【差別病理の根源】冷蔵庫の女 ④
近年世界では、「フェミニズムは限界を迎えた、終焉期である」と言われていた。
解決しやすい問題は解決されてしまって、今残っている問題は非常に難しい問題ばかりだということで、女性単体で見て解決するようなものはもう残っていない、という理由からこう言われた。役割を終えた、という意味だよね。
今残っている女性に関する問題、これらは非常に考え方が難しい。「トランス女性は女性か否か?」というものや「体格差を無視しての男女平等は本当は差別では?」などの問題ばかり残っている。理念と現実との乖離ってヤツだね。
例えばセックスワーカーの問題。性産業従事という職業は、望んでやるような仕事ではないとかって意見がちょいちょい聞こえるけど、それは蔑視の裏返しだし。卑下されてしかるべき職業、という部分を肯定しているから、そんなものを好んでやる女性などいない、という連想になってる。フェミニズムが終焉だと言われるようになった有名な事例の一つだよね。
価値観なんか色々だし、嬢を選択した人の中には、寝るだけで楽に稼げるから、とかって言う人だっている。彼女らにしたら処女性なんか大した価値じゃないって見てるだけだろう。そもそも処女性って言って、有り難がるのはなんでさ?
何か強制性を持つ事情でこの職に就いた女性ってのは、フェミさんたちが言う被害者になるんだろうけど、それも性産業の犠牲者とは呼べないよね。
彼女らは個々別々の、それぞれが抱える強制性の事情、その被害者であって、セックスワークの被害者じゃないもの。高額賃金だから送り込まれたってだけでしょ。ここに勝る高額業種があったら、そっちに流れてるんだよ。
すり替えが起きてるんだわ。
もともと感情的な部分でセックスワークのことを良く思ってないところへ、強制性の事情で流れてきた従事者という存在を見て、根源にある悪はそれぞれの「強制性の事情」にあるのに、セックスワークになすりつけただけでしょ。
で、「強制性の事情」の代表格は、今でも途上国なんかじゃまかり通ってるけど、家父長制度とか男尊女卑の思想だよね。家督を継ぐ大事な人間はこんな目に遭わない。あるいは、男女の平均賃金格差と保育事情のコンボとかだ。他の職に就きたいんだけど、嫌々これをやるわけだよ。選択肢を消してるのは性産業ではなく、諸々の事情の方なの。
スパイラル型の差別があって、性産業には、先に挙げたような「処女性という差別思想」と「男尊女卑」とが偏見的に絡まっている。これはビッチとかいう蔑称なんかもまったく同じ構造から作り出されている。
体験人数が増えると価値が下がる、という押しつけだ。体験数で何か身体に変化でもあるのか?
そこから、例えば嬢が被害に遭いやすい、「礼儀を失した酷い行為」の強要だとか、普通にお付き合いしてる女性に対してはやらないよねソレ?みたいなことを、客がやってよいものと勘違いするようなことまで起きる。スパイラルだ。
だがそれは、性産業だから生じたという性質のものではない。他の差別構造で生じた女性差別が波及してきたに過ぎないよ。
「処女性という差別思想」は、ある種の女性たちには有利に働いたんだよね。そういう時代が確かにあった。処女は嫁入り道具の一つであったり、時代が下がれば少しそういう偏見がマシになって、それでも一つの武器として通用する時代で、暗黙裏で社会保障にも直結してたりしたんだわ。長く続いた。だから、なかなか無くならない。
ヤらないだけで簡単に取得できる資格だもん、手放したくない女は多いわな。
ちょっとした資格扱いで、処女は非処女より有利だという時代の名残がある。今では経験数など問題にしなくなったが、ボーダーラインは残されている。それがビッチという蔑称であり、実態はすでに消えているのに、世間では信じられている亡霊だ。
処女性を尊び、身体を大切にもったいぶってみたところで、結婚や恋愛で有利に働くなんてことは今ではほとんどないだろう。だから、実態はない亡霊なんだよね。
だけど目くじらを立てて、性産業従事となるとキィキィ言うヤツは絶えない。
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