後編
「ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」ふふふ♪」……
植物を愛し、様々な草花を大事に育ててきたPにとって、目の前で起きている惨状は耐え難いものでした。彼の目の前で、『花の精』を名乗る数十人もの少女たちが、花瓶ごとそれらの植物を根こそぎ滅茶苦茶にし、枯らし続けていたのです。
少女たちは全員とも全く同じ姿形、鮮やかなオレンジ色の髪、青色の瞳、透き通るかのように美しい肌、豊かな胸の谷間を見せつける緑色の衣装と言う妖精のような姿でした。ですが、いくらそのような可愛らしい格好でも、いくら胸が大きくセクシーな美少女でも、ここまでひどい事をされては許すわけにはいきません。とうとう怒ったPは、大量の少女へ向けて罵声をあげました。
「いい加減にしろ!!今すぐ出て行け、この侵略者!!!」
ところが、笑顔のまま素直に部屋を出て行く彼女たちを見て、Pは何かがおかしい事に気づきました。ぞろぞろと動き出した彼女の数が、あの時玄関から家の中に侵入した数よりも明らかに増えていたのです。
そして、何十人もの美女が出て行った部屋の中は――。
「うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」……
――明らかに先程より数を増している『花の精』で埋め尽くされてしまいました。
そして、ようやく彼はこの部屋の窓が全開になっていたことに気づきました。うっかり網戸のまま放置していたので、きっとこの窓の外にあるベランダから大量に押し寄せ続けたのだろう。そう考えた彼は、部屋を埋め尽くしながら笑顔で暴れ続ける花の精霊を押しのけ――。
「……はぁ?」
――先程の自分の考えが明らかに妙な事に気づきました。一体どうやって彼女たちは『2階のベランダ』に上がったのでしょうか。ようやく窓の外が見える位置に来た彼は、一瞬目の前の光景を信じる事が出来ませんでした。
そこに広がっていたのは、朝目覚めてからずっと、空一面を覆い尽くす不気味な雲――いえ、それは雲ですらありませんでした。そう勘違いさせてしまうほど、『それ』は無数に増え、空を緑色に染めていたのです。
「うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」あははは♪」うふふふ♪」……
鮮やかなオレンジ色の髪、青色の瞳、透き通るかのように美しい肌、豊かな胸の谷間を見せつける緑色の衣装、そして背中には大きなハート型の葉っぱの翼――そう、雲の正体は、数え切れないほどにまで増えた全く同じ姿形をした『花の精』の大群でした。
そして、空の彼方から竜巻のように地上に向けて次々に舞い降りてくる彼女の大群は、身動きが出来ない彼を尻目に次々に彼の家のベランダ目掛けて押し寄せていたのです。
「こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」こんにちはー♪」花の精でーす♪」……
最早、Pが止められる段階ではありませんでした。来ないでくれ、といくら叫んでも無数の花の精の流れは止まるどころかますます大きくなり、たわわな胸を震わせ満面の笑みを浮かべながら延々と彼の家に押し寄せ続けたのです。
こうなれば一階から外に避難するしかない、と思い立ったPでしたが、既に何もかもが手遅れでした。町中の道と言う道、屋根と言う屋根もまた、鮮やかなオレンジ色の髪、青色の瞳、美しい肌、豊かな胸の谷間を見せつける緑色の妖精の衣装の『花の精』で埋め尽くされていたのですから。
そして、それはPの家もまた同様でした。家に入りたがる無数の精は、笑顔で窓と言う窓、壁と言う壁、扉と言う扉の前にへばりつき、覆いつくし、無邪気な笑顔を見せながら――。
「あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」あけてくださーい♪」花の精ですよ♪」……
――全ては、一瞬の出来事でした。無数の圧力にとうとう耐えられなくなった窓や扉が一斉に破れ、何千何万何億、いえ数え切れないほどの花の精が家の中へと一斉に押し寄せてきたのです。その流れはあっという間に『恩人』であるPを含む全てを呑みこんでいきました。
やがて、彼の家があったはずの場所は、地平線の果て、空の彼方まで無限に続く、オレンジ色と緑色、肌色、そして心地よい香りに包まれていきました。
「私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私も花の精ですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」うふふ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」うふふ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」うふふ♪」うふふ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」私もですよ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」……
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Pの家から遠く離れたとある草むらに、汗を流しながら働く人々の姿がありました。
全員その手に鎌やスコップ、鍬などの道具を握り、草むらの中に生えているたくさんの植物を根こそぎ取り除こうとしていました。しかし、いくら引っこ抜いても後から後から新しい根や芽、花が現れ続け、きりがありませんでした。
これ以上続けても、流石に根気が持ちません。仕方なく彼らは今回の作業を終えて、また別の機会に続きを行う事にしました。
「……はぁ……」
先程まで働いていた人々の1人が、不満をぶつけました。一体どうして、『あの植物』はこんなに増えてしまったのだろうか、と。どうして自分たちがここまで苦労しなければならないのか、と。彼の言葉を聞いた仲間たちも、同じ気分でした。
「……そうだよな、こういう『外来種』はほんとに厄介だ」
「全くだぜ……」
彼らが苦慮していたのは、この草むらを埋め尽くしていた外来種の植物――外部から持ち込まれた、本来日本には存在しないはずの植物――でした。一度土の上に入り込まれるとあっという間に増殖し、他の植物を根こそぎ枯らし、いくら刈り取っても刈り取っても後から後から生え続けてくるという恐ろしい存在なのです。
誰がこんな化け物を持ち込んだのだろうか。意地悪で持ち込んだのか。今頃きっと持ち込んだ奴は罰が当たっているだろう、いやぜひ当たって欲しい。そんな事を言いながら帰る人々の足元で、駆除されずに残った外来種の植物がハート型の葉を茂らせ、オレンジ色の可憐な花を咲かせ続けていました。何百、何千、何万と……。
それはきっと花のせい 腹筋崩壊参謀 @CheeseCurriedRice
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