カエル
田んぼの草取りが始まると、子どもたちにも手伝ってもらう。
でも、子どもたちが熱心に草取りをしてくれるのはせいぜい三十分。あとはオタマジャクシやカエルとりになって、泥んこになって遊ぶのが常。まぁ、子どもはそんなものだと思ってるから、好きに遊ばせている。
「稲には気をつけてよ!」
「わかってる~!」
何度も何度も声をかけないといけないくらいカエルに夢中になる四人。裸足で畦を駆け回る。・・・痛くないのかな。
膝上までまくっていたズボンも結局泥んこにしている長男。
腰まで泥に浸かって座りこんでカエルと戯れる次男。
いつも一番器用に汚さずにいるけれど、最後には結局汚してしまう三男。
最初は恐る恐るで手もつけなかったけれど、だんだん慣れて全身泥んこも気にしなくなった四男。
帰る頃にはみ~んな泥んこ。
パンツ一枚にならせて田んぼの脇の溝にジャブンと入らせて全身の泥を落とさせる。
「お母さん、捕まえたカエル持って帰っていいやんな?」
長男が泥を落としながらにこにこ顔できいてくる。
駄目って言っても持って帰るくせに。
「いいけど、入れ物何も持ってきてないやん。どうやって持って帰るの? ビニール袋とかやったら死んじゃうよ?」
暗に無理だよとほのめかしてみるが。
「大丈夫! ほら!」
見せてくれたのは、次男の長靴。
その中に入っていたのは・・・。
ぎゅうぎゅうに詰めこまれたカエルたち。
そのあまりにシュールな様に絶句。
五、六匹。いや、十匹くらいならわかるよ? でもそんなもんじゃない。百? 二百? もっといるかも? それは生きてるのか? それを持って帰ってどうするんだ?
あ、その前に。
「それ、弟のおニューの長靴やん!」
「だって使っていいって言ったもん」
「・・・ホントは嫌って言った」
ぽそりと横で言う次男。
やっぱり!
「人が嫌って言ったら、駄目でしょう?」
「もう使っちゃったもん」
開き直ったぞ。
「持って帰っていいよね?」
「持って帰ってどうするん?」
「飼うの」
「・・・半分以上死んでると思うけど」
「・・・!! 急いで帰ろう!」
死ぬとは思ってなかったのか? そんなに詰めこんでおいて。
「死んだ子はちゃんとお墓作ってあげなさいよ? それと車の中で絶対に逃がさないでよ」
家に帰って何匹生き残って何匹死んだのかは、こわくて聞けなかった・・・。
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