反省文

 悪いことをしたとき。お父さんは必ず反省文を書かせる。

 反省文を書かせることには賛否両論があるけれど、我が家で絶対的主導権を握っているお父さんがそういうのだから、誰も逆らえない。

 その場で言えない文句を影でこっそり言う。

 お父さんには言えないくせに。


 長女が書いていたのはあんまり覚えていない。多分ほとんど書いていないだろう。


 次女は何回も書くうちに、書き方? をマスターしてしまった。

 あんなんちょろいちょろいと舌を出す。


 ・・・反省文の意味ないな。


 長男は。

 とにかく書けない。それが苦手な子だって分かっているのに、それでも書かせる。反復させることで覚えさせるためらしい。

 でも、結局書けないので私のところに泣きついてくる。

 ・・・つまりは私の負担が増えるのだ。

 ふうっ。困ったものだ。


 次男と三男はそれなりにさらりと書いてしまう。上を見ているからだろうか。


 いや、ホントに見てたら同じようなことして反省文書くハメになるなよな。

 と思うけど、男の子たちは繰り返し繰り返し同じようなことをしては叱られている。


 ちっとは学習しろよ。




 この前大掃除をしていたときに、面白いものを見つけた。

 次女が小学生のときの反省文? いや、やったことの羅列。



ゼリーを作ったときにつまみぐいした。

カレーを作ったときにお肉をいっぱい食べた。

お父さんのご飯を食べた。

きゅうりを切っているときに横からとって食べた。

クッキーの生地を食べた。

カメのエサをちょっと食べた。

サラダの中のハムを食べた。

おかずを運んでいるときにつまみ食いした。

  ・

  ・

  ・


・・・ん?


 文章はまだまだ続くんだけど、なんか今変なのが混じってたぞ?


 カメのエサ? って金魚のエサみたいなやつかな? 


 やったことを全部書けと言われたのかもしれないけど、一体どれだけつまみ食いしてるんだ! ってくらい書いてある書いてある。笑ってしまうくらいに。


 しかしカメのエサって! どれだけ欠食児童なんだ。


 ひとしきり大笑いしたところで次女が帰ってきたので見せてみたら、書いた本人まで大笑い。


 あ、でも間違いが発覚。


 『カメのエサ』は「エサにしなさい」と渡されたちくわのことだったようだ。


「あー、びっくりした! あの粒々のを食べたのかと思ったわ」

「それは食べてないわ」

「さすがにあんなんは食べへんか~」

「でも、ドッグフードは食べてみたことあるけど」


 うわ~。またさらっと爆弾発言。


「ドッグフードって食べるもの?」

「まあまあやったで」


 笑いながら言う次女。

 悪食というか、根性があるというか。ただの食いしん坊か?


 呆れ返るばかりだ。


 君は戦争が起ころうが無人島に一人取り残されようが、生きていけると思うわ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る