満開の桜の下で

ほその まみ

満開の桜の下で

彼女は会話をしていた。

人が居ない所に向かって。

「さくじぃ元気?今年の秋は暖かいね。でも冬との温度差が激しいからさくじぃ達には厳しいか—————そうだね。流石もの知りおじぃ。・・・フフッ。————その話前にも聞いたよ。聞き飽きたー。—————みんな、そんなに笑わないでよね。えへへっ!」

そこに風が吹き抜けると彼女は笑って

「フウカ、くすぐったいってば。」

ホントに彼女は会話してたんだ。

桜や風と。それで笑って、話してたんだ。

休み時間が終わるチャイムが鳴った。

ヤバッ!教室に戻らないと!

彼女もチャイムに気づいたようで急いで教室に戻った。


それから少しずつ俺は彼女のことを考えていた。

アレは演技なのか?いや、そうは見えなかったし…

彼女のことをもっと知りたいと思った俺は友達のヨシに聞いてみた。

「ヨシ、お前あの桜の前に良く立ってる子、知ってる?」

するとヨシは驚いた顔になって

「お前、知らないのか?クラスメイトじゃんよ。名前は確か…桜野 心って言ったかな?お前が女子のこと聞いてくるなんて珍しいな。何かあったのか?」

俺は名前以降の言葉は耳に入っていなかった。

桜野 心…かぁ。

「お前、もしかしてあいつのこと好きなのか?」

その言葉にはっとして「ないない!ちょっと見かけたから気になっただけだよ」

と大げさに手を振った。

そしたらヨシはさらに驚いて、急に真面目な顔に戻って小声で言った。

「…あいつはやめておけ。あいつってさ、テスト中も授業中もずっと外ばっか見ててヘンな奴なんだよ。おまけに休み時間必ず毎回桜の木に行って話しかけてんだってよ。気味悪いだろ。しかも授業聞いてないくせに成績イイし。なにより顔がイイし!!そんな電波さんじゃなかったらモテモテな顔してるぜ。お前あいつの顔見たか?どこの人形だよ!ってなるぜ。あんな顔の人形あったら俺なら迷わず買うね。」

「あっそう。・・・ありがと」

俺はもうついてけ無いし聞くことは聞いたとその場を去ろうとした。が、

「待てよ、トシ。」

ヨシが俺を呼び止めた。

「なに?」

と機嫌悪そうに言うと

「マジであいつはダメだ。さっき言ったろ?授業真面目じゃないのに成績イイって。それで本気で頑張ってる奴らの反感買ってンだぜ。それに顔がイイだろ?それで女子の反感買ってる。このクラス、いやこの学年ほとんど敵だぜ。敵じゃないのはそこまで勉強頑張って無くて女子を見た目で判断する奴とトシみたいなクラスメートに興味ない奴。もう一度言う。心、あいつは要注意人物だ。」

はあっけにとられてしまった。

何でお前がそんなことを?

俺の言葉は表情に出ていたらしくヨシはニヤッと笑って

「それぐらい知ってなきゃ世間知らずなお前の友達やってられねーぜ。」

と笑って他の男子が集まってる所に入った。

ヨシってホントイイ奴だよな。

よしっ!もう少し彼女のこと聞いてみようかな。


まずは近くにいた男子に聞いてみた。

「ねぇ、桜野心って知ってる?」

そしたら男子は「イイよなあいつ。みんなカンニングしたとか言ってるけど俺はそんなの気にしないな。だって俺そんなの日住茶飯事だし。やっぱ女子は顔でしょ!」

こいつはヨシの言う「敵じゃない奴」だった。

「ちなみにお前名前なんだっけ?」

「え?桐野涼太だけど?」

俺はありがとさんとだけ言ってその場を逃げた。

「メモメモ。桐野涼太…カンニング常習犯っと」

これでよし。

次は女子に聞いてみた。

「ねぇ、君桜野心って知ってる?」

同じ聞き方だったはずなのに女の子は何故か凄く怒り出して

「あんた桜野心って今度私の前で言ったら殺すわよ!!!」

と言われた。

そしたら周りの女子も苦虫を噛み潰したような顔をして

「あの子サイテーよね。」「そうそう、ちょっと顔が良いからって男子にもてちゃって。」「いい気になってんのよね」「点数イイのだってカンニングしたってもっぱらの噂じゃない!」「それマジだったらヤバイよね~」「それにあの子自然と話してるって噂もあるし」「カンニングするような子だから頭どうかしてるのよ~」「あっ!そっか。なぁ~るほど~!!」「私、自然とお話し出来るのよってカワイコぶってんじゃないの?」「どぉーせ麗花様より可愛いなんてあり得ないのにね~!」

