瞬く間の悪魔
ぽきのふ
第一瞬
「今日の夕方頃、名古屋の地下鉄に中学生女子2人が〈手を繋ぎながら〉飛び降りました。
警察は2人の周辺を捜査すると同時にいじめとの関連性も...」
2016年5月、今年のゴールデンウィークは最長で10日と言われるほど長い休暇となった。
遠くまで旅行に行く人、受験生だから勉強する人、構わず働く人、それぞれの長く楽しく退屈なゴールデンウィークとなった。
そんなゴールデンウィークが終わって数日、こんなニュースが世間に流れたのだ。
2chでは「どこの百合漫画だよ」「これがレズの最終形態か」なんて騒がれてたが、私からしたら全くわけがわからないの一言で済む出来事だ。
なぜ自ら楽しい人生を失うような行為をするのか。
なぜ自ら痛いことをするのか。
皆目検討がつかないとはこのことだ。
だがさっきニュースにもあったように、最近はいじめによる自殺とかも増えてきている。
もちろんいじめる側の気持ちもいじめられる側の気持ちもわからないんだけど。
私はいわゆる普通の高校生。
学力も中の上くらいで、スポーツだってテニスをやっている。
髪も染めずに黒のまま、身長だって160センチいかないくらい。
友達もいるし特にこれといって、「あのニュースの女の子たちみたいになる要素」が見当たらないような学生。
けどやっぱり先生達の間では、少し問題になっていることらしい。
それはそうだろう。
女子中学生が2人手を繋いで自ら電車に飛び込み自殺をしたのだ。
自分達の生徒をこんな目にあわせてはならないという正義感なのか、生徒がこんな目にあったら自分達の立場が危うい、と思ってなのか全校集会でもその話題になった。
と言っても「皆さん気をつけましょう」「何かあったら誰かに相談を」と、テンプレな台詞だけを残し校長は壇上から去っていった。
けど先生達安心してください。
普通に考えて自分から死ぬなんてこと、普通の生徒はしませんよ。
私を含めみんなもね。
「バイバーイ!」「また明日ー!」
部活も終わって、友達と学校から帰る金曜日の午後6時。
最近日が暮れるのも遅くなってきて、まだまだこの時間は明るい。
私は地下鉄で学校まで通っているので、サラリーマンや他の学生との帰宅ラッシュの波にのまれて帰らなくてはならない。
改札をくぐりホームで電車を待つ。
「あと4分か...」
帰宅ラッシュということもあり、すでにホームでは、電車が着くのを待っている人が列をなしている。
今日はラッキーなことに、前に1人しかいない所に並べた。
こういう時は席に座れる確率が高くなるのだ。
学校で勉強して、部活も終えた私は毎日へとへとなのだ。
ふと前の人を見てみる。
だいたい30歳いっていないくらいだろうか。
1日の終わりだというのに、スーツと靴とかばんをビシッときめたサラリーマンのような男だった。
(社会人は毎日働いて大変そうだな...)
そんなことをぼーっと思っていると、ふとこないだ流れていたニュースを思い出した。
「先日、女子中学生2人が手を繋いだまま...」
(あの女の子たちはこんな所から飛び込んだんだ...)
(でもどんだけ嫌なことがあっても、飛び込み自殺なんて周りにすごい迷惑をかけるのに...)
(その子達の周りはどうなったんだろ...)
なぜかあの時テレビで流れていたニュースが、私の頭の中には住みついており、それによる被害などを考えています行動しなかった少女達に軽く怒りを覚えつつも、確かな好奇心をかきたてていた。
その微かな好奇心がまずかったらしい。
瞬間、前から人は消えていた。
瞬間、目の前に地下鉄が通過していた。
「ーー!」
私の後ろに並んでいた女性の悲鳴なのかなんなのかわからない音がが電車にかきけされていた。
自分でも何が起きたのかわからない。
だが少し下を見れば、そこには鮮やかな赤、朱、紅。
見たことのない色が広がっていた。
わけもわからないまま後ろを振り向いた。
全員が私を見ている。
どうやら私は人を地下鉄のホームに突き落とし、その人は轢かれたらしい。
私は殺人犯らしい。
らしい、と言っているのは私自身も今起きた事象を全くと言っていいほどに理解をしていないからだ。
あの瞬間私は自分が何を考え、何をしたのか全く記憶にないのだ。
何故?
私はなにもしてないのに何故みんなは私を見るの?
気づいたら私は警察にいて、少年院に入っていた。
例えばの話をしよう。
自分の普段の生活からかけ離れた出来事が、身近な場所で起きたとする。
そうすると人間は自分も現実とはかけ離れた事象に触れたいという隙間ができるらしい。
そこヲ狙えばかんたんにかんたんなよんなね
-----瞬く間の悪魔・筆
瞬く間の悪魔 ぽきのふ @Pocky
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