血塗れの悪意 Ⅳ


 

「……来たな、面汚し」

 振り返ってその存在を認めるなり、鉄血団結党元党首は罵声を浴びせた。その表情に張り付いていた笑みは溶けなんの感情も宿ってはいないが、しかしそれがまた見る者の恐怖を誘発する。

「どうして貴様は帰ってきた、・・・・・・いや、帰ってこれた? ……わたしはわたしの悪意を貴様に植え付けた。ふと思ったのだよ、汚辱にまみれた存在である貴様など、獣のように感情を剥き出しにして喚き散らしているのがお似合いだとな」

 淡々と語るエスマーイル。彼の中で、自分への注意が薄れていくのをビターシャルは感じた。またとない好機、これを見逃すわけはない。ビターシャルはゆっくりと立ち上がり、三度目の行使を始めた。

 続けざまの詠唱でもうあたりの“風”は枯渇し使えないため、唱えるのは得意とする土石系の行使。幸か不幸か、この壇は長いことアディールに建ってきた家々の瓦礫でできている。そのため土や石の精霊たちとの親和性は非常に高く、行使を行う力自体は簡単に集まり、ビターシャルの手中はすぐに“土”の力で満たされた。

・・・・・・しかし、順調だったのはそこまで。焦るあまり、ビターシャルはこのアディールの精霊たちが不安定な状態にあることを忘れてしまっていた。今このアディールで“風”以外を扱うことは難しい。しかもそれが“土”系統ならばなおのこと。地脈の影響を直接的に受けてしまうが故に、その行使は不可能に近かった。

 (ッ! ・・・・・・・“火”も“水”も使えないのだ、どのみちこれ以外に方法などない!)

 躊躇を即座に切り捨て、ビターシャルは試行を重ねる。しかし何度束ね、整えようとも乱れに乱れきった精霊たちは一向に揃わない。もたついているうちに不幸が何かに足をとられて、ビターシャルは転んでしまう。再度立ち上がろうと試みるがふらつく足は思うように動かせず、何度もひざをついては崩れてしまう。

(・・・・・・くっ、急げ! こんなことをしている場合では…… ッ!?)

 しかしその頑張りも、自分の足を滑らせているのが自らの手足から流れ出た血だと気づくまでの話。激痛を感じることで精一杯だった身体の感覚が、意識することによって途端に喪失感を呼び起こす。

 溢れる、伝う、流れる。垂れて、落ちて、足元に溜まり広がる。

(まずい、出血が多すぎる! このままではッ……)

 無くなる。失う。出ていく。一向に出血は止まらず、ビターシャルの目は次第に霞んでいく。壊れきったエルフの声が次第に遠くなっていき、ついにはついたひざすら崩れ、胴体までもが自らの血だまりの中に沈む。

(早く、早く行使をッ…… あとほんの少し、だというのにッ・・・・・!!)

 “・・・・・・なああんた、ちょっといいかい?”

 「・・・・・・誰だ、貴様は・・・・・・?」

“そんなことはどうだっていいじゃないのさ。それよりさ、あんたもうくたばりそうなんだろ? だったらその手の力、あたしによこしな”

頬についた壇から響く、妖艶な女の声。ビターシャルはぼやける視界を定め視線を巡らすが、しかし壇上には声の主らしき人物は見当たらない。

(・・・・・・・いや、たとえ誰であろうともこれは自分の最後の切り札、渡せるわけが・・・・・)

そう思い拒絶の意を示そうと首を横に振ろうとして、しかしビターシャルは覚える違和感に目を見開く。先ほどまで確かに手の中に蓄えていた力が、気づけば少しづつ小さくなっていた。

「ッッ!!??」

“ああ、しゃらくさいから勝手にもらっちまってるよ。 ・・・・・・ったく、あたしもだいぶ焼きが回ってるね。最初から黙って奪っちまえばいいのにさ・・・・・・”

