~自己紹介其の弐:黒川くるみの場合:~

「さて、自己紹介の続きなわけだが」

「具体的にはどうするんデスか?」

そうだ、自己紹介の続きをするのはいいが、具体的には何をするつもりなんだ。

「よくぞ聞いてくれた!これからみんなの情報をだな、もっと掘り下げていこうと思うんだ」

「掘り下げるですか」

「そうだ。詳しく言うと、趣味とかを言ってもらおうかなーと思ってる」

ふむ、それぐらいなら簡単にできそうだ。

「順番はどうするのだ?」

「うーん、くじを用意したかったところだけど、あいにく用意できてないんだ。だからここはジャンケンでいいんじゃね?」

「ジャンケンですか」

ということで、結局ジャンケンで決めることになった。決まったのはいいのだが…

「おっしゃ、んじゃあジャーンケーン…」

「ちょっと待った」

「ん?どした?シロ」

俺はちょっと思い当たることがあった。

「ちょっと聞きたいんですが、ジャンケンに勝った人が最初に自己紹介するんですか?それとも負けた人が?」

と会長に尋ねると、

「…ちっ」

小さく舌打ちされた。

「やっぱりそうだったんですね」

どうやら会長は、自分が最初に勝っても負けてもルールをよく決めていないのを言い訳に逃げるつもりだった。

「まあ私は気づいていたがな」

くるみさんはやっぱり気づいていたみたいだ。残りの二人も、

「…」

『…』

会長をジト目で見ていた。

「それはさておきっ!」

逸らした!話を露骨に逸らした!

しょうがないので、ここは俺が仕切ることにした。

「それじゃあ、最初に負けた人が最初にする、でいいですか?」

「それでいいんじゃないかな」

「それでは気を取り直して…ジャーンケーン…」

「ほいっ!」

「ポン」

「ポイ」

「ポンデス」

『ポイ』

グー←会長

チョキ←くるみさん

グー←俺

グー←シャル

グー←モモさん

「じゃあまずはくるみだなっ!よろしく頼むぞ!」

「…むう、負けてしまったか」

まずはくるみさんだ。これはくるみさんのことをよく知るいい機会かもしれない。

「…白様、何他の女見てやがるデスか?あいつデスか。あいつデスね。あいつがいるから白様はシャルを見てくれないデスか。仕方ないデスね。ちょっと殺ってきま――」

「待て待て落ち着け。あと先輩をあいつ呼ばわりはやめろ」

なんだかシャルが暗黒面に堕ちてしまっている気がする。

「んんっ、んっ、じゃあ始めようか。神代学園二年二組の黒川くるみだ。生徒会では副会長を務めている。ここまでは先程話したが、カナはもう少し掘り下げろといっていたので、もう少し詳しく話そうか。誕生日は九月六日で趣味は知識の蒐集、好きなものは…まあ伏せておくとしよう。嫌いなものは…まあ虫かな」

「…えー、くるみの好きなものは、ぬいぐるみだ。それも犬とか猫とかとびっきりかわいいの」

「なっ…何故言ってしまうんだカナ!折角伏せておいたのに!」

「だってー掘り下げろってのに伏せたらダメじゃーん」

くるみさんの意外な一面が知れてびっくりだ。それにしてもかわいいぬいぐるみとはなぁ。結構イメージと違ってたなぁ。

「違うんだ皆!これはな…まあいい、次の話をしよう。私の特技は一度見たり聞いたり体験したものは完全に覚えていられることかな。うん。私からは以上かな。他に何か聞きたいことはあるかい?」

「えーっと、じゃあはい」

「うん?どうぞ、白君」

俺はこのことを聞くかどうかものすご~く悩んだが、好奇心に負けて聞いてしまった。

「彼氏さんとか、いるんですか?」

次の瞬間、ものすごい爆発音が響いた。

「なっ、ななな何てことを聞くんだ君は!破廉恥な!」

と、耳まで真っ赤にしてくるみさんが叫んでいた。なるほど、くるみさんは完璧そうに見えて、実は弱点もちゃんとあるんだなぁと、くるみさんの説教を受けながらしみじみと思った。

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