そこで出てきた麗花様を知らなかったので単純に聞いた。

「麗花様って誰?」

そしたら周りの女の子達が急に怒り出して

「麗花様を知らないなんてバカね!」「あんた地獄に堕ちるわよ。「麗花様は存在するだけで私達を救って下さっているのよ!」「あんたも救ってもらってるんだからね!」「謝りなさいよ!麗花様に!」「謝れ!」「謝れ!」

最終的になんか女の子達の謝れの大合唱になっちゃっていた。

この子達バカ?麗花様が分からないのに誰に謝れって言うんだ?

と思ってる俺を置いて。

そこで始めに質問した子。(心の名前を聞いてメッチャ怒ってた子だ。)が「おやめなさい、みなさん。みっともないですわ。」

と先までとは別人のように落ち着いた声で女の子達を鎮めた。

「誰かと思ったら唯一何も知らずクラスメイトの名前を一人も覚えてないと噂の林 俊也君じゃないですの。どうも、今まで何回もお会いしていますが初めまして。私宝之 麗花と言いますの。この際だからみなさんも自己紹介して差し上げたらいかがです?」

その言葉にはっとした俺は「メモメモ…」っとメモとえんぴつを取り出して

「宝之 麗花…お嬢様っぽい。きれると怖い。女子の女王的存在。」と書いた。

あと女子のひとが名前を言っていってくれた。

俺は「三好・佐藤・狩野・清水・紅…麗花の手下?」と書いとくとする。

次は勉強してる男子に聞いてみた。

ヨシが言う真面目な連中だと思ったからだ。

「ねぇ、ちょっとイイ?」

と聞くとそいつは

「彼女について話すことはありません。」

と言われた。困った僕に彼は

「…僕は才乃 勉太。成績は常に2位です。」

と言った。メモを取り出して書いてから、

「なんで2位なの?ってか全教科?凄いね。」

って普通に聞いてみたら彼はすっごい静かに言った。

「なんで?何ででしょうね。僕は彼女がカンニングなんてモノをしているとは思えませんから、ホント天才なのかも知れませんね。えぇ。僕が常に95点越えでも、2位なのは、努力が足りないのでしょうか?カンニングとか言う真似を私にしろと言うのですか?あぁ彼女がカンニングしていると言ってしまいましたね。実際見た訳じゃないモノは信じないのですが。もしかしたらアレですかね。私が不覚にも可愛いとか思ったから万年二位なんてされたのでしょうかね。君。これぐらいにしときなさい。その女はカンニング本気で疑われていて先生に目つけられていますから。」

一気に言われたら俺の頭は混乱してなに言ってンだこの人とか思っちゃった自分もいるけど全部95ってのは聞こえてスゲーって思った後じゃあ1位はどんな人なんだロート思ったけどこれだけは言っておかなくちゃって思ったんで

「ありがとう勉太君。勉強がんばってね。95ってすごいね。苦手教科無いんだ。大ジョブ、勉太君みたいに真面目で優しくて格好いいひとはきっと成功するよ。色々教えてくれてありがとう。じゃね」

あぁ頭がまだふらふらする。俺思ってること言えた?勉太君ありがとうって言えてた?なんか余計なこと言った気もするしやたら長かったような…まぁいいや。メモでさっきのまとめよー。

