「カテゴリ」と「タグ」と「読者認識」②

 悩んでいるのはただ一つ。「フェアと判定されるに足る最低限のヒントの提出ライン」が解らない、ということ。


『文中に記述されたヒントを全て集めると、少なくとも類推により正しい回答は取り出せる。また、回答はたった一つであり、別の可能性を持っていてはならない。』


 これでしょ? 探偵小説における「論理性」って。


 他の可能性を完全に排除出来てしまうほどに仮説が絞り込まれるって、与えるべき情報はかなり多くなるんだよね。これが、「殺害方法のみ」なのか、あるいは「動機含めた全般」なのか、これが私には非常に重要。


 トリックを破るには前者のヒントだけで充分なのよ、それなら割と全貌を隠すのは簡単だと思う。だけど、後者だと言われると非常に困るわけですよ、それってほぼ全部ネタバレ状態にせよってコトじゃないの?とか思ってしまって。(それを誤魔化す為にも叙述の技巧が必須ってことなんだろうなぁとは思うんだが…)


 と、いうわけでこちらのサイトから抜粋してキーとなる言説集めてみましたん。

http://www.cc.rim.or.jp/~yanai/utopia/top.html

『Junk Land内「一千億の理想郷」』より抜粋(敬称略)



「私は一定の規則を守っています。嘘を書くことは許されません。……しかし、事実を省いて書くことは、アンフェアではないのです。『アクロイド殺し』のなかでも、説明の欠落はありますが、けっして嘘は書いてありません」……アガサ・クリスティ


「しかし、島田荘司が推薦するにたる“本物”の作家がいつか出てきてほしいとの思いは変わらない。いくら変形異形の建物ミステリーを書いても、作品の内容と自らの姿勢を別にして、これは違法ではないからいいのだ、というような屁理屈をこねる作家だけは我慢がならない」……関口苑生


「わたしがおぼろげながらに考えていることは、ミステリーもまた伝統芸術であり、落語や歌舞伎のごとく、常に先人たちの仕事を参考にしながら新しい技術、解釈を加えていくものではないかということである。その中心に「本格」がある。本格が崩れてしまえば、ほかのジャンルも危うくなってくるのではないか」……関口苑生


「いかにも「1たす1は2」であるかのように論理的に選択肢が現れるように読まされて、読者は感心させられるのだが、小説内世界で、どこまでが論理的な判断の範囲に含まれるのかあきらかでないかぎり、本当にフェアとは言えない。つまり、足し算にたとえて言えば「足す」とは何か、実は他に使える演算子があるのか、演算される数は整数なのか実数なのか、などといった規則が最初に開示されるべきものだが、それは通常「ミステリ的なお約束」として、語られなくてもいいことになっている。それに我慢できない作家が、小説の中で突然「密室講義」「アリバイ講義」を始めてしまうのだと思う。あれは単純に歴史やテクニックを総括したり、あるいは蘊蓄を垂れようという目的のものではなく、自分の書くものの論理的構成要素をあらかじめ提供しようという、きわめてフェアな態度なのではないか」……mutronix


「脱格三人衆の作品を本格として論じる、というやりようは、たとえていえば、昔よくあった“『カラマゾフの兄弟』はミステリだ”とか“『罪と罰』は倒叙モノだ”とかいう、あの手の論議を彷彿させます。いずれも“論”としては面白いのですが、だからといって『カラマゾフ』をミステリというレッテルを貼って販売する出版社はあまりないでしょう……中略……どうもぼくにはこの評論の世界でも小説分野と同様に、“本格のこと”を語ると称してじつは“本格で”別のことを語ること、が流行っているように思えて仕方がないのです。本格“で”語ろうとするから、本来本格ミステリとはとてもいえないような別ジャンルの作品を引っ張ってくるハメになるわけで」……MAQ


「論理的文章というのは大抵がパズルであったり、数学の証明であったり、あるいは論文であったりする。そこに「人間の感情」が入る余地はあまりない(論文の方向性によっては、感情だけで書かれたという方が正しいのもあるが)。そのような機械的論証に対し、文学としての価値観を与えたものが本格ミステリの源流だとタカハシは考える。少なくとも、本格ミステリの起こりが「洋館」だの「嵐の山荘」だの「人間関係」に裏打ちされたものでなく、ただひたすらにパズルを提示してその解答を提示するだけのものであったら、それはそもそも「小説」であるとは言えないのだろう」

……マコチーノ高橋


「現在の本格ミステリにおける多様性を杉本は肯定したいと思います。確かに多様性を得る代わりに本格ミステリとはなんなのか共通理解を得られなくなってきています。しかし、本格ミステリの進化とはそもそも論理ゲーム空間(限定された登場人物、閉鎖的空間、人工的整合性)の拡張と逸脱、掟破りの歴史ではないかと思うのです。その意味において、本格ミステリ定義論とは常に実作品により裏切られることにこそ意義があると認識しています」……杉本@むにゅ10号


「ちょっと極端かもしれないが、次のように提唱したい。「本格推理小説」または「本格探偵小説」あるいは「本格ミステリ」という言葉を無意味なものとみなして議論の場から排除しようと。これの言葉のもつ曖昧さは無視できる程度を越えており、かつ多義的でもあり、さらに相対的ですらあるかもしれない。これらの言葉が表している(はずの)事柄について話を進める前に、言葉そのものの意味の泥沼に足をとられるくらいなら、回避したほうが身のためである」……滅・こぉる


「私たちはもはや、苔の生えたオカルティズムや不自然きわまりない密室のための密室に用はない。 謎はもちろん必須だが、それとてもまた犯人が仕掛けるものなどではなく、むしろ状況から生まれた謎であるべきだし、トリックもまた全否定するものではないにせよ、“そうせざるをえなかった”という必然性が大前提とならなければならない。トリックにせよ謎にせよ動機にせよ、あくまで無理の無いこと……必然性をすべての前提とすることで、新時代の“リアル”を実現するのである」……aya


「ミステリーが行き詰まったなんて、それこそ、もう半世紀も前から言われていることではないか。いや、もともとミステリーとは「不可能性」を孕んだ小説形式なのであり、その不可能性を引き受け、果敢に挑む者こそがミステリー作家だったのではないか」……山口雅也




 ……調べれば調べるほど、定義らしきモノはバラけていく……orz


 いったい、どういう形式であれば「正しく」本格及び通常でミステリーとか推理モノと呼ばれるに足る資格を得られるのですか。


 私は正確を期したいだけです。

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