みながら、フランクがコートを羽織りながら足早に会長室を出て行く。


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