あぁ!一位の人のこと聞くの忘れてた。まぁいいやあとでヨシにきこー。


放課後—————


「なぁヨシ!ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」

ヨシは鞄を持とうとしてたのにそれを置いて俺の方に来てくれた。

「ん?何だ。一日に二回とは珍しいな。じゃぁそういう時は、

「「情報!!」」

だよな~」

「だね~っで今回はクラスメイトに聞き込みしたんでそれで。」

「あぁ。昼休みやってたアレか。」

見てたんだ。流石自称情報屋なだけある。

「そう。それでね、メモしたんだ。」

「おぅ!偉いな。成長したか!」

ヨシは小さい子を褒める時のように俺の頭をなでる。

「もうっ!子供扱いは辞めろって。」

あははは!っと二人で笑ってから

「それで、今回の情報はこれ。3つ。まずは桐野涼太はカンニング常習犯だった!!」

「それは知ってる。ってかお前知らんかったのかトシ。」

「知らないよ!そんな悪い人には見えなかったし。」

「そうか、じゃぁ聞いた勇気に涼太のおまけ情報やるよ。あいつは昼お前に言った心の敵じゃない奴らの頭だぜ。どこか芯が通ってるから頼れるんだよな~心を何とかしたいなら手伝ってくれるかもダゼ。」

「へぇ~そうなんだ~他は?」

「後の情報は他の情報による。」

「そっかぁ~じゃぁ次!宝之 麗花はお嬢様っぽい言葉を使う、切れると怖い、女子の女王っぽい。あとあと…あ!俺のこと知ってた。」

「いっとくが麗花はお嬢様ぽインじゃなくてお嬢様なんだよ。宝石店宝花の社長が麗花のお父さんなんだ。切れると怖いって心のことだけだろう?言ったじゃんか。反感買ってンだって。女子の女王は見てたら分かるし。クラスメイトは普通覚えてるもんだし。これはあんまし取引には向いてないな。最後は?」

ここまで俺が知らないことを知っているとは。流石ヨシ。

「最後は。才乃勉太。心については何も話すことはないみたい。万年2位で、いっつも95点以上なんだって。すっごく悔しいみたいだよ。それで一位の人は分かんなかったんだけど女の人みたいでカンニングしたとか言われてる人なんだって。聞きたいのは一位の人の名前なんだけど。」

それを聞いたとたんあははははははっ!とヨシは笑い出して

「お前わっかんねぇのか?マジで?天然なのかアホなのか。どっちにしろメッチャうけるし!!普通に教えてやるよ。心だよ心。カンニング疑惑とか俺言ったじゃんかよ。同じだーとか思わない訳?」

俺はそれでようやく「そっか!」と納得した。

「心が一位なんだ~凄いネ~95点以上って何点なんだろ?」

「そりゃぁ100点しかないだろー!!知ってるか?あいつ100点以外取ったこと無いんだってよ。すげーよな~。」

「ほんっと何でもしってんだねヨシ。俺の情報全部知ってンじゃん。」

そうしたらヨシはにこっと笑って

「だってお前が質問するとこずっと見てたからな。」

とあっさり言った。

「それって酷くない!?」

「まぁまぁ。それでお前に関して分かったこともあるんだぜ。」

「えっ!何々?」

俺がそっちに興味津々で聞くと右手を出して

「情報♪」

とヨシは言った。

俺はにたっと笑って

「俺の目の前にいるヨシは人の情報を盗む奴です。」

ヨシは苦笑いを浮かべて

「よし。それでいいわ。あのな今回お前が質問した3人居るだろ。あれは心に関して言えば三大勢力の三大ボスだったんだよ。お前は見る目あるって事だ。」

「いや、ただ俺は近くに居た奴に聞いただけで・・・」

「それが正解なんだ。心はこのクラス。噂は学年中だけど結局解決するのはクラスの中でって話なんだよ。だからクラスメイトのお前なら解決出来るんだ。」

「・・・良く分かんないんだけど。」

「さっき三大勢力って言っただろ。それは麗花率いる「女子派」。涼太率いる「どうでも良い派」。そして勉太は率いる訳じゃないけど、上のモノに従う傾向が強いから結果勉太の言うことは何でも聞く「勉学派」。以上三大勢力な訳だ。」

