餌付け

 性格の違いというのは面白い。

 同じようにおこづかいをあげていても、使い方が全然違う。


 長女は友だちとのつきあいを大事にし、コンビニに寄って使ったりしている。


 が、次女は。


「コンビニなんて高いだけやん!」


 主婦のようである。

 彼女はスーパーで大袋の飴を買ってくる。


 そして。

 彼女の感覚は主婦のそれを越えていて、その飴を調教に使うのだ。


「靴下とってきて」

「鞄とってきて」

「これ洗濯籠に入れてきて」


 飴をちらつかせ、弟たちを操る次女。

 家に帰るとまったく動かない。無茶苦茶ハードな部活はしてるのは知ってるけどね。もう少し動いてもいいかなぁと思うんだけど。



 長女も次女も小学生の間はいっぱいお手伝いをしてくれた。

 それが中学生になり部活を始めると、疲れているのと勉強もしないといけないのとで、あまり手伝いをしてくれなくなった。


 でも、二つ違いでず~っと並んでいる子どもたち。上二人がしなくなっても、下の子たちがしてくれるはず・・・と思っていたんだけど。


 破天荒で自己チューな、家の手伝いどころか宿題もなにもしない長男を間にはさむと・・・続く下の子たちまで何もしてくれない。

 そしてそれに拍車をかける次女の甘い餌。


 お手伝いは、基本的に無償だ。

 だけど、次女の使いっぱしりは餌がもらえる。

 男の子たちがどっちにとびつくかなんて火を見るよりも明らかだ。


 つまり、男の子たちがお手伝いをめんどくさがるのは次女のせいなのだ。


 たとえばお風呂掃除。

 長女は年中のとき、お腹が大きな私が掃除しているのを見て自ら志願してくれた。


「私が毎日してあげる」


 その後、産後もずっと毎日続けてくれたので、私はほとんど風呂掃除をしたことがなかった。

 次女が年中になると、


「お姉ちゃんも年中さんからしてるけど、交代でしてくれるかな?」


 にとびついてきてやってくれていたのに。


 ところが今は。


「お風呂掃除してくれる?」

「え~。めんどくさい」


 当番制にしてみても。


「今日は誰の当番?」

「ぼくじゃない」

「え~。この前兄ちゃん代わってあげたやん。だから今日はお前がやれよ」


 となすりつけあい・・・。


「・・・もういいよ。お母さんがするから」


 そうして私がやり始めると、やっと腰をあげて誰かがやってくる。

 まぁ、最終は大概誰かがしてくれるんだけど。その過程がね・・・。


 このやりとりを次女がいるときにすると。


「やってくれた人にはええもんやろっかな」


 の一言で誰が行くかの取りあいになるのだ。


 

 お~い。餌付けするのはやめておくれ。

 君がそうやって物でつるから、男の子たちがをしなくなっていくんですけど。


 ・・・もういまさらか。



 


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