落書き

 6人も子どもがいると、家の壁ははあちこちに落書きの跡が残っている。消せたものもあるし、明らかに消えないまま諦めたものもある。


 新しく発見する度に叱るけれど中々学習なんてしてくれない。困ったものだ。

 幼稚園児は仕方がないにしても、小学生がすると叱り方が厳しくなるのは仕方がないと思う。



 あれは七年前。長女が四年生のときのこと。


 子供たちを送り出した後、幼稚園児の弟が書いた廊下の壁の落書きを消していた。手ごわい相手をやっとのことで消し終わって部屋の掃除をしているときに、お姉ちゃんの机の前の壁に落書きを発見した。


 四年生にもなって落書きするなんて!!


 叱りつけたい気持ちは山々だったのだけど。その内容を見て複雑な気持ちになる。


『お母さんいつもありがとう』


 ……。


 これは……。


 ぶちっときて叱りつけたい思いが小さくなっていった。これはずるいたろう。

 でもやっぱり壁に書くのは駄目だよな。帰ったらしないと。


 そしてその隣にもう一つ発見。


『ついてる!』


 確かにね。当時よく言ってました。何かの本で読んだから。


「声に出して『ついてる、ついてる』と言っていると、ホントにツキがまわってくるんだよ」


 それを壁に書くとは……。

 ふと隣の次女の机の前に視線をずらすと。


 やっぱりありました。


 お姉ちゃんと同じ『ついてる!』の文字。


 ふ~っ。困ったねぇ。

 

 紙に書いて貼るということは思い浮かばなかったんだろうか。


 

 結局、学校から帰ってきた二人には頭ごなしに叱りつけたりせず、やんわりとしました。


「でも、次やったら怒るよ?」


 とは釘はさしましたけど。



 その二人も今や高校生と中学生。もう今更落書きなんてしないけれど。

 下の男四人はまだまだ続けてくれそうです。


 はぁ~。

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