「わかった。ところで俺とヨシは何処の勢力なの?まさか女子じゃないよね?」

「そりゃそうだ。俺たちは女子じゃない。でも勉強もしなかっただろ?だからといって涼太に従うこともなかった。俺たちは二人だけその他だ。」

「他にその他の人は?」

「居ないよ。ちなみにクラスの中で俺は「情報屋」でトシは「クラスメートにきょーみ無し」って言われてた。」

「うっ!あっ当たってる・・・。てかクラス中に情報屋って嘘ついてんのかよ。ヨシ。」

「嘘じゃない。情報持ってるのは本当だからな。」

「そうだけど…」

「そのお前が今日質問し回ってたんだ。クラスメイトに興味無しのお前が心のこと聞き回ってたんだぜ。おかしいよな?」

「そう?質問してただけじゃん。」

「そして質問したのは頭

かしら

ばっかり。下っ端は何て思うかな?」

「無視するなよ。えーっと、頭と話するなんて百万年速い!とか?」

「逆だよ。仲良くもないのに頭と普通に話せて凄いって思うんだよ。」

「ってことは?」

「ってことは、クラスのほとんどがおまえに味方してるって事。明日メモ帳忘れるなよ。あと、心を何とかする方法は自分で考えろ。明日の放課後、心と会えるようにしとくから何か考えて来いよ。じゃぁ今日はこの辺で。またな、トシ。」

「うん。いつも大事な情報教えてくれてありがと、ヨシ!」

それで今日は帰った。


家—————


はぁ~何か考えろって言われてもなぁ~

そんなことしたこともないしさ~どうすりゃいいんだ。


桜野心。かぁ。


彼女は自然と話が出来る。

成績がとても良い。

万年1位。

とても美人。(顔は見ていない)


「才色兼備ってことか?俺そんな人のことも知らなかったんだな~」

世間知らず

クラスメートにきょーみ無し

「言えてる。」


何か無いかなぁ~


そうして夜はふけていった——————



次の日————


「おはよう」

「おはよ…!?トシお前どうしたんだよそのクマ!」

「朝からそんな大声出さないでくれよヨシ。頭に響くから。」

「お前は二日酔いのおっさんかよ…」

ヨシが何て言ったかは聞こえなかったけど、昨日考えても考えても考えてもでなくて気づいたら朝だったのだ。

だから結局・・・

「トシ、そんだけ考えたって事は出たのか!?アイディア」

「出てない・・・」

ということだった。


今日の学校は最悪だった。

朝から先生にクマで「そんなに勉強するのは良いけどお前じゃ一晩では無理な成績だぞ」ってからかわれるし。

今日に限っていつも無視してくれる女子とか男子とかが話してくるし。頭痛いの何のって凄かった。

なんでもみんな口を揃えて「昨日あの人たちと話せて凄いね!」とか「あの勉太君を褒めるとは…」とか「心のこと好きってホント?」とかドーでも良いことばかり。

なんかみんな元気だなぁ~って思った。

でもここに長居することは出来ないので昼休みのうちにさっさと中庭に逃げることにした。

中庭にはでけぇ桜の木があってその下で寝ると気持ちインだ。おまけにみんな寄ってこないし。

あれ?桜の木?なんか聞き覚えあるような…まぁいいか。

取りあえず中庭に行った。そしたら思い出した。

昨日と同じように桜の木に話しかけてる心を見つけたからだ。

思い切って話しかけてみた。

「ねっねぇ!そこの…心ちゃん!ちょっと話しない?」

俺が現れたことに驚いたのか、俺の声がデカかったのか心は勢いよく振り向いた。

その瞬間あぁ、なるほど。と思った。

くりくりの瞳に薄い唇。頬は少し赤くて鼻は筋が通ってるっていうのかな?みんな普段はジャージだけど心だけいつも制服来てるらしい。(ヨシから聞いた)腰まで伸びた髪は右と左で綺麗に三つ編みされていて冬用制服もよく似合っていた。

これは反則だ。どっからどう見ても清楚なお嬢様って感じだ。

麗花も綺麗の部類だろうけどこれには勝てない。

いるんだな、ホントに。全部持ってる人って。

そんな心の姿に見とれていると、心が

「はっ!ごめんなさい。私すっごくダサイでしょ。不細工なんでしょ。ごめんなさい。いつも私を始めて見た人は不細工すぎて固まっちゃうんだよ。ごめんね。」

と意味分からんこと言われた。

「いや、不細工どころか綺麗だよ。すっごく可愛い。それにださくないよ。それどころかメチャクチャにあってる。ねぇ、話しよ?」

そういうと彼女はこっちに来てくれた。

「不細工って言っちゃって良いんだよ。みんなそうやってフォローするけど私分かってるんだから。」

これはかなり重傷だな。

いい。今はそれはおいとこう。

「ねぇ。心ちゃんは友達、いる?」

彼女は首を横に振ると話してくれた。

「今は一人もいないの。」

「今は?」

「そう。今は。入学したばっかの時は麗花ちゃんが大親友だった。でもね、一学期も終わる終業式の日。麗花ちゃんは好きな男の子に告白することにしたんだ。で、告白するのは放課後にしたの。でもその日の昼休みにね、麗花ちゃんの好きな男の子から私が告白されちゃったの。そしたら麗花ちゃんが怒ってもう私と遊ばなくなっちゃったの。それから私無視されるようになっちゃったんだ。」

