突然知人がゲーム制作するというので、私は人気作家を演じなければならない(シナリオライターside)

なんでこんなことになったんだろうか。


きっかけは私の友達の彼氏だ。なんでもフリーのゲームを作りたいから、シナリオを書いてくれないかとう話だった。


その彼にオーケーの返事をしてから次の日、ハンバーガーショップで打ち合わせがあって、そこには私に話を持ってきた友達の彼氏である直輝君と一つの先輩の二ノ宮さんと見知らない同じ学年の男の子がいた。つまり初対面の人が3人。今回初めての顔合わせである。


同じ学年だという男の子はちょっとひ弱そうなタイプだった。直輝君も同じ学年なんだけどね。


事前に直輝君から「クラスメートの山中君に絵の自信を持たせないから、適当にテーマを決めてゲーム用シナリオを書いてほしい」という話だった。よく変わらないけど、とりあえず、物語をかけばいいらしい。


ゲーム制作。ハンバーガーショップ。うん、周りは普通の学生ばっかりだけど、まぁ、こんなものか。


というか、私はちょっと小説を書くことを趣味にしだした女子なのだが、学校では小説書いていることを周りにおおっぴらにしていない。


そういう意味で、学校外の集まりはが正直ありがたかった。

参加した全員が、学校の制服のままなので、学校の関係者が今日ここのハンバーガーショップにこないことを祈りたい。

一回家に、帰って着替えろって?

それもありだけど、めんどくさいじゃん。


今回、駆り出された私、城川こずえは、ちまちまと携帯小説を書いていた女子高生だ。


もともと、本格的に小説を書くつもりはなくて、たまたま暇で書いていたネット上の小説が口コミで広がって、今ではちょっとしたファンもいる。


私が書き始めた頃は、投稿小説サイト上の作品のバリエーションや内容のレベルも高くなくって、私の書いた小説はトントン拍子にサイト上のランキングにランキング入りした。


でも、はっきりいう、私の小説は決して質がいいというわけじゃない。


特定のカテゴリーの中では好まれて読まれているというだけだ。

私が誇れるのは、「筆のはやさ」と「リサーチ力」だ。

多分、一般の出版社企画のコンテストに応募したら、一次審査も通らないだろう。


なぜなら、私の小説は描写力と構成力に欠けているからだ。


話し合いの件にはなしを戻そう。


直輝君に紹介された山中君の印象はぱっと見、「あぁ」という感じの人だった。

正直「この人が私の話に挿絵をつかるのか」と思うと、任せていいのかちょっと微妙だ。

もう一人の二ノ宮さんは女の人なんだけど、結構ネットで人気の新人イラストレーターらしい。


最初、「人気絵師ってほんとか?」って思ったけど、最近出版された小説の挿絵を描いているらしくって、後からその文庫本を見せてもらったときはその画力に圧倒された。


彼女が描くイラストは重厚な厚塗りで、将来もし自分の小説が出版されたら、是非この人に描いてほしい!って思わせるイラストだった。

ともかく、あとからも、同じ学校で自分が在学中にこんなに絵が上手な人は現れないと思う。



今回の制作では、初心者の山中君が技術不足な部分を二ノ宮さんが補填するって形だったので、上手くバランスとれていると思う。


ちなみに、私がネットに載せている小説は運良くコンテストの賞に引っかかって、今書籍化の話が来ている。

上手くいけば、私も晴れて女子高生作家だ。


さて、直輝君が進行役でゲームを作りましょう!ってスタートしたんだけど、これがテーマ作りは難航した。

ジャンルっていうのかな?

山中君がもともとネット仲間で作ろうとしたいたのは、ガチ男の子向けの話だったから、私が書ける話と真逆だった。

この山中君、ネットの企画がぽしゃって落ち込んでいたらしい。


まぁ、もともとネットで自分の作品を公開していた私にとってはその落ち込み具合は理解しがたい。

そんなに自分の作品を発表したいなら、イラストサイトでも作って公開したらいいのに。

漁夫の利を頂こうなんて、あまいあまい。


で、そのストーリー設定についてなんだけど、山中君が出してきて参考作品が私のタイプではなかった。

3歩ゆずって、男の子向けというのはいいとしよう。その1話ごとにヒロインが増えるって仕様はどういうこと!?

わたし、女子なんだけど。


『この私にギャルゲーを作れってか!?』と少々いらっとしたが、二ノ宮さんが間を取り持ってくれて、

私と山中君がお互いに興味が持てそうなジャンルを探し当ててくれた。


余談だが、元々私が書いていた話は悲恋系ファンタジー小説だ。


話し合いは難航したが結局「青春系近未来SF恋愛」というなんでも設定に落ち着いた。

まぁ、主人公が男の子だったら、あとは自由が効く内容だった。


「青春」って感じがでてればいいんじゃないかと二ノ宮さんがいっていた。二ノ宮さん、ナイス!


