私が目指してたのは「本格」じゃない???

 島田先生の著作、「本格ミステリー宣言Ⅱ」をどんどん読み進めています。なんだか、当初に持っていた「探偵モノ」のイメージがどんどん曖昧になっていきます。「本格ミステリー」と「本格推理」は違うものだとか、「アンチ・ミステリー」や絶滅したけど「怪奇ミステリー」もあったり、「トラベルミステリー」は本格とはまた違うもので、「社会派ミステリー」も別モノだとかで、頭がパーン。


 いや、私の場合は真っ先に「自分がやりたいカタチ」ってのがあって、それはどこに分類されるのかってのを探っていたと言った方が早いんで、だんだん解ってきた感じだと「本格系」ではなかったかも知れない、という感じがしてきました。


 だって、スタンスが違うんだもん。


そもそも、「フェアでなければならない」という重要項目を、私はネックに感じていて、騙し討ちにフェアもへったくれもないだろ、という反発は感じてたのな。


 例えば、十戒二十則のいずれかに書かれていた、「使用人が犯人であってはならない」とかは、現代に訳せば「チョイとしか出ない端役を犯人にするな」になるわけだけども、私に言わせりゃ、そこを怪しいと思わなかった読者が悪いんじゃん、になるのよ。なんなら、たった一度台詞に出てきた名詞だけの登場人物が犯人でも、ヒントはヒントだろ、と私は思うんだ。


 だから、読者や文壇の望む「フェア」のレベルって具体的にはどのくらい?というので頭を抱えてしまっていたわけですよ。


 特に賞選考となると、そのボーダーを示してくれんことにはどこまで書かねばならないのかで非常に苦労するわけでさ。


 あと、逆のケースも困る。


 これも十戒二十則に書かれてあるんだけど、「余計な情報を極力入れない」とかいう項目な。恋愛要素だの何だのは不要とかって。これにしたって、なぜアカンのかが私には解らない。このジャンルの目的は、究極には「騙されたい」のだろ? だったら、どんな手段を講じようが構わないと思うんだけど。


 一番手強いミステリーってのは、膨大なノイズに翻弄されつつ、偽を取りのけて真のヒントを取捨選択させられる物語ではないのか、と思っちゃうんだけどさ。(ちょうど四苦八苦して読んだ「黒死館殺人事件」がこれに当たる気がする)


 どうも「本格モノ」というのは、試験の文章題のようにある種の、読者への忖度がある(正解が出やすいような工夫を凝らしてある)物語に限定されるというように読めるんだよね……


 まぁ、本書の中で島田先生が問題にしていたのはむしろ、テンプレ化というか、テンプレートに則った書き方ばっかが推奨されるような環境のことみたいだったけど。


 私は、自分の書く推理モノのスタイルがどんなジャンルに相当するのかを知らんので、そこを知りたいってのはあるんだよね。どうも本格系ではないような気がしてきたんだけど…


 やりたいのはさ、「ジャングルの中に木の葉を一枚隠して、それを探すような推理モノ」なんだよね。黒死館を読んでそういうのもOKなんだと思ったからなんだけど。無関係な風景描写があちこちにちりばめられて、だけど一カ所くらいはその一部にヒントが混ざってて、どうでもいい恋愛感情も描かれるし、蘊蓄も語られるし、ギャグシーンもあるし、なんなら推理モノ以外としても読めるのが理想なんだけど。


 感動に呑まれてたら、推理はおろそかになっちゃうぜ~?てな感じの底意地の悪い邪魔要素をふんだんに放り込んで、読者探偵を翻弄するのよ。(笑


 推理そっちのけで物語にのめり込んだら私(作者)の勝ちな?てな感じの賭けよ。


 だから、私は手段を選ばない、ていう……



 こういうスタンスの推理モノは、どこに分類されるのでしょうか……???

 



 まぁ、自分のカテゴリは置いといても、なかなか勉強になる本です。歴史を踏まえたミステリの系譜の解説とか、ドシロウトの私には初耳ばっかですわ。勉強不足だわぁ……(反省っ)



追記:

「フェア」とか「論理的」てのが、解釈の揺れを引き起こさないこと、てのは重々承知してます、一応ね。「待てよ、こっちの方法でもやれるじゃん、」てのはアカンのでしょ?(そっちじゃなく、徹底的にヒント取得を邪魔する、てことです)

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