第14話 清だら爺さん奮戦記その1 最終話

さて新橋ガード下おでん屋の顛末が気になるところである。

グログロイズムNo2雑木帯末が鼻を押さえながら、はんぺんを二つしっかり食べて去っていった。

擦手有栖は清だら爺の激しい 臭いに、顔が青くなり鼻から息をしないように苦しそうに大きく口で息をしている。その有栖を清だら爺がしばらく見つめていた。

清だら爺は、ズボンのポケットからどこで拾ったのか、錆び付いた ニッパーを取り出した。

立ち上がるときフラついて、丸椅子を倒しクニの肩に手をついた。クニは清だら爺の体を支えるように、腕を持つ。清だら爺はやっと立ち上がると有栖に近ずく。有栖はもう限界を越えたと思ったが、気を失うことも、心臓が止まることもない。ただ、立っていることはできないので鎖の付いた右腕を上に上げるように跪いた。クニは立ち上がると、有栖の顔を自分の、胸に抱えた。

有栖は、大きな勘違が分かった。クニの柔らかい胸の中で、清だら爺の臭いが、とてつもなく良い香りになって自分を取り巻いているのだ。花でもなく果物でもなく、懐かしく華やかなほかに例えようもない香りだ。

「クニさんも居眠狂五郎係長も小津野円太郎店長もこの香りを感じることができていたのだ」

清だら爺 は錆び付いたニッパーで、有栖の腕にはまっている手錠のプラスチック製の鎖をパチンパチンと切り落とす。

クニは右足で有栖の下腹を突き放すような押す。有栖は地べたにゴロリとひっくり返ると慌てて立ち上がり居眠狂五郎の左隣り最後の一座席に座る。

ハンペン、コンニャク、チクワにコップ酒を小津野円太郎店長にかしこまって注文した。



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清だら(ずんだら)爺さん奮戦記 里岐 史紋 @yona

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