「そうなんだ」

俺はまずいことを聞いたなと思ってうつむく。

そうすると彼女は気にしないで!と言って

「急にヘンな話しちゃってゴメン!なんかさトシ君って話しやすいんだよね。ちゃんと聞いてくれる気がするってゆうか…」

「そうなんだ」

ぼくはさっきと同じ答えしかできなかった。

そのまま沈黙が続き…

心が急に立って、

「もうすぐチャイムなるね!」

と言った直後に

キーンコーンカーンコーン

とおなじみのチャイム音。

二人は揃って笑って

「速く教室にもどんないと」

と言って駆け足で教室に戻った。

さっきまで眠くて集中出来なかったのが嘘のように5時間目の授業は集中出来た。

おかげで作戦が思いついた。

決して良くはないけどこれしかない!

ちょうど明日一番カンニングを疑ってるK先生のテストだし。

よし!頑張ろう!


放課後———————


「心!ちょっと話あるんだけどいいかな?」

心が帰ろうとしてる所を俺は呼び止めた。

心は驚いた顔で振り返って「う…うん。」と小さい声で返事してうなずいてくれた。

俺は心に授業中思いついた作戦を心に教えた。

「心をみんなの輪に戻すいい作戦思いついたんだ!」

「ホント?また麗花ちゃんと遊べるの?」

不安げに俺を見る。

その不安を跳ね返すように俺は笑って

「うん!大丈夫だ!・・・たぶん。」

「あははっ!たぶんなの?いいよ!どんな作戦?あんまり無理しないでね?」

今度は心配してくれたので大丈夫だよと言って安心させてあげる。

「それで作戦なんだけどね。明日K先生のテストでしょ?」

「そうだね。K先生って言えば私のカンニング疑ってる先生だよね?いつもテスト中窓見るたびに「テスト用紙はそんな所にない!」って怒る」

「そうそう。あれって叱られてたの心だったんだ。」

「そうだよ~そんなことも知らなかったんだね、トシ君」

俺は痛い所突かれて苦笑いで

「そうだね~」

って返した。

「で、明日のテストなんだけど、心を一人でテスト受けるんだよ。」

「えっ!一人で?」

「そう。そしたらカンニングのしようがないだろ。」

「確かに。そしたらカンニングの疑いは晴れるね。」

「そしたら勉太君達は仲良くしてくれると思う。」

彼女は首を傾げて「何で?」と聞く。

これは予想済み。

「勉太君は心が「カンニングして点数取ってる」からセコイ人で近寄りたくないんだよ。」

「そうなんだ。噂でそんな風に思われてたなんて。」

「一昨日までは俺もまたくもって知らなかったからさ。俺は心がみんなに嫌われてることさえ知らなかったんだ。心が知らないのは当然だよ。」

「そうかな。」

「うん。じゃあ続き話すよ?それでクラスの三分の二は仲良くできるね。後は女子なんだけど…女子は賭なんだ。ホントに仲良くなれるか分からない。」

「じゃあ麗花ちゃんとは・・・」

「そうなんだよな。麗花ちゃんどうやったら心のこと認めてくれるかな…」

「麗花ちゃんは…根は優しいんだ。私が中学校でなかなか友達作れなかったのに声かけてくれたのは麗花ちゃんなんだよ。」

「そうなの!?」

「そう。みんながどんどんグループ作っていく中で私あんまり人と話すの上手くなかったから。そんな私をみかねて「私のグループに入りません?」って言ってくれたんだ。その時の嬉しさは口では表せないよ!でもあれで別れてから全然話して無くて・・・」

思いついた!