 驚嘆に言葉を詰まらせるビターシャルに対し、声はなんでもないことのであるかのように言う。

“何をやっても無駄さ。エルフだろうが何だろうが、土を扱うことについてわたしの右に出るやつはいないよ”

 声の言うとおり、どれだけ抗おうとも流れ出る力は止まらない。・・・・・・ビターシャルは、観念した。理由は二つ。

 一つ目は、“誰かの管理下にある精霊を横取りすること”など、この状況では誰にもできはしないという事実。たとえ禁忌である“ドレイン”を詠唱したとしても、ここら一帯にその行使を行えるだけの風など残ってはいない。・・・・・・眼前の狂ったエルフならば出来なくはないだろうが、彼が女に声を変えることなどそのプライドから有り得るはずもなく、またこのようなことをする意味もない。

 メイジの仕業という考えは、ビターシャルの頭の中にはなかった。エルフに不可能なことが、人にできるわけがない。無意識の思い込みはその可能性を思考から削除し、その欠落を満たすために二つ目の理由を浮かび上がらせてしまう。

 二つ目の理由。それは昔から言われていた、とある言い伝えを思い出したからだった。

 “死に瀕した者はそれまでの行いで、大いなる意思に認められ幸福を与えられるか、怪奇に魅入られすべてを奪われるかが決まる”

 (・・・・・・そういえばよく、幼いころに年配者から言われていたな。根拠もないことを昔の者たちは言うのだなと面白半分に聞いていたが、・・・・・・どうやら本当だったようだ。この状況でこんなふざけた事象を起こせる者が、これ以上いてたまるものか・・・・・・)

 誰かの悪意でこんな理不尽が起こされているというのなら、いっそ“大いなる意思”のような超自然的存在に搔き回される方がまだましだ。・・・・・度重なる不幸の連続に思考が麻痺しているのだろうか。そんなことを思い、ビターシャルは顔から乾いた笑みをこぼす。

 今までネフテスの行く末を考え、力を尽くしてきたつもりだった。だからこそ“蛮人対策委員長”という役職を任せられ、単身でガリアの王と“悪魔”についての交渉までやってきた。・・・・・・だというのに“大いなる意思”からは見放され、ついにはこうして妖魔の類に捉われてしまった。

(・・・・・・・はッ、情けない・・・・・・。御託を並べて自らを正当化するな、認めなければ駄目なのだ。自分は正しくなかったと。だからこそ今の現状があるというのに・・・・・・)

 彼の向けてくる敵愾心に気付いていながら、自分はその矛先をいなし心中で非難するばかりだった。もし彼と正面から向き合い、話し合っていれば・・・・・・きっと彼は孤立せず、このような事態を招くことはなかっただろう。

(・・・・・・なんにせよ、もうすべては終わってしまった・・・・・・)

 肉体、そして精神的にも満身創痍になったビターシャルは現実と別れるべく、その瞳を閉じようとし・・・・・・

 ・・・・・・そして何かしらの妖魔に奪われているのとは別の、力の流れを感じた。

 (何だ? 流れ込んで・・・・・・来ている?)

 手の内の力は妖魔により、もうほぼ削り取られてしまった。しかしそれとは関係ない別の“何か”。・・・・・・戸惑いを覚える間にも、少しずつビターシャルはその“何か”に満たされていく。精霊の力を失ったいまでは意味のない話なのだが、不思議と今ならばなぜか、どんな行使も行える気がした。

 (・・・・・・一体、どこから・・・・・・?)

 疑惑を覚えたビターシャルは力の出所を探そうと“見て”、・・・・・・そして、その先に倒れ伏す老いたエルフを視界に捉える。

 その瞬間、ビターシャルの心から途方もない羞恥と自責の念が湧き上がった。

 (ッッ!! ふざけるな、何が終わってしまった、だ! 何をくだらない俗説に則って仕方がないことだと自分に言い聞かせている! あの言い伝えが本当ならば、誰よりも善行を積んだ彼がこのような憂き目に遭うわけがないであろうにッ!)

