今年もオタマジャクシを大量につかまえてきた長男。

 いくら言っても水の入れ替えをしない。


「ボウフラがわくから、水替えしないんやったらもう田んぼに返してきて!」

「いやや」

「ボウフラほっといたら蚊だらけになるやん」

「大丈夫。まだ蚊にはならへん」


 えらい自信たっぷりに言う。


 まだ蚊にならへんってそんなのわかるのか?


「まぁるくなるねん。それから蚊になるから、丸くなってからやっつけたら大丈夫やで」


 丸くなる? ボウフラが? そんなの聞いたことも見たこともない。


 二、三日たって。


「お母さん、見にきて! ボウフラ丸くなった。蛹になったで」


 長男が呼びに来たので行ってみると。


 確かに丸くなっている。でも動いてるよ? これは蛹なのか?

 割と敏捷な不思議な動きはボウフラのそれと確かに似ている。頭の部分は近くにいるボウフラと同じような形。別の虫ではなさそうだ。


「蚊の蛹は動くねん」


 ホントにそうなの? 


 検索して調べてみると。


 本当だ! 


 蚊の蛹は、オニボウフラといって他の昆虫の蛹同様に何も食べないが、蛹にしては珍しく活発に動くそうだ。


 うんうん、その通りだ。



 恐るべし、男の子の観察眼。

 勉強はしないのに、こんなことはよく知ってて覚えてる。


 そういえば四、五才の頃にダンゴムシの足の数は十四本だとか言ってたっけ。自分で数えたとか。



 とりあえず蚊になる前に必ず退治すると約束したので、そのまま長男の好きにさせておくことにした。オニボウフラになってるのを見つけるとひと声かける。


「もう蛹になってるよ! ちゃんとやっつけてよ!」



 ある日の夕方。

 学校帰りの次女が重いエナメルバッグを背負ったまま、身を屈めてオタマジャクシの水槽を熱心に覗きこんでいる。

 

「なにやってるん?」


 横から覗きにいくと、掌サイズのホスタの大きな葉っぱで、オニボウフラすくいをやっていた・・・。

 

 子どもの発想力は面白い。いろんな遊びを見つけるものだ。



 そうして数日後。

 所用があり次女、長男、次男を連れて主人と五人で一泊して帰ってみると。


 うじゃうじゃいたおたまじゃくしが消えていた! 大きなサイズのおたまじゃくしは残っていたから共食い?


 残っていたメンバーに確認しても誰も知らないと言う。これが我が家の不思議なところ。  きっと誰かが嘘をついてるんだろうけど。

 長男が怒るのがこわくてかなぁ? 

 まさかカエルになって出ていった? 

 それとも大きいおたまじゃくしが食べた?


 不思議なまま終わりとなってしまいました。

 追及するべきか? とも思いましたが、今回はまぁいいか。

 ボウフラも一緒にいなくなってるし。

 これを考えるとやっぱりエサになってしまった説が有力だけど。


 うやむやのまま終わるのって、どうなのかなぁ? これも毎回悩むところ。

 今回は最後まで蚊が発生しなかったし、めでたしめでたし、かな?


 

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