「それだ!」

急に俺が大声出したから心ビックリしたみたいだ。

「あぁゴメンゴメン。ビックリさせたね。でも思いついたんだよっ!女子の攻略法!」

そういうと心は何故か顔を赤くして

「なんか…それ…その言い方…ヘンな風に聞こえる。というか…ヘンな風にしか聞こえない・・・。」

「え?どんな風に?心が女子と仲良くできる!と思ったんだけど…?」

「わっわかってるから!つっ続けて!」

なんか心が必死にそんなこというので思いついたこと言うことにした。

「お、おう。多分心がこれからも友達として仲良くしたいって言えば麗花も素直になってOKして大団円っていくんじゃないかな~と思って」

「なるほど!そんなうまくいくか分かんないけどやってみる価値はあるよね!」

それから少し黙り込んで

「なぁ。質問してもいい?」

「うん。いいよ。」

「あんま答えたくないんなら別に無理して言わなくても良いんだけど…」

「何よ!じれったいよ!速く聞いて!」

「うん。あの心が告白されて麗花が告白しようとした幸せな奴は誰かな~と思って。」

そしたら心はあ、あぁ。そんなことね。と言って話してくれた。

「あぁ。トシ君知ってるか分かんないけど三好 良樹君なんだ。私の何処が良かったんだローね。しかも可愛かったからなんて言うんだよ。笑っちゃうよね。そんな嘘つかなくてもいいのにね。」

俺は固まってしまった。三好 良樹?聞いたこと無いはず無いじゃないか

。俺の親友の、一昨日にも本名知ってた唯一の名前だ。ヨシ。三好に良樹ってヨシヨシだからあだ名はヨシだな!って。ヨシが(結果的に)麗花と心の中を離したのか?落ち着け俺。そうじゃない。ヨシはただ心を好きになっただけじゃないか。何だろう、このモヤモヤ感は。うーん?

