第10話 パニック
東名高速道都夫良野の分かれ道での事故報道は、瞬く間に全国に流れ、禁止薬物等の噂や取沙汰は様々な方面から流れて来て、各地の乗馬倶楽部と、関東地区に限らず、乗馬倶楽部とばかりでなく、牧畜業者や、取引している飼料業者にまで捜査の手が伸びた。
川崎と小林の所属する相模原のグリーン・ライデイング・クラブを筆頭に、戸田が勤める、同じく相模原の相模ライデイングスポーツクラブにも手入れが入った。
当の川崎は、鶴巻署の黒田からの情報提供によって、鎌田の事故死は川崎の過失致死殺人と言う事になった。
あの日、鎌田と川崎は、乾草大麻の売買で揉め、川崎が怒って鎌田の額を押して、馬匹運搬車のパワーゲートに、2回ほど「ごつん、ごつん」とぶつけたことが原因だった。
鎌田が意識を失って倒れたので、鎌田はパワーゲートを下ろして、鎌田をゲートの下に寝かせたと言う事だった。
センセーショナルなニュースは、瞬く間に私の耳にも入って来て、戸田の煙草とマリファナとのすり替えは、川崎からの指示で、勤務中の戸田のロッカーから、煙草の中身を入れ替えたと言う事で、クラブの会員の名前が挙がった。
警視庁組織犯罪対策課と所轄署などの合同捜査で、相模原の二つのクラブから、現物もマリファナ吸引用の器具等は見つからなかったのは、川崎と小林の馬匹運搬車の事故報道があったのが逆に幸いして、現物を処分したのじゃないかと噂された。
覚醒剤の常習的使用を疑われ、クラブ従業員は全員、尿検査等が行われ、従業員の動揺及び、会員の移動などが続いた。
幸いに、検査の結果が陽性と出たものが無く、疑わしきは罰せずの法則は適用された。
これで、一件落着かと、有る夜、ロンドン出張中の妻からの、心配の電話で、そんな成り行きを伝え、何時帰国するのか聞くと、この秋に帰るとのことだった。
暑い夏はこの大麻騒ぎの話で終わるかと、例によって行きつけのスナックで、水割り片手の肴になった。
完
「馬の目」 高騎高令 @horserider
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