第6話 ヴィヴァルディは歌曲を聴くべし

 皆さま、いつもありがとうございます。


 今回から数回、うぜぇッてほどバロック音楽について熱く語らせていただきます。特に今回、かなり熱いです。

 「本気でうぜぇ~ッ」

とお思いの方は、このあたりで お引き返しください。



 皆さまはアントニオ・ヴィヴァルディはお好きでしょうか。

 中学校の音楽の授業では、いまでも協奏曲集『四季』を習うのでしょうか。

 私の時代は習っていました。

 そこで、私は彼を器楽曲の王様のように思っていました。

 実際、彼の華々しいヴァイオリン協奏曲や美々しいオーボエ協奏曲は大好きです。


 以下、私のお気に入りヴィヴァルディ 器楽曲編


 ◎調和の幻想協奏曲集

 第1番 d-Major RV549 第1楽章。第3楽章。

 第2番 g-Minor RV578 第2楽章。第4楽章。

 第3番 g-Major RV310 第1楽章。第2楽章。第3楽章。

 第4番 e-Minor RV550 第1楽章。第2楽章。第3楽章。第4楽章。

 第5番 a-Major RV519 第3楽章。

 第6番 a-Minor RV356 第1楽章。第3楽章。

 第7番 f-Major RV567 第3楽章。第5楽章。

 第8番 a-Minor RV522 第1楽章。

 第9番 d-Major RV230 第1楽章。第2楽章。

 第10番 b-Minor RV580 第1楽章。第2楽章。第3楽章。

 第11番 d-Minor RV565 第1楽章。第2楽章。第3楽章。

 第12番 e-Major RV265 第1楽章。第3楽章。



 はい。曲集の殆どすべてですね。



 ◎12の協奏曲集 Op. 7

 こちらにはオーボエ協奏曲が入っており、オーボエ大好きな私には至福の曲集です。



 ◎協奏曲集ラ・チェトラ Op.9

 こちらの曲集も流麗で美しいです。


 ということで、どうでしょう。

 スペースの問題上、一曲ずつの記載はOp.7、Op.9ともに控えさせていただきましたが、これだけ『四季』以外の器楽曲がおススメとして出てくる作曲家です。



 しかし!



 敢えて私は叫びたい。



 ヴィヴァルディは歌曲を聴くべし!



 もう、身をよじって全身を駆け巡る快感に耐えるしかない。

 目を閉じて、

 胸を押さえて、

 天を仰ぐほかない。


 それほどの美麗さなのです。


例えば、カクヨムでも発表させていただいた拙作『愛の源泉/愛の変遷』でも登場するモテット。『地上に真の平安はなく』

 Nulla in Mundo Pax Sincera, RV630 Aria (Larghetto)

 この曲の魂を洗う力は、生半可なものではありません。

 あまりに清浄すぎて、こころが血と涙を流すほどです。


   「この世には苦悩なくして

    まことの安らぎはなし、

    汚れなき本当の平和は、

    優しきイエスよ、御身のうちにあり。

    苦悩や苦痛の中で

    魂は幸福に生き

    清らかな愛への期待によってのみ生きる」


 動画サイト→ https://m.youtube.com/watch?v=S7YdZuFTjpo

 赤毛の司祭と呼ばれたヴィヴァルディの宗教音楽です。

 私はシモーネ・ケルメス版が好きですが、これはエマ・カークビー版です。どちらも名演だと思います。


 この曲は、映画『シャイン』で有名になったらしいです。

 ふたつのアリアとレチタティーヴォ、アレルヤの4曲で、これは第1曲にあたります。

 歌うことの歓びが1音1音まで染みわたっていて、響かせれば響かせるほど涙があふれそうになります。



 もうひとつ、ヴィヴァルディの歌曲を登場させています。

 世俗の曲、歌劇『ジュスティーノ』より アナスターヅィオのアリア「この喜びをもって会おう」


   「喜びとともに会わん かぎりなく愛しき人に

    我が胸に宿る宝 心満ち足りて

    愛しき人から遠く離れてあらざるをえねば

    苦しみに漏れいずる

    ためいきの止むことなし」


 動画サイト→ http://youtu.be/Hd4D0VzPahc

 フィリップ・ジャルスキーの歌唱も非常に恍惚としますが、今回の作品の場面上、これが最も近いと思われます。ピアノですが。チェンバロ伴奏だと もっと華麗になったかもしれないですね。


