ラノベにも二種類あるんじゃね?(あるいは描写について)

 テンプレ小説というのは、「作品世界における設定の大部分を、他の作品などから流用してもらう方式を採用した小説」のことです。


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 話が脱線したので元に戻します。えー、テンプレ小説の話です。どーも私はこのテンプレ小説ってのにすごく引っかかりを覚えてしまって、無関係だと言うのにあれこれと考えてしまって時間の無駄してて困るんですよね(放っときゃいいのに)。


 まずー、小説とひと口に言っても書き手の文体もその考え方も千差万別です。読者の求めもその考え方もやっぱり千差万別で、けれどジャンルや傾向といった大きな枠組みを作れるくらいにはザックリと切り分けてしまえたりします。

 なので、それぞれ中心部に近しい作者作品もあれば、周辺部にかろうじて引っかかってるだけな作者作品もあります、理解出来ると思います。分布の話です。


 テンプレ小説というのは、「作品世界における設定の大部分を、他の作品などから流用してもらう方式を採用した小説」のことです。大事な点なので二度言います。


 これの利点は、面倒くさい「描写」をもって読者に色々を認知してもらう必要を省ける点だと断言してしまってもいいと思います。作者以前に読者はピンキリです。

 どういう事か解からないと思います。描写を省くことが利点になる、というのがそもそも逆転した発想で盲点だったりするからですけども。


 書き方には「中世ヨーロッパな世界だ、」などと簡略に書いて『描写を極力省いて済ませる方法』と、「ゴシック建築というのだろうか、町並みはうんたらかんたら…」とばかりに『その世界観を描写で想像させる方法』とに分かれます。しかし、その前に、実際に作者の頭ン中にあるその世界が、の問題があるわけです。


 これは描写のルールに抵触する問題なのですね。描写というのはご存知、「すでに周知の事柄はむしろ描写しない方がよい」というポイントがあります。果物売り場の話を前回しましたよね。ほとんどの人が知ってるよーな事柄をくだくだと描写されたら鬱陶しいです。ここなのです。作者の頭ン中に展開された異世界ってのが「すでに周知の事柄」に含まれているケースが多いわけです。そういう異世界ってのは、もはや「描写に値しません」。


 それはひいては蓮舫代表曰くの「それって異世界でなきゃダメですか?」に連なっていきますが、ここでは触れずに進めます。


 よくある異世界なのです、わざわざ細かな描写を施さねばならないようなご大層な世界観ではなく、ありきたりなご都合上の設定でしか必要でない世界です。わけです。

 そんなモノを後生大事とくどくどしい描写をされても、読者の方は鬱陶しいばかりです。「ああ、よくある異世界ね、了解。」て解かればいいのですから。

 作者の方でも、読者に読んでもらいたいのは世界なんかじゃなくって、そこで活躍するキャラクターだったりするんで、世界観描写など面倒なだけです。そもそも「アレだよ、アレ、あの世界よ。」で了解してくれたら十分なのですから。


 そんな具合で、肝心のキャラクターにしたって、その種族がエルフだドワーフだという辺りだって、ただの属性に過ぎないのならいちいち描写を書くのも読むのも面倒なものになります。だから省かれるわけです。


 そもそもで、「ありきたりで説明するに値しない」設定だからです。


 現実の世界を舞台にする小説でもそんな部分はやっぱり省かれています。ベンツを乗り回す大学生が登場したとして、そのベンツが何年産の何という車種かとか大学というものの細かな仕組みなどを描写したりしませんよ、必要ないでしょ。

 ところが、現実世界の大学は描写不要で済ませられても、異世界の国やギルドを描写や解説なしで済ませると、問題点が発生します。


 蓮舫代表曰く、「それって異世界でなきゃダメですか?」


 説明や描写に値しない設定が大部分、ありきたり要素が大半、で出来ているのがテンプレ作品という事になります。その中で、ありきたいではない要素が多少は入っていて、その部分だけに一極集中できるのが、テンプレ作品の利点です。軽いのです。


 元ネタとなる作品世界さえ知っていれば、新たに知識を導入することなく、手軽にストーリーの核心から楽しむ事ができます。二次創作や短編小説と同じに、前提知識として色々を理解しないといけない煩わしさがないわけです。


 この辺りがテンプレ小説の特徴となります。


 ですが、逆に言うならテンプレ小説では「ありきたりな世界観や設定から逸脱してはいけない」という縛りが発生します。読者との間に暗黙ルールが存在するからです。「」という。


 現状、ラノベの括りに入る小説の全てがこの暗黙ルールを採用してはいません。


 ラノベの中にも、前提知識として「描写で世界観を周知する作業を行う」作品だって多々あるものと思います。これ、いちいち描写を使わないと、読者は勝手にスイッチを入れてしまいます。

 読者は、描写が足りなきゃ勝手に、「ああ、これは他作品から流用してこいという意味ね。」と了解して読み始めるのです。そうでなければ、想像は出来ないので。

 自身が実体験でよく知っている実体験上の知識か、さもなくば他作品から得た知識しか、読者は持っていませんので。


 現実を舞台とした普通の文芸などで省かれる描写のケースは、読者の実体験上の知識を省いている事がほとんどです。だからテンプレと同じにはならないのです。


 ラノベにも、おそらくはテンプレ方式と文芸方式の二種類があるはずです。

 二者の違いは「描写」にあるでしょう。


 読者が「実体験で得た知識以外の事物に関しては描写されている」事がテンプレ形式ではない方の小説のルールとなっています。自身がテンプレ書きではない、と思っている書き手の中にも、知らずとテンプレ方式を採用しているケースもあります。


 その場合がむしろ問題なわけです。彼らは「テンプレ方式を利用しながら、テンプレのルールである、テンプレから外れないという点は守らない」という状態になってしまっているからです。……だから読まれません。それこそご都合的な作品になってしまうからですね。(Webにはテンプレ読みが8割なのでテンプレ採用でない作品はそもそも読まれませんけどもね)


 想像上のドラゴンを描写する時は、一旦、ドラゴンというのを、現実世界に存在する生物やら物質やらに喩えます。その上で、必要ならなおその生物や物質をまた比喩によって、人々がよく知る物質と置き換えていきます。それが描写です。


 基本は、読者が実体験で得ている知識と照らし合わせる事だけで想像を補完できるようにする書き方が、一般文学や文芸での「描写」となります。だから、リアリティが出るのですね、引っ張ってくる記憶は実在だけになるから。

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