第36話 妄想、爆発!
皆さま、いつも ありがとうございます。
今回は、楽しい妄想のお話を。
ちょっと書くのが辛いとき。
私は自分の作品を読み返します。
勿論、推敲も兼ねているのですが、実は楽しい妄想を爆発させているのです。
それは。
──この登場人物、誰に演じてもらおう⁉
笑ってください。
笑ってくださいね?
ドン引いてもいいけど、せめて笑ってください。
そうなのです。
自分の頭の中で映像化してしまうのです。
作品によって実写だったりアニメーションだったりしますが、この妄想の元気でる率は非常に高く、皆さまにもオススメです。
たとえば。
『La Catena d'innamorarsi』の集一は、俳優の松尾敏伸さんが理想です。ちょっと年齢が上ですが……凛々しく清廉なイメージ。基本的には誠実で、思慮深く、思いやりのある青年です。
結架は、小田茜さんか木村文乃さん。年齢的には木村さんでしょうか。可憐で果敢無げなイメージ。本当はもっと日本人離れした美貌の女性という設定なのですが、ほかにぴったりの印象の女性を思いつかないのです。
彼女は生真面目で、わが身よりも他人を大切にする、愛情ぶかい性格。
──ああ、いいなあ、いいなあ。
そして、脚本兼演出兼監督の妄想が始まる。
「いいよ~いいよ、その切なげな顔! 最高だね」
「もうちょっと精悍な表情ほしいな。あ、でも品の良さは残しといてね」
「そう!そんな感じに寄り添って!」
もう、脳内麻薬の爆発的な放出。
私の脳内で、有名俳優さんたちが、私の書いたセリフを語る。
これ以上、幸せな妄想があるでしょうか?
ええ、そうです。
完璧なる妄想です。
自分の創った世界が、生み出した登場人物が、色づいて、形をもって、血の通った身体を備えて動きだす。
最高に幸せな夢です。
恐らく作品を書いておいでの作家さまたちは、プロだろうとアマだろうと、この妄想に幸福を見いだされるかと思います。
だって、たくさんの方々の手が、作品を支えてくださるのですよ!?
こんな嬉しいことがあるでしょうか。
こんな喜ばしいことが。
こんな楽しいことが。
ほかにどれほどあるでしょう?
同じような妄想に、『勝手にロケ地』があります。
例えば軽井沢のとあるホテル。
ここは結架の生家のモデルです。
植物の育つ中庭に、音楽堂の建つ裏庭。
林のなかに建つ、個人の邸宅にしては広すぎるお屋敷。
そこに泊まって、イメージを膨らませます。
階段の前の壁には、大きなステンドグラス。
花を活けた花瓶の置かれたコンソールテーブル。
いたるところに掛けられた、古い銅版画。そのモティーフは、中世の楽器や音楽家たちだ。
ギリシャ・ローマ神話を主題にした絵画や彫刻も飾られている。
食堂は広々と明るく、長いテーブルに揃いの椅子が10脚。来客時にも困らぬようにとのことだが、使われたのはもう十数年も前のことだ。
半地下にはピアノ室。録音スタジオとしても使用される。ピアノが3台おかれても、まだ広さを感じる。集音器などの機材もあるが、使いこなせる人間がいないので、活躍する場もない。また、もう旧くなっていて、現在の録音技師は厭な顔をするだろう。
……現実と虚構の入り交じった、まさに妄想。
これぞ妄想。
楽しいです。
皆さまも、是非お試しください。
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