 ・・・・・・きっと最後の瞬間まで、彼は自分に力を託すべく必死に術式を練り上げていたのだろう。だというのに自分は、一体何をやっている? 

 (身体が動かない? 力がもう残っていない? それが何だというのだ! できることはあった、ただ臆してやらかっただけではないか!)

 現状を手遅れと決め付けて目を背け、死に際とはいえ保身を考えた。不甲斐ない自分に感じる情けなさは次第に身を焦がすような怒りへと変わり、濁った瞳に光を灯す。

 朦朧とする中最後の力を振り絞り、ビターシャルは再度ありったけの土の精霊を掻き集める。そして精霊たちから純粋な土の力だけを抽出し・・・・・・、

 

 ・・・・・・・それをテュリュークから貰った力もろとも、響く声に手渡した。


 「・・・・・・持って、いけ・・・・・・」

“・・・・・・なんのつもりだい? さっきまであんなに抵抗してたくせにさ”  

「・・・・・・・・・・・・・ただで、とは、言わん。絶対に、絶対にあの男を、止めろ。足りないというのならば、わたしの命でも、・・・・・・魂でも。なんだって、いくらだってくれてやる・・・・・・」

そう言ってビターシャルは得体の知れない何かに、自らの全てを差し出すと誓った。

 ・・・・・・エルフは心身ともに精霊と親しみ生きている。身を捧げるという行為は、すなわちこの身に宿る精霊たちをも怪異の餌にするということだ。これは“大いなる意思”に対する大変な侮辱であり、許されざることである。

 だからこそ、先ほど精霊たちから土の力だけを借り受け差し出した。これ以上自分の身勝手で精霊たちに犠牲を強いたくはないという、ビターシャルの最後の意地だった。

 (・・・・・・伝承でよくあるように運よくこの怪異が自分に飽き、この魂を解き放ってくれたとしても自分は救われないであろうな・・・・・・)

 たとえ妖魔に誘われようとも、そこで罪を償いさえすれば“大いなる意思”の元に還ることはできる。しかし自分は進んでこの身を差し出すのだから当然還れるわけもない。きっと、自分の魂は当てもなく永劫の時を彷徨うことになるだろう。

(・・・・・・分かっている、自らが犯す業の深さは。だからこそいま、自分の身体は恥も知らずに震えているのだから・・・・・・)

 怖いのだ。自分の身が、惜しいのだ。やれ能面だ、人形のようだと言われても、それは表情や態度に出ないだけ。恐怖を感じないわけではないのだ。

それでも、それでもやらねばならない。“大いなる意思”は自分を、・・・・・・自分たちを救ってはくれなかった。

 (このままここで、終わるならば、供物になってでもこの妖魔に、あの男を裁かせる。・・・・・・“自分が犠牲になるだけなら、安い買い物じゃ”とでも言って、彼なら喜んで、身を投げ打つ、だろう)

再び視界に、陰りが差す。限界の限界まで力を出し切ったいま、もはや抗う力など残ってはいない。

 (・・・・・・わたしには、彼のような、決断力も、勇気も、ない・・・・・・。だがせめて、せめてネフテスを、民を思うこの気持ち、だけは・・・・・・)

 もう思うことすら、死に向かう身体は許さない。いくら気を強く持とうとも、弛緩は全身に広がっていく。

 「頼む、あの男、あの男、を・・・・・・・・・・・・・」

 そこまで言って、ビターシャルの意識は暗転した。 



 ・・・・・・凄惨たる光景が繰り広げられている壇の裏、背中に当てた石塊から女盗賊はビターシャルと会話を繰り広げていた。

 その杖の先にこびりつくのは精霊の力が詰まった、豆粒ほどの茶色の結晶。

 ティファニアにかかっていた呪縛を解いたのと同様に“錬金”を「行使」そのものに唱えて溶かし、彼女・・・・・・土くれのフーケはビターシャルから力を奪っていたのだった。

 (……おかしいね。もう十分ぶんどったはずだけど……?)

