スズメバチ

 数年前、スズメバチが軒下に巣を作った。だんだん大きくなっていったそれは直径六十センチほどにもなったが、誰も届かない二階。そちら側は斜面になっていて通らない。下の道路まではかなり距離があるので害はない。

 ということでそのまま放置していた。


 いつも掃除しているときに隣の窓を開閉しても全然問題ないので、完全に油断してしまっていた。



 そして事件は起こった。


 これは私のせいなんだろうなぁ。ホントにかわいそうなことをした。



 大掃除をしたときのこと。

 普段普通にそこも掃除していた私は、何も考えていなかった。 


 各部屋の窓拭きを順番にしてくれていた長女が、喚きながら頭をかきむしりリビングに飛びこんできた。


「どないしたん!?」


 駆け寄って声をかけるも喚くばかり。狂ったように頭を掻きむしっている。


 何事!?


 とよく見ると、長女の髪の毛の隙間からスズメバチの姿が見えた!


 ええ!?


 慌ててそいつをやっつける。泣きじゃくる長女を膝に抱いて、刺されたところを見せてもらっていると。


 二階から長男と次男の遊んでいる声。


 ここで私はまた重大なミスをおかしてしまった。


「二階の窓、閉めてきて!」


 と言ってしまったのだ。膝に抱いた長女の様子にテンパっていたとはいえ、とんでもないミスだ。


「刺されたー!!」


 と二階から次女が駆け下りてきて、そのミスに気づく。


「ええ!? ごめん! ごめん!! 大丈夫!?」


 二人も刺されて、もうパニック状態。だけど窓は閉めなくちゃ! 長女を膝から下ろし二階に駆け上がる。窓を閉めるために部屋に入ろうとしたら・・・。


 うわ~!

 部屋の中にたくさん入ってきてる!! 


 窓は無理なので部屋のドアを閉め、二人の様子を見に戻った。



 幸い二人とも少し腫れた程度ですみ、胸をなでおろした。


 この日以来、長女はハチが怖くなった。・・・次女はなぜかなんとも思っていない。




 そして現在。

 

 なぜか次男はハチ好き。捕まえて手の上を歩かせたりしている。


 やめて~!!


「刺されるし! やめなさい!!」


 いくら言ってもきかない。クマンバチやミツバチだけど、それでも刺されたら痛いだろうに。


「だって可愛いやん。刺さへんで?」


 いや、いつ刺されるかわかんないでしょ!?


「この前バット振ってたら、すこーんってクマンバチ打ってしまった」


 とか笑いながら言ってるし! それってノックアウトしてたらいいけど、攻撃されたと勘違いしたら襲ってくるんじゃないのか? こわすぎる~。



 こんなお兄ちゃんを見ていたからか、次女のソフトボール大会の応援に行っていたとき、本部テントの中に飛びこんできたスズメバチに大人がきゃーきゃー言って逃げ回るのを尻目に、そいつを追いかけて捕まえようとした四男。周りの大人顔面蒼白!! 


 慌てて四男を取り押さえました。



 ホントに怖いんだってことをどうやって教えたらいいんだろう・・・?。


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る