 歌劇『ジュスティーノ』という作品は、少なくとも3つあります。

 1703年初演のスカルラッティ版。

 1737年2月16日初演のヘンデル版。

 そしてヴィヴァルディ版は1724年初演。

 この年ローマに滞在していた46歳のヴィヴァルディが苦労して発表した作品です。


 歌劇の内容について(多少)詳しくは、わたくしのブログ『猗綺子のバロックな日々』テーマ「創作執筆活動」のなかの『再掲:愛の変遷/愛の源泉 使用曲 2 この喜びをもって会おう』にて語らせていただいております。

(また、チェンバロについてもブログ内テーマ『音楽』で画像つきの解説文を掲載しております。宜しければご参照ください。因みに管楽器の区分についても語っております。)


 作者のピエトロ・メタスタージオが14歳のときに史実から創作したもので、彼は出版の際、ごねたとか。なんて羨ましい……。


 バロック時代は男性去勢歌手カストラートの時代でもあるので(耽美だわ……)、歌い手が最高音域ソプラノで男性役、なんてことも多々あります。女性にはできない力強さ(バルトリさまみたいな方がいなかったのかしら?)を高音域で求められたようです。

 なので、これは皇帝の、妃に対する歌ですが、女性の私でも歌えます。


 ほかにも同じモテットから、『いと正当なる怒りの激しさに』RV626から「いと憐れみ深く敬虔なる父よ」、「そうすれば、私の涙は」。

 『猛り渦巻く海で』RV627から「晴朗に輝け、おお愛しき光よ」、「輝き出でよ、美しき」

 『嵐のまっただ中に私はいる』RV632から「それなら私は何をなすべきか、不幸な魂よ」、「いつも悲しく、悲嘆にくれ」

などが静かに穏やかに、敬虔な心を歌います。


 そして、歌劇の曲にも素晴らしい曲はふんだんにあります。

 『オリンピアーデ』から「私たちは船、極寒の波濤に」(アミンタ)。

 『狂乱のオルランド』から「ああ、急いで逃げろ」(アストルフォ)。

 『ティトゥス・マンリウス』から「死の苦痛に私は悩まない」(マンリウス)、「気高い心の持ち主は闘え」(ルーチョ)、「嵐の中で」。

 『セミラミス』から「この光輝く目を」(オロンテ)。

 『クレオパトラ』から「私の胸を引き裂いてください」(クレオパトラ)。

 『ウティカのカトー』から「君が戦場で私に挑みたいなら」(カエサル)。

 『グリセルダ』から「ふたつの風に振り回され」(コスタンツァ)。

 『試される真実』から「愛しい方、あなたは私の希望」(ロザーネ)。

 『狂気を装うオルランド』から「何を見るまなざしにも」、「露に濡れた薔薇には」。

 『救い出されたアンドロメダ』から「よくあることだが太陽が」。

 『デモフォーンテ』から「岸が近くあれと願った」。

 『ティグラネス王』から「私の剣の力で」。

☆『ティエテベルガ』から「この胸に感じる涙の雨の中に」。

 『怒れるオルランド』から「愛し花嫁」。

 『ファルナーチェ(ファルナケス)』から「許してくれ、愛する息子よ」。


ああ、挙げていったら行数が凄いことに……。


 とくに私は、☆「この胸に感じる涙の雨の中に」が大好きです。



 さて、いかがでしょう。

 これだけの数、アドレナリンドーパミンぶっしゃああ!! なことになる曲が揃っているのです。


 ヴィヴァルディが歌曲の王様に思えませんでしょうか?



 バロック音楽語り、つづきます。

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