自転車
自転車に乗れるようになる年齢はかなり個人差があると思う。
早い子は年少になる前に乗れるようになるし、遅い子は小学生になっても乗れない。だから補助輪をはずすタイミングはなかなか難しい。
長女は年中になった春に乗れるようになった。
家の近所を補助輪をつけたまま乗り回していて、ある日田んぼに落ちた。補助輪の片側が段差から落ちてバランスを崩したためだった。
補助輪に頼っているから落ちたといえる。
そこで思いきって補助輪を外してやると……。一時間の練習ですぐに乗れるようになった。つまりもうほとんど乗れていたのだ。
次女はかなりのお転婆さんだったので、長女より早く乗れるだろうと同じ時期に補助輪を外してみたが、これが中々乗れるようにならず、一カ月ほど公園でつきあわされる羽目になった。後ろを持って押してやるのはすぐに腰が痛くなり重労働だった。
長男次男は山の上に引っ越したこともあり、特につきあってもやらなかたので年長の終わりまで乗れないままだったが、乗れるようになったとたん山を下りて行って行動範囲が広がり、ずいぶん遠くまで勝手に出かけて帰らなくなってしまった。
そして三男。割と何でもこなすのに一年生になってやっと乗れるようになった。
みんなが乗れるようになると、男の子たちは家の前の坂道をジェットコースターなみに乗り回して遊ぶようになった。
四男だけが補助輪で、それでも坂道なのですごいスピードが出る。
「やめなさ~い!」
と注意したところで見ていないときに乗り回している。
ある日のこと。
四男が大声で泣いて帰ってきた。
彼は結構我慢強く、少々痛くても泣かない。……兄ちゃんたちにいじめられてわざとらしく泣いてみせていることはあるが。
その四男がわんわん泣いている。
どうしたのか聞いてみると。
下り坂のカーブを曲がるのに、ハンドルを大きくきってしまったらしい。スピードにのった自転車。補助輪がついているため車体を傾けることはできない。お兄ちゃんたちについて曲がろうとして……。
吹っ飛んでガードレールに激突!
幸いあざが二つできただけで大したけがはなかったが、懲りずに同じことしようとしているので補助輪を外すことにした。
年少になったばかり。少し早い気もするけれど。
乗れるようになったらカーブで吹っ飛ぶこともなくなるだろうし、乗れるようになるまでしばらくの間、ちょっとは大人しくなるだろうから。
そう思って外してやり、乗らせてみると。
なんと。
その場で乗れてしまった。
しまった。単に彼の行動範囲を広げるだけになってしまったぞ。しばらく時間稼ぎができると思ったのに。
兄ちゃんたちに遠くまでついていって、危険なことしなきゃいいけど。
心配の種を一つ作ってしまった……。
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