プチトマト
今から十一年前、都会から田舎に引っ越してきた。
駅前の小さなハイツの一階で、庭がついている。そこで初めて家庭菜園をした。
せっかく家で作るのだから無肥料無農薬でと思い、ガリガリの土を耕して落ち葉や枯草をたくさん入れて、プチトマトを植えた。
黄色い花がたくさん咲いて、可愛らしい小さな実がなってくる。それはだんだん大きくなってぷりぷりのトマトになる。
育ててみたことがある人にはわかるだろうが、ある程度の大きさになった青いトマトは真っ赤になるまでにかなりの日数を要する。青いトマトが鈴なりの時期が長く続くのだ。
毎日毎日眺めては、
「早くあかくな~れ」
と声をかけていた。
ある日のこと。
日中は幼稚園に行って長女が留守なので、三才の次女は一人遊びしていた。ぬいぐるみ相手におしゃべりしながらパズルをしたり、ブロックで何か作ったり。
私は昼の後片付けをした後、縫物をしていた。
そのうち遊び疲れた次女は私の近くにすり寄ってきて眠ってしまったので、私はタオルケットをとりにいった。
ふと庭に目をやると、ウッドデッキの隅に大きなザルが置いてある。あんなところに置いたっけ? と取りに行ってみると。
ザルにはいっぱいの青いトマト。
くらり。
トマトの枝を確認してみる。
・・・一つ残らず収穫してくれていました。小指の爪ほどの小さな小さなのさえ残さずに。
やった本人はというと。
すやすやと気持ちよさそうに昼寝中。叱るに叱れない。
お昼寝から起きたときには少しショックも落ち着いていたので、ゆっくりと言い聞かせることができた。
寝ててよかったね?
「大好きなトマトになるんだよ? だから赤くなるまでもうとったらだめだよ」
次女は元気に
「わかった。もうしません」
と言ったはずなのに。
長い日数かけて大きくなった実を、もう一度収穫してくれました・・・。
二度目は雷を落としてしまいました。
当時は青いトマトの活用法なんて知らなかったから、そのままゴミ箱へさようなら。
ちなみに今は、てんぷらにしたりジャムにしたりできることがわかったので、秋にトマトを撤去する際に残っている青トマトは全部消費している。
しばらく置いておくと赤くなるということも学習した。
あのとき知っていたら、あそこまで怒らなかったのにね。
親も、日々学習。
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