物理的トリックより叙述的トリックのが効果絶大?

 ちと、ネタストックのほうで調べることがあって、「○○のトリックの代表作ってなんだっけ?」という感じで検索したんです。トリックそのものは覚えてんのに、出てた作品名の方を忘れてしまったというか…


 いや、別に堂本あたりに「これは某作家の『○○(タイトル)』に出ていたトリックだ!」と言わせたいだけの必要性なんですけどね。そもそもそのトリックはサブで本命は別トリックだし。この台詞もその作品のネタバレになるからボツかも知れんし、なんだけども。


 気になって調べたら、二つほど出てきたものの、記憶してた作品とは違うヤツでした。(タイトル聞けば探してたヤツかどうかくらいは解る)

 そのトリック自体は物理的というか機械的な仕掛けで不可能犯罪を作り上げるタイプのトリックなんだけど、問題は、調べてたらその作品の感想で話題になってたのは、今では陳腐となってしまった感のある叙述トリックの方だったのよね。

 時系列をぐっちゃぐちゃにして、登場人物のある動機を誤魔化す、というか。


 ナゾナゾのこじつけ的解決ってのも嫌いなんだけど、こういう、情報の煩雑さを利用するトリック? これも嫌いです。(笑


 なんつーかさ、他のジャンルの小説だと時系列ぐっちゃぐちゃで混乱してるよーな作品ってのは、どう評価されるのよ? てね。書き方講座でも下の下とか言われる書き方じゃん。(まぁ、下の下と評する方もどうかしてると思っちゃいるが。読解力の差でしかないわけだし。)


 私は、情報が錯綜するタイプの小説は、ジャンルの別なく頭空っぽにして挑む癖があって(めんどくさい計算式とか見たら思考回路が止まるタイプ)、この作品も読んだ覚えがあったものの、細かい点はスルーしたことを朧げに思い出したのでした。


 ほら、アレよ、世の中にはパソコンでも電卓でもあるんだから、自力で計算する必要ないよね、ということで勝手に切り捨ててしまって、頭が動かんの。(笑


 読者というのは勝手なモンで、読むハードルってのはかように簡単に上下すんだなってのも思ったけど、機械の仕組みを利用するという、当時私が感心した物理トリックよりも、単純に「煙に巻かれました~」的な叙述の方が評価高いってのが驚きで。


 叙述トリックの評価は総じて低く見積もる癖が私にはあって、それはまぁ、前述の通りでスルーしちゃうから引っかかる以前だってのが大きいんだけども、例えば「ロートレック荘事件」とかはさ、難解な点もなくするすると読めるわけよ、だけど欺されてるのよね、最後に作者による詳しい解説を読んで初めて欺されたことに気付いたくらいで。ラスト、彼が逮捕という話になって「え?」て。まさしくポルナレフ状態。(あれ、解説ないとマジで何がなんだか、というくらいに自然な文章)


 あと、「星降り山荘の殺人」の方はってと、これは完全に先入観を植え付けられたってのがどんでん返しの時に、はっきり見えんのね。「やられた!」て。それでも不服はあるのよ、だってあの子影が薄いなんてもんじゃないじゃん、て。


 時系列ぐっちゃぐちゃトリックにしても、先入観植え付けトリックにしても、紛らわしい書き方ってことで、本来の小説技巧でいう評価の得点は落第点なのよね。


 叙述トリックって、本来的な小説の技巧でいえば、どれも「読者に正しい意味が伝わらない文章」てことになっちゃうんだもん。「欺された~!」とか言って喜んでるけどさ、それ、シロウト作品でも割とよく見るからね、意図的にやったかどうかは置いといても、て。そういうモヤモヤをね、感じるっていうオハナシでしたっ。



 追記。



 なんかね~、ミステリっていうのでずーっと引っかかりというか、モヤモヤしたもんがあって、それってのは評価に関してに限られるトコもあって、大元は上で上げたよーな理由なわけだけども、「良いミステリー」ってのはどういう基準だろうかって、自分なりに考えてみたらば、叙述トリックなら、ラストを読んでもまだ「なるほどそういうことか!」とすら思えない、何が起きたのか解らないよーなのが最高の等級と思ったんでした。

 それまでスルスルと何の疑問も違和感もなく読んでいて(時系列など文章的難点もなく)、想定した答えに近しい展開が来て、そこからいきなりひっくり返って、後は何が何だか解らない…、それが最高の欺された感かなぁ、て。で、解ったつもりで読んでる間も面白いってなら、ファビュラス。(笑


 文章評価で難点とされるのは、「時系列の混乱」と「特殊状況の説明無し」で、前者に対してははっきり、時系列を前後させるなとすら書かれる指南書もありますな。そんで後者は、これは専門書の書き方の注意とか苦情でよく書かれていた事柄で、一般的にあまり知られていない事柄は逐一、解説を入れるなり、専門用語に頼らずに平たく言い換えろ、というものですわ。


 平たく、解りやすい単語や概念をなるたけ使うようにして、紛らわしい書き方をすんな、と教えられたはずなんです。そういう「小説」そのものの大綱から見た時に、この叙述トリックというものはどうにもモニャる… 二律背反、ね。


 叙述は迷宮や…(笑




 んでも、そういうお前はどうなんだと言われると「出来てましぇ~んヘラヘラ、」てな感じですけどね。(←こういう自己保身的一文をよく忘れるのも私の手癖の一つで、作者ごとの特色ってので片付く問題かも知れませんな。)

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