「ごめん。今日は体調悪くなったから帰るよ。」

「そう。なんか顔あかいしね。熱でもあるの?」

そうして帰った。

熱を測ろうと俺のおでこに触れようとした心の手から逃げるように。

ヤバイ。マジで熱でもあんのか俺。


ちなみに家に帰ってねぇちゃんにそれ話したらそれマジ?今どきんなこと実際あんのか!とか言って腹抱えて転げ回った。

母さんに熱あるかもって同じこと言ったら「確かに病は病だけどそれは「コイの病だよ。」って。

俺魚じゃねーよ。っていったら母さんも「あんたバカ!」つって笑っちまうし改めてうちの家族・・・変だな。相談した俺がバカだった。

でも母さんもねぇちゃんも風邪じゃないって言うし何かよく分からんけど頑張れって言われたし頑張るかな~明日から。

おやすみ~


翌日——————


「おはよ~!!ヨシ!」

「あぁ。おはよ~ってトシ!トシじゃないか!」

さっきまでちょっと沈んでたぽかったのにいきなり元気になって

「よう、トシ!一発殴らせろこんにゃろー!!」

とか言うから取りあえずヨシが構えたから俺は本能的に

 逃げた。

「あっ!ちょっと待て!トシ!分かった。殴らないから話聞け。」

こうゆう場合絶対的に話というのは愚痴だ。

情報屋やってると大変~みたいなこと聞かされる。けど、俺には聞くぐらいしかできないので取りあえず聞くことにした。

「何?今日はどうしたの。ってか何で俺殴られそうになったの。」

ちょっと声を低くして言った。怒ってるのだ。

「まぁまぁそう怒るなよ。今回はお前が悪いんだ。そう。お前が悪い!だから昨日俺が…1時間しか寝てないんだぞ!テストなのに!どうしてくれんだ!やっぱ殴ら…」

「じゃっ!この辺で。」

俺がダッシュモードに入ったらヨシは全力で制してきた。

「待て待て待て。冗談。冗談だから。取りあえず聞け!今俺は話したくてたまらんのだ!」

そう言ってヨシは超スピードで話した。

「昨日お前が…いや話は始めの一昨日になるんだ。一昨日お前勉太を褒めただろ!それでなんか女子がスゴーイとか格好いい!とか言い出してお前の人気がメチャクチャ上がったんだ。そこで翌日。昨日のことな。お前がパンダみたいなクマ作って学校来たんだぞ!もうどうしたのどうしたのって女子昨日うるさかっただろ。で、当のお前は二日酔いオッサン状態で五月蠅いな~程度にしか思ってなかったんだろ。でもな!一度上がった人気は一日では落ちないんだよ!もうクールだわ!とか格好いい!って五月蠅くてそんな奴らがお前に聞けなくて諦めて誰に聞いたと思う?俺だよ!考えれば普通だよな!情報屋だしお前の親友だしな!どんだけだったと思う!クマ出来た理由なんかクラス全員どころか先生まで俺に聞く始末。それってどうゆう状況よ!もう全部話ちまったぜ!心も聞いてきたぜ。クマの理由。だからお前の作戦知らんけど台無しになってるから!そこは済まないと思うけどそれ以上に俺に感謝しろ!俺は昨日深夜2時までお前についての女子からの質問攻めだよ。誕生日、好きな色、昔の思い出、まぁ色々あったな。あぁ全部真面目に答えた訳じゃない。安心しろ。でもお前人気は凄いモノがあったぞ。なんと言ってもアレだな。あの勉太を褒めたのがな。凄い効力だった。」

「???なにいってんの?ヨシくーん大丈夫?最後のしか良く分かんなかったけど褒めるのいけなかった?」

そしたら俺の両肩ガシッと掴んで

「そうだな。どちらかというと褒めても勉田が怒らない、又は反論出来ないほめ方と褒められた後の勉太の表情が心底嬉しそうだったからだな。」

「そうなんだ!良かった。」

俺はホッと胸をなで下ろす。

そしたらヨシは

「さっきあんまり分かんなかったって言ったよな?じゃあもう一回だけ謝る。そして説明するから良く聞け。昨日お前がクマ出来た理由を聞かれたんだ。そこまではOK?」

俺はうん。と頷く。

「じゃあお前は何でクマ出来たんだっけ?」

俺は少し考えて

「…心をみんなと仲良くさせる作戦を考えてた。で、寝るの遅くなった」

「だよな。みんなにそれを教えたんだ。」

・・・・・・

「それって俺昨日考えたの意味無いじゃん!無駄かよ!」

「だからスマン!でもみんなの反応は良かったぜ。あのクラスメートに全くきょーみ無しのトシがクラスメート(心)のためにクラスメートの名前覚えてまで仲良くさせようとしてるって。あと心の情報も付け加えといた。」

「何て?」

「見た目アレなのに本人は心底自分を不細工だと思ってて、ダサイんだって信じてるって。カンニングは真っ赤の嘘だって。自然と話せるのの真偽はまだ不明っていっといた。K先生にも。」

「K先生にも?何で?」

「何か良く分かんないけどそれ話してたら教室に居た。聞いてた。」

「そ…そうなんだ。なんか良く分かんないけど、解決した。ってこと?」

「そういうこと」

「よかったぁ~」

俺は心底安心した。ふと、あることを思い出した。

「なぁ、そんなに情報ベラベラ喋るなんて珍しいよな。誰かから情報もらったの?」

そしたらヨシはニタァ~っと笑って

「お前のラブラブ話でチャラにした。」

って言った。俺ははぁ?て言ったけどヨシは

「昨日の話はお前の姉貴から聞かせてもらったぜ!どうみてもお前ら両思いだしこれからのお前の恋バナを聞くって条件で手を打った!」

「えっちょっ、おまっ!待てよ!」


教室に入ったらヨシの言ったことがよぅーく分かった。

心と麗花が仲良く話してて、勉太が心に勉強法とか聞いてて、涼太とかが心に握手とか求めてるよ。

心は麗花と仲直り出来ただけで嬉しいみたい。

なんだかこれはアイドルだな。

入りずれぇー。

そしたら先に教室来てたヨシが

「おっ!トシ!おはよう!」

って教室中に聞こえるようなでかい声で挨拶してきた。

トシの所をやけに強調して。

そしたらみんなの視線が一気に心から俺に向いて

「あっ!トシ君だ!」「トシ俺の名前覚えてるか~」「心をクラスになじませようって凄い勇気だと思う!」「優しい!」「これからはみんなの名前覚えるんだよ~!」「格好いい!」「トシ君!おかげで心と仲良くなれたさ!」「そうなの!」「心って意外にいい奴でさ~」「心ってマジで自分不細工だと思ってんだね!」「心カンニングするような奴じゃなかったよ!」などなど。

