ランドセルの中身は……?
お姉ちゃん二人は無茶苦茶重たいランドセルを背負って小学校に通っていた。
二人とも学年一番を争うおちびさんなのに、その背中にずっしりと重いランドセル。それでも片道二キロの道を元気に歩いていく。
あまりの重さにランドセルの肩ベルトも悲鳴をあげ、女の子なのに二人とも六年生の半ばで壊れてしまったほど。
ではその中身はというと。
本来持っていくべき教科書、ノート類の他に図鑑を二三冊持っていっていたのだ!
どう考えても重いし!
必要ないと思うので何度も言い聞かせたけれど、「自主勉強に使うねん」と別に苦にもしていないようなので、途中からは好きにさせていた。
あれを背負って山道を登って帰ってたのがトレーニングになってたんだなぁ。姉二人はなかなかのスポーツマンだ。
ところで男の子の中身はというと。
これがまた驚くほど何も入っていない!
ひどいときは空っぽだったりする。
特に長男。一体何しに学校に行っているんだと言いたくなるくらい軽い。あまりの忘れ物の多さに先生と相談して、最低限のものしか持って帰らないからだ。
次男は日によってまちまち。重い日と軽い日とある。
そして三男は、五人目にしてやっと普通の中身の持ち主だ。
さて、この長男の空っぽのランドセル。
いるものは入っていないから当然のことながらなんでも入る。
ある日のこと。
買い物帰りに保育園に当時年中だった三男のお迎えに行き、下校時刻と重なったので歩いているのを見つけ途中から乗せてあげることにした。
助手席に荷物をたくさん積んでいたため、長男次男三男の三人が後部座席に並んで座る。
走り出してしばらくすると、次男と三男が大声を出す。
「お母さん! 兄ちゃん、へび持ってる!」
「へび?」
「ほんまやで!へび持ってる!」
はぁ~。いっつもいらんもの持っていったらあかんと言っているのに。
週末にゴムでできたへびのおもちゃを買ってあげたのだ。きっと友達や先生を驚かせようとしたのだろう。
「持っていったらあかんって言ったやん」
「ちがうちがう! 本物のへび!」
「ランドセルから出した!」
ちょっと待て。本物? なぜランドセルから?
考える間もなく
「お母さん! 逃げた‼」
「へびが逃げた‼」
ちょっと待て~‼
慌てて路肩に車を停めて振り返る。
「へびが逃げたって?」
「うん、どっかに行った」
……頭が痛くなってきた。
「探して」
四人で車中をくまなく探しても見つからない。
「ほんまに本物のへびがおったん?」
「ほんま!」
「しゅる~って逃げた」
家まであと三分ほど。
意を決して運転席に座った。
どうか運転中に出てきませんように。
願いはかなって無事家に到着。再度捜索するもへびは発見されず。しかたがないのですべてのドアを全開にしてしばらく放置することにした。
開け放している間に出ていってくれたのか、車のどこか隅っこで干からびたのか。その後のへびの行方は誰も知らない。
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