気まぐれショートショート

和野英行

第1話「堕落」

 ある所に天使が集っていた。

 天使達は暇をもて余していた。


 ある天使が口を開き、こう言った。

「どうもこの暇というのは身体によくない。どうだろう。ここは一つ、私たちの羽を使って、競争というのは」


 他の天使たちは少し戸惑った。

 天使は平等主義で、競争などしてはいけないのだ。

 しかし、天使も所詮は神ではない。

 やってはいけないこと、に魅力を感じてしまう。

 結局、天使達は飛行競争をすることになった。

 今まではただ浮かぶための羽だったが、鍛えてみれば、かなり速く飛ぶこともできるのだと知った。

「僕たちって、実はすごい能力を秘めていたんだな」

 ある天使がこう言った。

 また、別の天使はやや冷静に

「私たちには天敵がいないがために、今までこの能力を使っていなかったのだろう」

 と、言った。

 

 自分たちの隠れた才能を発見し、天使達は興奮していた。

 やがて、こういうことを言う天使も出た。

「地球には羽を持ち、さらに生存競争のために速く飛べるようになっている生物がいるに違いない。どうだろう。ここは一つ、それを勉強してみるというのは」

「賛成だ」

「すばらしい」

 一気に歓声があがり、天使たちは舞い上がった。



________



 彼らは地球上の飛行生物を観察し終え、自分達の羽の改造に必要なものを揃え、元いた場所へと戻ってきた。

「あの生物が一番強そうだったな」

「うむ。そしてすごく速かった」

「あの羽と同じようにすれば、僕たちもかなり速くなれるはずだ」

「よし、では材料も揃えてきたことだし、さっそく改良にとりかかろう」

 天使達は新しい楽しみに浮かれていた。

 作業は順調に進んだ。

 天使達は自分達の身体をいじることは禁じられているので、羽の上にはく形のそれを作った。

 作業は程なくして完了した。

 平等主義の天使達は、完成したそれをみんなで一斉にはこう、と意見がまとまった。

 大きな興奮の中、天使達は一斉にそれをはいた。


次の瞬間。


 そこにはただ一人の天使もいなかった。

 皆、堕落したのだ。

 彼らのつくった鉄の羽には、欲が詰まっていた。

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気まぐれショートショート 和野英行 @tukigaaoikara

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