 吸い取り、取り込み、補給する。しかしいくら奪えども、まったく力が自分のものになった気がしない。満たされたと思えばすぐに流れ出ていく、そんな不安定さが取り除けない。

 そうしてフーケが困惑していると、瀕死のエルフがどういうわけか、自ら力を渡してきた。 

 “受け、取れ……”

(・・・・・・なんのつもりだい? さっきまであれだけ抵抗してたくせにさ)

 一瞬だけ不審に思い訝しんだが、あって困ることはないので頂戴する。すると今までの力とは違う、別の何かが流れ込んできた。

 (ッ、なんだいこれ、毒かなにかかい!?)

 欲張るのではなかったと思いつつも時既に遅く、不思議な感覚が生じてフーケはたじろぐ。……しかしそれから特に何かが起こるわけでもなく、感覚もすぐに消え失せ、直後に安定してなかった魔力の均衡が取れていく。どうやらこのエルフに、自分に害を与えるつもりは無いようだった。

(……ったく、驚かせるんじゃないよ……)

 一息ついて、焦燥に滲み出た冷や汗を拭う。・・・・・・しかしこの時点で、フーケはひとつ勘違いをしていた。彼女が使うことができる魔力は先ほどからビターシャルから「奪ってきた」分ではなく、今こうして「貰った」分だけだった。

 自分の精神力を削るかわりに既に練りあげられた土の魔力を使おうと考え、彼女はビターシャルの行使を“錬金”で溶かして自らのものにした。しかしその“力”―――フーケの杖の先に固まっている結晶には、厳密に言えば“土の魔力”だけではなく、土の精霊も混じっていたのだ。

 この時点で、フーケが奪った大半の“力”は不用の産物と化していた。彼女の考え自体は理論上出来なくはないことであったが、その魔力の中に意思を持つ精霊が混入しているとなれば話は別。地脈の乱れにより蛮人対策委員長が精霊たちを御せなかったのとは訳が違い、メイジは精霊を“見る”ことすらできない。当然、取り込むことはできても使いこなせるわけがないのである。

 ・・・・・・・しかしそんな事実を、力を取り込むばかりで使っていない今のフーケが知る由もない。だから彼女は自らが信条とする盗賊の理念に従い、このエルフの懇願に耳を貸さないことに決めた。

(ふん。どうせ盗られるなら仕方ないからって自分から出してきたんだ、あたしが頼みを聞く道理はないね。観念しな、盗られるほうが悪いんだよ)

 “・・・・・・・頼む、あの男、あの男、を・・・・・・”

 ……そこまで言って、声は途切れた。フーケはため息をこぼす。先ほど相手にしないと決めたばっかりだというのに、もうその決心が揺るぎそうになっていた。

 (・・・・・・・ちっ、甘ったるい考えがあたしにも移っちまった。ったく、あんたのせいだよティファニア。・・・・・・・これじゃもう、盗賊家業も辞めどきだね・・・・・・)

ぶつぶつと文句を言いながら、フーケは頭上に立っているであろうハーフエルフの少女を見上げる。彼女はいま、先ほど止めるよう頼まれた狂ったエルフと対峙していた。

 エルフは朗々とティファニアに語っているが、機嫌を損ねれば何をしだすか分からない。それだけではない。壇の下で暴徒と化している観客も、標的を壇上の彼女に定めるかもしれないのだ。

 ・・・・・・放っておくには非常に危うい状況であるが、しかしこれから自分はあのエルフと大地との繋がりを断ち切らねばならない。

 (それにあいつも簡単に言って。・・・・・・足元から木の根みたいに炎が伸びて、地脈の中を這い回ってるね。・・・・・・・こんなの、話を聞いたときには絶対に出来っこなかったじゃないのさ・・・・・・)

 ・・・・・・強い癒着だ、切り離すには精密で大がかりな詠唱を要する。そのため一度始めてしまえばこれから壇上で何があっても自分は手出しできず、手遅れになる可能性が高い。

