厄日
運の悪い日っていうのはあると思う。
その日は夕方から事件がいっぱい。夕食の用意が進まなくて困った。
四男がパトカーに捕獲された十分後。
次女、次男、三男が帰ってきた。
「お母さん、ごめんなさい。やっちゃった~」
「ごめんなさ~い」
一体何をやらかした?
「公園でキャッチボールしてたら失敗して、横の家の二階の窓ガラス割っちゃった」
あちゃ~。やってしまいましたか。あれ? でも。
「公園のネットってすごく高いやん。あれ超えたら角度的に窓なんて割れへんのとちがうの?」
「それがすごいねん。聞いて」
にこにこと満面の笑みで興奮してしゃべる次女。
「二階の窓の前にちょこっとだけ隙間があってな、そこにうまいことスル~って入ってん。すごいやろ?」
……すごい。かもしれないけど、窓を割ったことはそんなにこにこ話すことではないんじゃないかい?
「家の人には謝ったの?」
「留守やった」
「留守。ってじゃあ、黙って帰ってきたん?」
「ううん、あたしらえらいねんで。ちゃんと隣の自転車屋さんにうちの連絡先言ってきた。帰ってきたら連絡くださいって。えらいやろ?」
ほめてほめてと尻尾を振っている子犬のような笑顔。
いや待て待て。ガラス割ってる時点で褒められたことじゃないんだけど? でも、まあ黙って帰ってきたり、親にも内緒にしてること考えたら正直に言ったことはえらいけど。当たり前っちゃあ当たり前。
「正直に言えたことはオーケーやけど、今日はもうハプニングだらけや」
「ハプニングって他にも何かあったん?」
そこから四男の事件の話でもりあがり、さあ、遅くなった夕飯を食べようというときになって。
「兄ちゃんまだ帰ってないで」
次男が気づく。
え? って今何時よ? もう外暗くなってきてるし。
「帰ってないって学校から?」
「うん、ランドセルないし、靴もない」
……どこをほっつき歩いてるんだか。
寄り道は駄目。といくら言っても馬耳東風の長男。低学年の間は毎日学校まで迎えに行っていたけど今ではもうあきらめてる。でもさすがに今日は遅すぎるかも。時計の針は七時を回っている。
「お母さん、探しに行ってくるから先食べといて」
と家を出ようとしたところへぷらりと帰ってきた長男。
雷が落ちたのは仕方がないだろう。……落としたけど効き目はないんだろうなぁ。
ふうっ。
さすがに一日にこれだけ詰めこまれるとどっと疲れてしまいます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます