マダニ

 

「お母さん、耳が痛い~」


 次男がぐずぐず言ってきてたのに、洗い物をしていた私は「ちょっと待ってね」と言ったまま忘れていた。本人もそこまで痛くなかったのか忘れてしまったまま寝てしまった。


 翌朝起きてみると……。


 左の耳が、真っ赤に腫れ上がってしまっている!


「どうしたん、これ!!」


 よく見てみると、耳の内側の窪んだ部分に2ミリほどのマダニががっちりと喰いついている。お尻しか見えない。


 あちゃ~。


 昨日言ってきたときにすぐみてあげてたら、ここまで腫れなかったかもしれなかったのに。


「ごめんね」

「また病院行くん?」


 不安そうに聞く次男。


 実は二週間前も次男はマダニに喰われて病院に行き、切開して二針縫ったところなのだ。しかも彼はこれで四回目。


 まぁでも今回は耳だしちょっとましかな。

 前回は……男の子の大事なところだった。柔らかくて美味しそうだったのかしら。その前は……これまた大事なところ。棒の部分。その前は……ぷりぷりのお尻。


 十人家族で三男が一回喰われた他は全部、次男。……なぜ彼だけこんなに狙われるんだろう? しかもそんなところばっかり。



 さて、マダニを知らない人のために説明すると、マダニは山に生息している吸血生物だ。都会にはいない。

 田舎に引っ越してくるまで私も、その存在すら知らなかった。

 家ダニとは違い、1~2ミリのサイズで一旦喰いつくと2センチ近くのサイズまで膨らみ満腹になるまでとれない。

 

 がっちりとくわえこんでいるので無理に取ると頭の部分が残ってしまうから、家で勝手にとるのはよくない。病原菌を持っている場合もあるそうだ。


 仕方がないので毎回病院でとってもらっている。


 今回は抜糸した翌週だったので、あまりの頻度に医師に笑われてしまった。




 山暮らしには危険がいっぱい。

 でも、こんなところに住んでいるからこそ危機回避能力が養われ……るはずである。ってか養われてね。



 更に一週間後、またまた喰われた今度は三男。

 この二人ばっかりだな。

 そして喰われた場所は……やっぱり大事なところ。

 笑ってしまう私は酷い親かしら?

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