カメムシ Ⅱ
季節外れのカメムシを発見。
子供たちがガムテープを手に競ってとりにいく。
「ぼくが見つけたんやで!」
「ぼくの方が早かった!」
ほっておくとケンカが始まるしまつ。
いわずもがなのことであるが、カメムシは臭い。普通の人はみんな敬遠する虫だ。我が家でも引っ越してきた当初は辟易していたはず。
それなのになぜ今では、息子たち四人が嬉々としてとりたがるのかというと。
我が家では三年前から、カメムシ一匹退治につき一円というお仕事ができたからだ。
一匹一円は安すぎるのじゃないかとも思うけれど、秋になると冬越しのために大量に家に入ってくる奴ら。その数は半端じゃない。多い日は一日に三百匹以上退治する。
殺生しちゃいけない・・・なんて言ってられない。洗濯物から何から異臭を放つことになってしまうからだ。そしてこのカメムシ臭、少々洗ったくらいではとれない強烈さ。
ガムテープでサンドイッチにしながら「ごめんなさい」とつぶやく。
さて、ふだん決まったおこづかいをもらっていない彼らにとって、数少ない収入源。大量発生している秋口にはそれぞれみんながホクホク顔でとっている。
一匹とる度に「はい、一円」と渡すわけにもいかないので、ホワイトボードに申告数を書いてもらうことにしていた。
が、ある日。数字の異変に気づく。
?!
それぞれの名前の横に書いてある数字。それはカメムシをとった数のはず。その数字が───六千を超えてる?!
いくらなんでもそりゃないでしょう?!
しかも、四人揃ってって。合計してみると二万五千八百三十二匹。
ありえないでしょう? そんなにいたら住んでられないよ。
ずるしてるな。しかも、示し合わせて。
う~ん、どうしてやろうかなぁ~。
「こんなにカメムシいないと思うけど、ずるしてないかなぁ?」
ストレートに言ってみた。
「してないよ」
「ぼくもしてない」
みんな揃って即答する。
「ずるっこして嘘の数字を書くんやったら、もうこの仕事はなしにしようかな?」
じゃあもうカメムシ捕らないなんて言われたら困るんだけど、こわい顔して言ってみる。
最初はずるはしていないと言っていた男の子たち。私が本当に怒っているのをみてとると、
「ごめんなさい。嘘を書いてしまいました」
と素直に認めたので、お仕事は続行することになった。
けれど、本当の数字はもうわからない。
「じゃあ、みんな千匹にしようか」
「え~! もっととってたのに・・・」
「でも、嘘を書いてたんだよね?」
「・・・・・・」
不満顔ではあったが四人ともそれで了承。
結局得をしたのは・・・ふっふっふ。
嘘はやっぱりいけないよ。
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