大学の授業でやったソフトボール

@heikuro

レフトに飛ばせれば良かった

40代も半ばになって、何度も思い出すようになったことがある。

大学の授業でやったソフトボールの話だ。


ただ、だだっ広いだけが取り柄の地方都市にあったキャンパスで、野球経験者もほとんどいない体育の授業でやったソフトボールだった。リトルリーグにいたってだけで、4番を打ってた自分が、結局活躍しなかったって話だ。


ちょっと野球経験者もいるけど、下手っぴの集まりでソフトボールをやると、一番上手いやつはレフトで4番になった。山なりのボールしか投げられないピッチャーしかいなくて、右打者ばっかりなんだから、ほとんどのボールはレフトに飛ぶ。別に自分だって、リトルリーグのときは補欠だったんだけど、フライが捕れて、遠くに飛ばせるってだけで、4番でレフトになった。


最初はバカバカホームランを打ってた。自分のあたりも全部レフト方向だ。しばらくしたら、自分の打順の時だけ、レフトが異常に下がって守るようになった。


でも俺は、アホみたいに毎回レフトに大きなフライを打ってた。そのフライは、すげー下がってるレフトの前に落ちるようになった。ワンバウンドでそのボールを捕った、やっぱり数少ない相手チームの野球経験者のレフト君は、ちゃんとセカンドに返球してた。普通ホームランみたいな大飛球だけど、シングルヒットだ。


その作戦を考えてたのは、相手のピッチャーだった。なんというか、コスいことをしてもとにかく勝とうとするやつだった。彼は、大飛球でシングルヒットしか打てなかった私に向かって、気持ち良さそうに「シングル、シングル~」と言ってた。声まで覚えてる。


それから後も、俺は確か、ずっとレフトにフライを飛ばしてた。たった一度だけ、ランナーがたまってる時に、ライト線を狙ってツーベースを打ったことは覚えてるんだけど、確かそれ以外は、とにかくレフトフライばっかり打ってた。


捕られるってわかってるけど、なんでかそうしたかったんだ。自分が気持ちいいことをしたいって、本能みたいな感覚だと思う。チームメイトは、そんな4番打者にどう思ってたのかな?



なんでこんなことを思い出すかって、それは多分、40代も半ばにさしかかろうという、自分のアホみたいな失敗の繰り返しがそうさせるんだと思う。


今日の会議でも言われた。「なんでそんな、失敗するって判ってるやり方を、繰り返すの?馬鹿なの?死ぬの?」


さすがに、後半は実際には言われてないけど、大学時代の「シングル、シングル~」という、嬉々とした、あの相手ピッチャーだったやつの声とシンクロして、そんな風に聞こえる。


なんで俺って、成長して無いんだろう?

っていうか、生きていく気があるんかなぁ。俺。


40代って、こういう時代なのかな?それとも俺だけなんかな?

っていうか、なんであのソフトボールの話を思い出すんだろう?

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