ミステリ書きの資質
これは勝手な憶測なんだけども、ミステリ書きに必要な資質って、サービス精神旺盛なことだと思うんだよね。それも、行きすぎたサービスほどやりたいってタイプ。
単なる「お客様のことを考えて」てのを通り越して、お節介の域、嫌がらせの域にまで到達した、サービス精神。(笑
作者たる自分が嫌われることさえ厭わないくらいに、読者第一に考えて、アッと言わせる為なら手段など選ばないという類いの、サービス精神。読者が驚愕してくれるのなら、自分はたとえ何を言われようが構いはせぬ!という潔い覚悟で。(笑
嫌い嫌いも好きのうち、がモットーで、どんでん返しが成功するなら読者にどんなダメージを与えても構わない、むしろ一周回って喜んでくれるはずだ、という親切の押し売りが出来るタイプが、ミステリ書きには向いていると思うの。
「傷付きました!」は謝礼のセリフ、褒め言葉と受け取る。
同じことは文学にも言えて、突き詰めて、読者の心の安定は考慮しない、ていう点が両者に共通すると思うのね。読んでどんな影響があっても責任持ちません、て。いや、いっそそれが目的ですから、てトコまで行くよーな。
だからさ、「エンタメ」であるかどうかというのが微妙かなと思うのね。ミステリに関しては。読者を楽しませてあげようという気持ちは、かなり行きすぎてるし。
そう思うのも、叙述ミステリで今書いてる公募作品が、伝統的叙述精神に則ってるつもりのどんでん返しを目論んでいて、それを成立させる為にあるモノを犠牲にする気満々で挑んでるからなんだよね。
ミステリ系のどんでん返しって、読者の希求の望みを最後の最後でぶち壊すことをサービスのキモと捉えてるからさぁ。ホームラン級で「決まった」時には作者の本懐って感じに快感だよね、読者はドツボに落ちるけど。気持ちのいい「やられた!」な感想ばかりじゃないんだよなぁ、ミステリって。『イニシエーション・ラブ』とかのイヤミスばかりじゃないわけで。叙述系も大概だもんね。
『星降り山荘の殺人』が代表格で、ほんとにしばらくの間、私はグチグチと恨み辛みを愚痴りまくってたもんねぇ。作者さんには快感だったことでしょう。(笑
で、一周回って、自分もアレやりたいとなって、今度の作品はそういう意図と悪意を全開で、仕掛けを施していったわけですよ。そんでつくづく思ったんよ、ミステリ書きに必要なのはこの「嫌がらせの精神」だ、て。
読者の望むものを望む通りにじゃなく、てんこ盛りだったり、反転させた手法だったり、最後にちゃぶ台返ししたりで提供して、「コレジャナイ感」を抱く隙さえ与えず綺麗に煙に巻く、というのが理想郷。
そういう、人の嫌がることすんのが苦にならない人に向いてるのが、ミステリ書きかなぁと思ったのでした。まる。
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