置き去り事件
先日世間を騒がせた子どもの置き去り事件。
実は似たようなことをしたことがある。長女が四年生、次女が二年生のときのことだ。
狭い車内であんまりにもケンカばかりしてうるさい二人に業を煮やした私。
「いいかげんにしなさーい!! ケンカやめないともうここで下ろすよ!?」
一旦車を停めて後部座席の二人を睨みつける。
その剣幕に一度はケンカをやめる二人。
けれど車が発車してしばらくすると、またケンカが始まる。
「ホントに降ろそうか?」
そんなことを数回繰り返した後のこと。
何度言ってもきかない二人を本当に車から降ろした。
二人を置いてそのまま車を発進させる。
自分たちが悪かったと観念したのか、追いかけてもこない。
そのまま角を曲がり・・・ワンブロックまわって元の場所に戻ったら。
いないのだ!! 二人が。
え!? なんで!?
確かに田舎のワンブロックは大きかった。角をまがってすぐに戻るつもりが、ぐる~りと大きくまわってきた。とはいえ、せいぜい数分のこと。
自分たちで帰ろうと勝手に歩いていったのか?
いつも通る道を自宅の方へ向けて走ってみるが、二人の姿はない。・・・まさかこんなに遠くまで来れるはずはない、ともう一度Uターンして元の場所に戻ってみる。もしかしたら、隅っこで見えないところに座っていたのか?
ところが戻ってもう一度その辺りを探してみても、やっぱりいない。
どこに行ったの!?
顔面蒼白になったのは言うまでもない。
まさかさらわれた?
まさか、まさか、そんなはずは!
もう一度車を走らせる。今度は私が曲がった方向へ。もしかすると、追いかけて行ったのかも・・・。
あちこち探してもやっぱりいない。
家に電話を入れる。ちょうど帰ってきたというお父さんも捜索に加わってくれて、二台で探す。
どうしよう。見つからない。
警察に連絡する?
そんな考えが頭をよぎり始めたとき、携帯が鳴った。
「見つかった!」
二人は家に向かって帰っている途中だったそうだ。バイパスの脇を歩いていたらしい。
なぜすぐに見つからなかったのか。
私はいつも車で通る道を探していたのだが、二人は目についたバイパスに向かって歩いたそうだ。バイパスの乗り口は少し先にあり、車ではいつもしばらく平行に走り、乗り口の所でバイパス方面に向かう。
だから、最初から二人は私が探している方向とはまったく違う方向、しかも細い路地を通って行っていたというのだ。
「あれに沿って歩けば帰れると思ったから。この前地図で習ったし」
そう、間の悪いことにちょうど市内の地図を習ったばかりだったそうだ。
生きる力があるといえばあるのだろう。だけど、じっとしていてくれた方がありがたかった。・・・降ろしたのは私なんだけど。まさか勝手に帰るとは思わなかったのだ。
例の事件を見ていて思った。
都会の子ならあそこまで辿りついて生き延びることはできなかったかもしれない。がしかし、生きる延びる力のない子だったなら、こわくてその場所から動かなかったかもしれない。
どっちの方が助かる確率が高かったのか。
あの事件。
いろいろ問題視され騒ぎになったその真相はわからないけれど。
結局最後にあたふたするのは親の方なのだ。
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