後半心の話ばっかになっていたけど思ってた以上にクラスメートの奴はいい奴らばっかだった。

一斉に喋らなければ。

だから今はただうるさかった。五月のハエ並みに。


この日知ったけど、ハエは朝だけじゃなくその日ずっとうるさいんだって。

これ覚えとくといいよ。役立つか分かんないけど。


てことでその日俺もそうだけど心も質問攻めにされて大変だった。

というか俺は主に人の名前を覚えさせられた。昼休みはクラスメイト適当に連れてきて「だーれだ?」とか言われるから困った。

多分ヨシのアシスト無かったら一人も答えられなかっただろう。

というか覚えろ!って言われてそうそう覚えられるもんじゃないんだ。


放課後—————


まだうるさいのかなーと思ったけど放課後はみんなあっさり帰った。

最終的に俺と心とヨシが残って

「じゃあ後はお二人さんでごゆっくり~。トシ。俺に感謝しろよな!」

と言って帰ってった。

そこには沈黙がおりて。始めに沈黙を破ったのは俺だった。

「何か今日、大変だったね。」

「そうだね」

「心人気者だったね」

「そうかな?トシ君の方が人気者だったんじゃない?」

「それはないよ。心、麗花と仲良くなれて良かったな。他の子とも」

「そうだね。それもトシ君のおかげだよ。ありがとう。」

「いやいや。でもホント。クラスのみんなと仲良くなれて良かったな!俺まで嬉しいよ!」

俺が満面の笑みを浮かべると心は笑い出した。

「あっはは、他人のことなのに自分のことのように笑うんだね。」

俺は「他人」って言葉でモヤモヤした感覚が戻ってきた。

なんだろう。この気持ち。

「あのさ。確かに他人だけど、他人だけどさ。心は特別ってゆーか。麗花とか、他のクラスメートのためにはそこまで考えたりしないよ。」

「それって、どうゆう意味?」

少し心の顔があかくなってるのが分かった。

その顔を見ると、今まで考えたこともなかったのにするりと言葉が零れた。

「好き…って意味だよ。」

言った直後俺も顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなって二人して真っ赤になって俯いた。

それから何秒たっただろう。

「帰ろっか」

と俺が言うと心は思い出したように

「桜見て来なきゃ。トシ君。ちょっとだから、一緒に見てこよう。」

そして中庭に行くと、桜が咲いてて。

凄く綺麗で美しくて。

「あのね、私、桜野心って言うでしょ?それはね、桜みたいに綺麗な心を持って欲しいって願いなんだって。」

「じゃあ心は親孝行だね。その名に恥じない心をもう持ってるじゃん。」

心はフフフっと笑って

「もう一つ意味があるんだ。私の名前」

「何?」

「桜野心ってかいて(さくらのしん)って読むの。桜の心みたいに太く長く生きるんだーって。面白いでしょ。」

それで二人は桜を見続けて、

「ねぇ。一つ聞いていい?」

「うん、何でもいいよ」

「自然と話せるってホント?」

そしたら心はにこっと笑って

「ホントだよ。お父さん達も一回だけ聞いたことあるんだって。私達と同じで付き合った初日にこんな風に桜が咲いてて。そう、お父さん達が見たのもこの桜。同じ桜なんだよ。たぶんおばあちゃんの時もおじいちゃんの時も。そのたびにここで付き合った初日にこの桜の心を一回だけ聞いてるんだって。そんな一瞬一瞬が積み重なって、何が間違ったのか私は中学校上がってすぐこの桜に限らず、草や、木や、花の声が聞こえるようになったの。私の声も聞こえるみたいだった。ちょうどそれが分かったぐらいの時に麗花とケンカして。人と仲良くするのが怖くなっちゃって。いっつもここに来て、桜野おじさんや風のフウカとお話ししてたの。自然は嘘つかないから。人より正直だから。でもこれは内緒ね!みんなビックリしちゃうもん。二人だけの、ヒミツ!」

「ねぇ、何で俺には話してくれるんだ?」

「何で?分かんないの?彼氏だからでしょ!」

そうゆうと心は少し背伸びして俺と唇を重ねた。


満開の桜が僕たちを見守ってくれていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

満開の桜の下で ほその まみ @Hosonoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