0-3
僕は少し他人と違った〝力〟を持っていた。いや、持たされた。
世の中には、僕と同じように特殊な力を持った人が僅かだが、存在している。力と言っても、そう大したものじゃない。使えるものでも精々が3秒先の未来が見えたりだとか、自己治癒力を高められるだとか、他人の記憶を断片的に読み取れるといったもの。それは大体が遺伝や、物心がつく前に自然と発現されるものらしい。
だが僕がこの力に目覚めたのは、1年前のゴールデンウィーク半ば頃。あの日は晴れていたか雨だったか、記憶も曖昧でよく覚えていないが、その日僕はとある男、そう、尖貫忍と出会ったのだ。
僕と彼の馴れ初めを語るのは
ただ、尖貫忍という男がどういう男なのかということだけは、ここで語らせてもらおうと思う。
尖貫忍──いや、尖貫家は代々、とある〝力〟を受け継ぐ奇異な家系だった。本来、力というものは本人が死ぬまでついて回るものであるのに対し、尖貫家は親から子へ、子から孫へと、同じ力が継承されていく。親が子を成すと同時に、親は力を失い、子は力を得る。それは第1子のみである。そしてその力は決して途絶えさせてはいけないものであるからと、力を受け継いだ者は物心がつく前からあらゆる死なない為の訓練を受けさせられるらしい。
そして尖貫忍こそ、その尖貫家第16代目当主である。
尖貫家に代々引き継がれる力、それこそが僕が異例な時期に力を発現させた原因。
──他者の力の強制発現。
僕の持つ力、他者の深層に眠る感情を肌で感じる。
これには僕の意志はなく、突然発現する病気のようなものだと考えている。街を歩いていると突然喧嘩中のカップルの怒りを感じたり、抗争中のやくざの殺意を身に受けたり、理不尽な力で苦労している。
尖貫が僕の力を発現させたことは、言ってしまえばあいつの一方的なミスであり、事故のようなものだったが、
とにかく僕はあいつの力によって、異例の時期に力を発現させることになってしまった。
鎖の少女 @coon
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