冷蔵庫のおばけ

 我が家の冷蔵庫にはおばけが住んでいる。


 いつの間にか食材が消えてしまうのだ。

 冷蔵庫おばけは夜中に現れることが多いけれど、たまに昼間にも出てくるようだ。

 


 あれは、三年前の夏休み。

 次女の水泳記録会の応援で私が二時間ほど家を留守にした日のことだ。

 男の子四人は同居の祖父母と留守番をしていた。


 家に帰ると子供たちはいつものごとく「お腹すいた。お腹すいた。おやつは?」の大合唱。大急ぎでおやつを用意してやりしばし休憩。


 真夏のプールサイド。

 たった二時間とはいえ、立ちっぱなしで応援するのは結構疲れた。



 さて、休憩を終えて晩ご飯の用意をしようと冷蔵庫を開けると……。


 ……あれ? もう少し詰まっていたような?

 えーっと、確か昨日ウインナーの大袋買ったよな? レシートを確認する。



 二時間の間に消えた物。


 一キロのウインナー一袋。

 八本入りのフランクフルト一袋。

 ちくわ二袋。

 梨二つ。



 う~ん。一度に消えすぎでしょう。


「誰が食べたの?」


 聞いてみても誰も知らないという。


「嘘つきは閻魔さんに舌ぬかれるよ」


 四人が結託してるのか、誰も口を割らない。困ったものだ。


 一本や二本ならね。

 ああ、お腹がすいたんだな。と思うけど。

 それでも一言ことわってほしいなぁ。いや、事後でもいいけどちゃんと正直に言ってほしいなぁ。そしたら怒らないんだけど。


「だ~れも言わないからお母さんは怒るんだよ」


 睨みつけても効果なし。


「おばけが食べたんとちゃう?」


 当時三歳の四男がしれっと言う。


 こいつは……!!

 

 呆れてものも言えない。



 はぁ~。男の子の食欲はすごいとは思っていたけどここまでとは。


 

 いまだに冷蔵庫の中身は時々ごっそり消えるときがある。




 冷蔵庫のおばけがもう少し常識をわきまえてくれるようになる日は来るのだろうか?

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