青春と銘打っていれば何とかごまかしが効くしね。


お互いの専門分野が違いすぎて、自分が好きな分野とマーケットの照準を合わせるのが難しい。

悲しいことに、一般的に好まれる内容と、自分が創作できる内容は違うのだ。


直輝君曰く、ゲームの使用上、物語のエンディングの分岐をつくるから、それを見越した文字数で書いてほしいということだった。

あまり力んで本編を書いてしまうと、後から追加で分岐A、Bを書くときに苦労するらしい。

おおよそ、制作期間2ヵ月で10万字前後。この私にかかれば楽勝よ。


もともと、描写の文を書く人が好きな人にとって、会話主体型になる「シナリオ」は苦手という人もいるが、私は物語の進行を考えるのが好きなので、あまり描写がなくなっても気にならない。


そうそう、直輝君ミーティングに入る前に全員分のスケジュール表を作ってきたのよね。


おおまかに『イラスト』『シナリオ』『プログラム』『システム画像』『ホームページ』に区分されてて、縦軸に作業タスク、横軸にカレンダーになってて、誰がどこまでを作業するか細かく決めてた。

テスト作業のところは全員参加だけど、プログラム組み込みの箇所は、たったの3日になってた。


あれ、これって、テスト期間より短くない?プログラミングを3日でするってことだよね?


直輝君に聞いたら、休みの日だったら一日でどうにか完成できるらしい。私はプログラムのことはよくわからないけど、プログラムが組める直輝君はすごいと思う。


どうにか、あらすじ、登場人物設定が決まって、今日のミーティングはお開きになった。

それにしても、近未来ものって私大丈夫か?


家に帰って、いつものように、携帯小説のサイトを更新した。


ケータイ小説って、100文字でもちょこっと書いて新しいページに追加できるから便利だわー。


2,3000文字も書かなくていいし。


これ毎日更新しないとランキング落ちるのよね。

ちなみに、書籍化が進んでいる小説は完結済みなので、妙に更新することはない。

現在更新しているのは同じファンタジー系だけど、ちょっとばかしコメディー色が強い話だ。


話は盛り上げるけど、登場キャラが馬鹿すぎると読者が引くからさじ加減が難しい。

創作意欲がなくなる前にさっさと書き上げて終わらせよう。


更新画面のタブを閉じて、テキストエディターの新規ファイルを立ち上げる。


ケータイ小説といってもなめる事なかれ。


私はサイトの更新はもっぱらパソコン派だ。

といっても、サイトを訪れるのは携帯ユーザーが多いので、文字の行間等のチェックはかならず、自分の携帯から確認している。


最近は、スマートフォンに替えたせいで、旧式のケータイで行間をチェックできないのが残念だ。

携帯で、今回更新したページを開く。


今日の更新分は大丈夫か。


スクリーンサイズが機種によってはまちまちだから、たまに変なところから改行してるけど、この分少量なら大丈夫だと思う。


それから、小2時間ほどかけて、私は今日のゲーム企画の導入あらすじ部分を書き上げた。登場人物設定は話し合いのときにちゃんとメモとってるから大丈夫。


私が書いた今回のシナリオの文体は主人公の一人称で描かれ、主人公が登場しないところは三人称で描かれる。


読者の目線を意識して文章を起こすと、たまに消化不良を起こすが、執筆スピードは我ながらまずまずだ。


念のため、wordに文章を貼付けて、誤字脱字がないかチェックする。


最初からwordで書けって?


あいにく、私のパソコンはスペックがよくないので、パソコン上にwordを立ちあげるのにも、タイピングするのにも時間がかかる。

文章の打ち込みだけなら、フリーのテキストエディターで十分だ。

文章の管理も楽だしね。


気がついたら、12時になっていた。


携帯の待ち受け画面を確認すると直輝君からメールが届いたていたようだ。

メールを開くと、今日の話し合いの参加のお礼と連絡用掲示板の報告がのっていた。


へぇー、ネットの非公開掲示板でやり取りするのかー。


リンク先をクリックするとIDとパスワードの画面がでてきたので、メールに記載されていたものを入力する。

すぐにメンバー用の掲示板がでてきた。





>>ゲームプロジェクト連絡掲示板 β版


○月2日 23:12  投稿者:直輝


掲示板設置しました。

全員で作業進行の情報を共有したいので、何か進んだら、こちらにも書き込みお願いします。

画像は1MBまでアップロードできます。


添付:テキスト_キャラクター設定シート.txt


ーー

○月2日 23:38 投稿者:一花

直輝君、ありがとう!

画像1MBまでうっpできるなんてすごいねーw


ーー




あ、すごい二ノ宮さん、もうすでに書き込んでる。

お礼いっているあたり、やっぱりこの人できるな。


最初、他人と作品作るのって乗り気じゃなかったんだけど、このメンバーならやってもいいかも。


パソコンの電源をゆっくりと切ると、私は眠りについた。

今日は、良い夢見れそう。



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突然クラスメートがゲーム制作するというので、僕は天才絵師にならなければならない。 雨都アマネ @amato

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