鯛の捌き方
四人の男の子たちがお父さんに釣りに連れて行ってもらったある日のこと。私は何の用事だったか忘れたけれど、夕方まで留守にしていた。
「釣って帰ってきたら、下処理だけでもしてくれてたら嬉しいなぁ。刺身にするなら、早くおろした方がいいし」
夕方帰ってみると、長女が鯛と格闘中。傍らにはネットで調べて印字した『鯛の捌き方』が置いてある。慎重派の長女は、きちんと調べて手順通りに捌いていた。
「鱗とるんは、ビニール袋の中でしたら飛び散らへんねんて」
一生懸命捌きながら仕入れた知識を教えてくれる。
でも、なかなか苦戦しているようだ。
やっとのことで一匹捌き終わり、出来上がった刺身を冷蔵庫に入れた。
ちょうどそこへ次女が帰ってきた。
「私もやりた~い!」
チャレンジャーの次女に長女が印字した用紙を渡す。
「ここにやり方が書いてるよ」
さっと目を通すと次女は、早速捌きにかかった。
「・・・ちゃんと読んだ?」
「え~、めんどくさい。テキトーでいいやん」
と鯛をつかむと鱗をバリバリ飛ばしながらとっていく。
「ビニールの中でしたら飛ばないって書いてるやん」
「めんどくさい。別にいいやん」
全く頓着しない。
最初は横から口を出していた長女も呆れてどっかへ行ってしまう。
手順通り文章をしっかり読みながら捌いた長女と違い、ざっざっと捌いていき短時間で仕上がった。
夕食の用意ができて、食べ比べると。
手早かった分だけ次女の方が美味しかった。
・・・とは頑張った長女の手前言わなかったけど。
長女の長所は根気強く諦めないこと。一つ一つの仕事が丁寧で手抜きしないこと。今回はそれが裏目に出てしまった。
小さい頃から、豆を向くのも餅を丸めるのも、最初から最後まで根気よくやる長女。それに対してすぐに飽きてしまって食べる方に走ってしまう次女。
一長一短。
向き不向きがあるってことだよね。でも、苦手がはっきりわかっている分、向上していくとっかかりもわかるから、まだまだ伸びていけるよね。
正反対の二人。お互い刺激し合いながら、成長していってくださいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます