~自己紹介【シャルロット・アランレイヴの場合】~
「まああんなことがあったわけだが、続きをするぞ」
会長が顔を引きつらせながら続行を提案した。ちなみにくるみさんは、すみっこのほうで膝を抱えてうずくまって、独り言をなにやら呟いていた。
「白君があんなことを言うなんて…どうやって復讐してやろうか…クク、クックック…」
とんでもなく危ないな発言が聞こえた気がする。
「それで、どうしますか?またジャンケンですか?」
「うーん、ジャンケンはさっきやったから、今度は他のものがいいんだが…」
会長と一緒にうんうんうなっていると、
『できました』
「ん?モモさん、何ができたんですか?」
『これです』
そういってモモさんが見せてきたのは…くじ?
『さっきくるみさんが自己紹介してる間に作らさせていただきました。――ご迷惑だったでしょうか?』
「いやっ!でかしたぞモモ!」
どうやらくじを作ってくれたらしい。これはありがたい。
「次はこれを使って順番を決めるデスか?」
「うむ、せっかく作ってくれたんだ。使うしかないだろ?」
『決まったようですね。では、ルール説明と参りましょうか』
今回はモモさんが仕切るらしい。まあくじを作ったのはモモさんだし、ここは妥当といえるだろう。
『ルールは簡単です。一人一本ずつ順番に引いていって、印がついたくじ――当たりを誰かが引くまで繰り返します。誰かが当たりのくじを引いた時点で終了です。これでよろしいですか?』
「おっけーだ!」
『わかりました。――では始めましょう。くるみさん、すみませんがくじを持っていただけませんか?』
すみっこでぶつぶつ言っていたくるみさんは、暗い顔をしながらもくじを持ってくれた。
「はいはーい!シャルが最初にやるデスよ!」
「うわっ、びっくりした。――仕方ねーなー。今回だけだぞ?」
「わーいデスよ!やったデスよ!」
どうやらシャルから始めるらしい。俺はできるだけ当たりを引きたくないので後ろへ下がる。…あれ?今モモさんがにやりと笑ったような…気のせいだよね?
「じゃあいきますデスよ…これいきますデスよ~――にゃっ!?」
シャルが引いたくじには…赤い印がついていた。
「ふははは、どうやらシャルが当たりを引いたようだな!じゃあシャルよろしく!」
『よろしくです』
「…仕方ないデス。ここは潔く負けを認めるデスよ。えーと、どこから話せばいいんデスかね?とりあえずさっき話したことは省くデスよ。シャルは一応アメリカから日本に来た感じデスよ。誕生日は十一月の十一日デスよ。ポッキーの日デスよ。趣味はバスケと白様の観察日記をつけることデスよ。好きなことは白様のそばにいることデスかね。あと、よく家族や友人にお前は思い込みが激しいって言われるデス。なんでデスかね?」
それは俺も思う。
「まあざっとこんなもんデスかね。他に質問とかありますデスか?」
「はいはーい!」
「おっ、会長さんデスか。どーぞどーぞデス」
「えっとね、シロの嫁ってさっき言ってたけど、それはどういうことだ?」
「ああ、それはデスね。シャルは白様に命を救ってもらった上に、告白されたのデスよ」
「ええっ!?」
『シロ君…意外です』
「待ってください、それはシャルのかってな思い込みです」
なんで俺がそんな非常識なことをしなければならんのだ。
「ん?どういうことだ?もうわけわからんぞ」
「今から事の顛末を話しますよ。あれは入学式の帰り道――」
入学式の帰り道、暇だったので裏路地を通って帰っていると――
「ヤ、ヤクザデスよ…シャルは今、史上最大のピンチに陥ってるデスよ…」
なんか小刻みに震えてる女の子がいた。
「君、どうしたの?ヤクザ?――あぁ、猫か」
彼女の前に陣取っていたのは、ここら一帯で有名な野良猫だった。
「ほらあっちいけ、困ってる人がいるから。そうだな。これをあげるからどいてくれない?」
俺は偶然持っていた煮干しを一掴み、誰もいないところへ放り投げた。すると猫はものすごい勢いで走っていった。
「君、大丈夫だった?」
俺が声をかけると、女の子は何かぶつぶつと言っていた。
「助けてもらった…男の人に…なんデスか?この不思議な気持ちは…」
「じゃ、じゃあまた会おうね」
「待ってくださいデス!」
「な、なんだ?」
「今やっと分かりましたデス!この不思議な気持ち、どうしようもなく止められない不思議な感覚。そう、これはすなわち『恋』、デスね!シャルを助けてくれたということはあなたもシャルが好きってことデスよね?そうに違いないデス。つまりシャルたちは相思相愛、完璧な関係ということデスね!これからよろしくお願いしますね、ダーリン!」
などと言われてしまった――
「ってなわけです」
『な、なかなか壮絶な話ですね…』
あのモモさんすら引かせるこの話。俺も絶賛鳥肌中だ。
「白様、シャルとあなたの運命的な出会いのエピソードのお話デスか?いいデスね。もっと話しましょう!あれ?でもおかしいデスね。なんで白様は他の女と仲良く話してるんデスかね?あれ?おかしいデスね。これって、白様が他の女に手を出してるってことデスか?そういうことデスよね?つまり、他の女がいなくなればここにいる女はシャル一人デスよね。他の女がいなくなれば、白様はシャルだけを見てくれるってことデスよね?」
シャルがそんなことを言いながら、ゆらりと立ち上がり、どこからか包丁を出していた。
「ばっ…お前危ないだろやめろ!」
「安心してください白様。すぐに終わりますから」
「口調も微妙に変わってるじゃねえか!皆、逃げてー!」
「逃がしませんよ…」
このリアル鬼ゴッコは、校舎内を一通り走り回り騒ぎを聞きつけた先生にシャルが捕まるまで続いた。しかし、男性教師4人がかりでも止められないシャルの力…恐ろしい。
「…これ以上シャルについて触れるのはやめよう」
会長のその案は即刻可決され、生徒会の暗黙の了解となった。
ちなみに後から聞いた話だが、モモさんは全てのくじに当たりの印をつけていたとかなんとか。どうやら超能力でこの騒動が起きることを見越してのことだったらしい。モモさん…
生徒会活動報告書っ! @sironeko_Bep
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