呼び出し
「男の子の親は頭を下げまくらないといけない」
と聞いたことがあったけれど、こんなにもしょっちゅういろいろしでかしてくれるとは思っていなかった。
ある日の呼び出し。
「下校中に傘を振り回して女の子の傘を壊してしまいました。その後女の子たちにむかって石を投げたそうです。お話をしたいので学校に来ていただけますか」
……どんな暴れん坊だ。
長女、次女のときにはほとんどお世話になることのなかった校長室。今では常連である。
さて、先生方を含め本人と話をしてみる。
なぜ傘を振り回したのか? なぜ石を投げたのか?
だんまり。むすっとして返事をしない。根気よくゆっくり話をしてやっと聞き出したその質問に対する長男の返事。
「面白かったから」
面白い? 傘を振り回すのが? 女の子に石を投げるのが?
……こいつは頭がおかしいのかと思ってしまった。
「傘を振り回したら危ないし、人に石を投げるのも危ないし、どっちもしたらあかんやんな? 当たったら怪我するやろ?」
ここからはまただんまり。
長男はこういう時、事情を説明するのが上手ではない。そこで、様子を見ていたという他の女の子たちにきいてみると。
どうやら傘はぶんぶん振り回すのではなく、く~るく~ると回していたらしい。それを近くにいた女の子たちが「危ないからやめーや」と注意したけどやめなかった。女の子の傘にあたってしまったのはわざとではなかったようだ。……注意されてもやめなかったけど。
そして石を投げたのはそこからかなり歩いて、また別の話らしい。道路を挟んで反対側の歩道を歩いている女の子に
この目撃情報を踏まえてもう一度本人と話をする。
「怪我させようとしたんじゃないんやな?」
この言葉に怒られるのがちょっとましになると思ったのか、やっと口を開いた。
「女の子がきゃーきゃー言うのが面白かった」
これを聞いて納得した。
なるほど。つまりは昔のスカートめくりをする少年の心境だったわけだな。よくよくきいてみると。
長男が傘を回す。女の子が「やめーや」と注意する。まだ回す。「あぶないやん」と注意する。やめない。の繰り返し。
石ころも同様。
女の子が反応するのが面白かったわけだ。
だけど。
怪我をさせる気はなかったにしろ、一人の女の子の足に当たってしまったようだし、別の子の傘も壊してしまったのは事実だ。謝りに行くべきだろう。
ところが今は連絡網もなく、個人情報だからと学校側も簡単に連絡先も教えてくれない。けれどやっぱり謝らないわけにはいかないだろうし。
学校からそれぞれの家に連絡してもらい、「謝りたいから連絡先を知りたい」という旨を伝えて頂き、「教えてもよい」と許可を頂いてから連絡先を教えて頂いてアポを取る。
こちらも大変だが、先生方や相手の方もかなり面倒だったと思う。お手間を取らせて本当に申し訳ない。今の時代は本当に面倒だ。
この日、お父さんが帰ってくるのを待って、6件の家に3人で頭を下げに行った。
お父さんまで一緒に行ってもらい少しは反省するかと思いきや、三日後にはまた呼び出しがかかったのだったてから……。
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