(・・・・・・・参ったね。あの子が危なくなったときに勝手に発動して守るような、そんな都合のいい呪文がありゃあいいのに・・・・・・)

 ・・・・・・通常ならば自分たちメイジは、自身の魔力を詠唱により四属性のどれかに固定し、杖を介して呪文を解き放つことで魔法を使うことができる。そのため事前に指定した場所に魔法を展開するのは当然、ましてやそれに条件をつけることなど絶対的に不可能なことだ、出来るわけがない。そしてそれが分かっているからこそ、フーケは詠唱を始めることに躊躇いを覚えてしまう。

(別に何も起こらなきゃ、わたしも心配しなくていいんだけどさ……) 

・・・・・・しかし、その懸念は残念なことに的中してしまう。エルフの話を聞いていたティファニアはそちらを振り返ってしまった。

(……!? あッの、バカっ!!)

 会話の最中に視線を外すなど愚の骨頂、怒りを買わないわけがない。そしてフーケの思ったとおり、エルフは懐に手を突っ込む。

(何が出るかなんて知らないけど、素材を変えればお終いさ! ……間に、合えッ!!!)

 即座に唱える“錬金”、一瞬送れて破裂音。……幸いなことにエルフが握っていたのは拳銃で、変質させたひしゃげた銃身はひしゃげ、エルフ自身の指を吹き飛ばしていた。

「……っは、はぁ、はぁっ……」

 荒げてしまった息を整え落ち着かせるが、それは焦燥からくるものであって疲労ではない。どういうわけかあれほど離れた物質を練成したにもかかわらず、自分の精神力は少しも削られてはいなかった。それどころかますます力が溢れ、漲ってくる。

(……これは、一体……?) 

 疑問に答えるように杖の先の結晶がきらめき、淡い光を放ち始めた。光は杖から握る手、そして身体へと広がっていき、フーケはたちまち光に包まれた。

 「・・・・・・んっとに、次から次へと何だってのさ……?」

 思わず呆れの言葉が口をついてしまう。不思議な感覚が蘇るが先ほどとは違い、いやな感じはしない。それどころか、満たされていくような……

 (・・・・・・・もしかすると、今なら・・・・・・)

 ふと思ってフーケは振り返り、眼前の壇に自らの思い描く効能の魔法を念じ杖を振る。

 (誰かが何らかの危害を加えようとする。そうすると壇の床がせり出てきて、あの子の命を守る・・・・・・)

 すると杖先の結晶が溶け、流れ落ちて壇の中に潜り込んだ。・・・・・・言葉に表せない感触があったが、しかし実際に起こった現象はそれだけであった。

 ・・・・・・なんだいそりゃあ、期待するんじゃなかった。フーケがそうひとりごち舌打ちしようとした矢先、……再度、破裂音が辺りにこだました。

 ハッと見上げるとエルフが拳銃を構えており、その銃口からは煙。・・・・・・そして、その先には倒れたティファニアの姿が――――無かった。立っている、無事だった。彼女とエルフの間にそびえたつ一枚の岩壁が、射撃を阻んだのだった。

 (……ふぅ、なんだい驚かせて。ちゃんと成功してるじゃないかい)

自分に力をくれた瀕死のエルフに柄にも無く感謝を覚えると同時に、ふつふつと壇上のエルフに対する怒りも湧き上がった。あの行動、言動。長年の盗賊業で培った直感が、あれが自分のかわいい妹分の心を汚した奴だと教えてくれる。

 「・・・・・・あのエルフを止めろって? いいじゃないのさ、頼まれたよ。・・・・・・借りだなんて思っちゃいないし、そうだとしても別にあんたに返すつもりなんてさらさらないね。・・・・・・ただ、あたしもあのふざけたやつをぶっ潰さなくちゃいけない理由が出来ただけさ・・・・・」 

 そう言って大盗賊は、最後の仕事にこの場の全てを自分の手の内に収めることを選び、壇の影に身を潜め、詠唱を始めた。




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