『ファースター 怒りの銃弾』観た
改めて気付いたんだけど、映画の撮り方ってのは文豪文体の「説明しない描写」のものなのだね。前にもどっかで書いた気がするけど、トリ頭な私は3分で忘れるのでまた新たな気付きで気が付いたわけです。(えっへん)
この映画、印象的なシーンが二つあって、どっちもラスト付近で。
一つは神父になってた仇敵に相対する場面で、もう一つがその前の仇敵を殺すシーンで、なんというか、後から分析的に考えてくと、構成が巧いんだなぁ、と。
このストーリーは、主人公が刑期を終えてム所から出てくるとこから始まって、そこからは怒涛の復讐劇が展開されてくんだけど、最初はなんでム所を出ていきなり人殺しやってんのか、理由を明かさないんだよね。
徐々に理由が明かされていくっていう王道展開で、これが警察の捜査とリンクして明かされてくって仕組みになってまして。主人公の回想シーンは、主人公主体で思い出されるんじゃなく、警察捜査で出てきた情報として、主人公の回想が流れるのだよね。主人公がおセンチになってくよくよ思い出したわけじゃない、てことです。
だから、主人公のハードボイルドで非情でタフなイメージを損ねないのだ!
強固な意志の強さを持つ主人公が、センチメンタルを付加されずに、主人公の属性を変化させる事なしにストーリーを展開しているわけですわ。
過去に悲しい事件があり、復讐を誓うに当然の成り行きがあった、て辺りがどんどん明かされていきます。こういう手法もアリか~、と勉強になった。途中で主人公の性質だの性格だのがブレるのは良くないからねぇ、いくら成長を書くとか言っても、あまり大きな変化を付けてしまうと、色んな要素の成長ってことになってテーマが分散されてしまって、カタルシスが阻害されるんだねぇ。
で、印象に残った二つのシーンですよ。神父の前に殺した男は、主人公が一番憎んでいる男で、これを殺すのに、こいつが担ぎこまれた病院まで追っていって手術室を襲撃してまでトドメを刺すんですわ。
けど、こいつを最初に撃った時には迷いが生じてるのね。こいつにはもう家族がいて、息子に伝言を頼まれてしまったりして。これが伏線になって、次の神父襲撃になると、一気にテーマにリンクしまして。
やっぱ、向こうさんの映画はキリスト的倫理って外せないんですなぁ。けども、普通に無宗教者な私でも共感できる、恨みと許しのテーマ。
もう一回観たい深い映画でした。
追加。
この作品、ハードボイルドで全編がすごい緊張して進むんですわ。シンプルに。文章にしたらモロにハードボイルド文体が似合いそうな、一切の感情とか書かないタイプの。
これがまた、ぜんぜん説明らしき台詞もナレーションもないので、中弛みもしない。あれだ、この映画で気付いたんだけど、説明って「ダレる」のねぇ。緊張感が途切れてしまうという副作用は気付かんかったね。だからかつてのハードボイルド文体が、心情とか状況解説とかをどんどん省いていったんだ、と理解しました。
「ダレるから」だったんだ……。
『ラ・ラ・ランド』を私は酷評ボロカスしましたが、あれも、ヒロインの撮り方がね、ブレてたから、だったんだと理解。一途で真摯で、という撮り方で進めていたくせに、ラストがアレだからね。嘘なんじゃん、ヒロインのイメージ、て思ったら怒りが激しく涌いた。あっさり他の男に乗り換える女だったらそういう風に描けよ!
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